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32 作戦会議室(旦那視点)

「これより、ブリーフィングを始める」


 遅れて入ってきた、この基地の司令官、ジョンストン・シーワスプ大佐は、作戦会議室の正面にあるスクリーンの前に立って、作戦内容を述べた。 


 スクリーンには、ラヴメニクロスの地図が映し出され、味方が青い印、敵が赤い印で示されている。


「現在、謎の敵軍は各地で攻勢に出ている。が、我々空軍の奮戦と、奇襲の衝撃から各地の軍団が立ち直りつつある事もあり、現在、戦況は拮抗状態にある」


 地図上の青い印は、各地の都市部や拠点に、友軍が立てこもり、時間を稼いでいる事が示されていた。


「陸軍の連中も頑張っているではありませんか」


 ウィンは、少し意外そうな声を出した。先程まで上空から見ていても、戦況は残念ながら敵軍有利と言わざるをえなかったからだ。ずいぶん持ち直した。


「ああ、我々は彼らの奮戦に報いなければならない。それに鎧野郎共、航空機までは持っていなかった様だ。我々の空爆が効いてきたと見るべきだろう」


 そういえば、先程フリーグ高原で戦っていた時も、敵の航空機は出て来なかった。爆弾も、空対地ミサイルも、ロケット弾も全て打ち尽くしたのに、空対空ミサイルは手つかずだった。


「それか、航空戦力を温存しているか。ですかね」


「警戒しておくに越したことは無いだろうな。ともあれ、どういう理由か分からんが、あの鎧野郎共は真水に弱い、という事が死体の解剖から分かった。奴らは真水に触れただけで致命傷になる。……なので、連中の通り道に洪水を起こしてやる事にする。これにより、敵軍の増援に迂回を強い、また、現在前線にいる敵軍には分断を強いる」


 スクリーン上の地図に示されたある場所を、シーワスプ大佐はレーザーポインターで示した。


 そこには、川をせき止めて出来たダム湖があった。


「ここには、ルミーム川をせき止める、発電用のアーノダムが存在する。ここは現在、敵軍の支配下にあるが、空からなら攻撃を仕掛ける事が出来る。ここを破壊し、ダム湖の水で人工的な洪水を引き起こす。お誂え向きに、貯水量はたっぷりある」


「なる程、真水が弱点の相手には、致命傷になり得ますね」


 ウィンは、納得した様に頷いた。


「真水が弱点なら、水蒸気も効きそうなものですが、現状関係なく行動しているあたり、液体の状態でないと弱点にならないと見えます」


「雨は……この快晴じゃあ、しばらく期待出来ないな」


「なんなら、連中、天候を自由に操る魔法くらいは使ってるんじゃないか?」


 他のパイロット達もそんな風に、謎の敵に対して考察をする。奇襲と言う意味でも、結局、この方法が一番、効率が良さそうだった。


「しかし、人工的な洪水を起こすとなれば、民間人への被害が想定されるのでは……?」


 ウトリクラリアはそう疑問を投げかける。今は上官の前という事もあり、口調は丁寧なものになっている。


「ルミーム川周辺は、殆ど渓谷と原生林と荒野で、人は住んでいない。数少ない集落へも避難命令が出ている。民間人については気にしなくて良い」


「なるほど。安心しました」


「敵軍、まさにその荒野……ポイントD49辺りを通って進軍している様ですね……」


 赤い駒の目指す方向を示す矢印を見ながら、ウィンは言った。都合よく敵の通行路になっている所がある。山岳と山岳に挟まれた狭い土地で、都合よく洪水に巻き込めそうな位置にある。ここが通行不能になれば、敵の進撃を、かなり遅らせる事が出来る。リターンは大きい。


「とはいえ、敵も馬鹿ではない。このダム周辺には多数の対空兵器が展開している。実際、ここに偵察に向かった偵察機が、何機か落とされている」


「む……」


 一同の顔が厳しくなる。当然だ。皆、命は惜しい。


「まさか、対空砲の弾幕の中に突撃しろ。とは言いませんよね? 」


「流石に私もそこまで鬼畜ではない。秘策がある」


 大佐は、レーザーポインターである地点を指した。場所は、ダムのある地点から近い。


「ここに、河川の浸食によって出来た、大きな峡谷がある。この中ならば、レーダーに探知される事は無い。谷の間に潜り込み、中を進んで行けば、ギリギリまで敵に探知される事は無いだろう。夜に作戦を実行すれば、更に発見される確率は下がるだろう」


「進んでって……この中を戦闘機で飛べと? それも夜間? また無茶ぶりをしますね……」


 ウィンは、無茶苦茶なオーダーに、軽く頭を抱えた。


「とはいえ、他に方法も無いし、時間もない。現在、作戦参加が可能な隊はイーター・ラム隊の4機、ナインテール隊の5機、ヴァンパイア隊の3機。合計12機だ。ダムを破壊し、洪水を起こしてみせろ」


「……」


 無茶苦茶な命令に、ウィンは小さくため息をついた。


 実際、この任務を成功させる以外、敵軍の勢いを弱める事が出来ないという事も理解はしている。この人口洪水作戦が一番効率が良く、手っ取り早い。


「……良いでしょう。見事、洪水を起こして見せましょう。部隊の現場での指揮は、私が取るという事で良いでしょうか」


「いや……」


 シーワスプ大佐は、不敵に笑った。


「この作戦、私が直接指揮を取る。部下を死地に送り込んで、後方から見物出来る程、図太い神経しちゃ居ないんでな。13機目として、私も出る」


エ◯ア88以来の戦闘機もののお約束。オペレーションタイトロープでごさいます。


元ネタはもちろんエリ8と、チャスタイズ作戦です。


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