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31 オズオーヴァ飛行場内(旦那視点)

 ローク王国の王女が、自分の元に嫁いでくると聞いた時、ウィンの率直な感想は、めんどくさい事をしてくれた、というものだった。


 この時点で、彼は3人の妻を囲って、彼女達との生活も順調であり、今更、新しく正室を……。と言われても困ってしまう。しかも、現在の正室(・・・・・)である、サラセニアを側室に格下げしろという。


 大国の傲慢さに辟易してしまう。


 当時、というか、今もだが、彼らはこのウィンを頂点にしたハーレム。と、いうより、この一種の群体生物ともいえるコミュニティに、リーダー格であるウィンも含めて、全員が依存している状態であり、新しく女の子が入って来た所で、不幸になる人間が増えるだけだと思っている節がある。


 新しい正室が不幸になるだけなら、(良くは無いが)まだ良いとして。名前は何といったか覚えてすらいないが、このハーレムを破壊し、ウィンを妻達から寝取ってやろうとした、邪悪な貴族令嬢たちの時の様に、面倒事を起こされては困る。


 貴族令嬢だと、修道院や娼館に放り込むのだって楽ではないのだ。いわんや、一国の王女ならば、そういう訳にはいかないし、更にややこしい事になる。


 だが、結論から言えば、大国ロークから来た王女は、予想外というか意外というか、存外、話の分かる女性だった。


 我々の共同体と敵対するどころか、何とか共存できないか悩む女性というのは、幼馴染達3人以外だと、初めてだった。大体、こちらの事情も考えず、嫌悪感を抱き、なんなら、この集団を破壊しようとする者さえいる程だったから、逆に興味が湧いた。


 始めは抱くどころか、触るつもりさえなく、いわゆる白い結婚でいようとも思っていたが、先に接触したサラセニアとネペンテスからの話を聞いて、少し、彼女が気になった。


 実際、会ってみた所、中々、面白い女性だった。この時点で、だいぶ気に入ってはいたが、彼女が前世で、ニッポンという国で生きていた頃の記憶が残っているという話、更に、この世界そっくりな小説が存在するという話を聞いたら、更に興味が湧いた。ウィンはオカルトの類は嫌いでは無かったからだ。


 そんな彼女に別れを告げ、作戦会議室に向かう途中、ウィンは、乳母妹のウトリクラリアからジト目を向けられている事に気付く。


「お兄ちゃん、鼻の下伸びてるよぉ? 王女様の事、気に入ったみたいだね……」


「ふふ。これでも、根は好色なものですから。彼女には、私達の群体生物(ハーレム)の新しい細胞になってもらいましょう」


「初めにそんな風な事、私も言ったけどさ……。私達、こう見えて結構嫉妬深い女の子達だからね……。あまり怒らせる事、しないでね?」


 ハイライトの無い瞳でウトリクラリアがウィンを睨むと、ウィンは色っぽい顔をしながら、彼女の頬に手を当てた。ウトリクラリアは、その青い瞳に魅入られる様な感覚になる。もし、吸血鬼に魅了されたら、こんな感じだろうか?


「ああ、妬いている顔も美しいですよ、我が乳母妹(いもうと)。安心しなさい。王女様にも貴女達にも、一生快楽と愛情を与え続け、幸福にする事を誓いましょう」


「調子良いんだから……」


 ウトリクラリアは、呆れつつも、本気で怒りはしない。惚れた弱みというやつに加え、彼の話し方が妙に堂々として、自信に満ち溢れるものだからというのもある。


 兄のカリスマに、メロメロにされてしまった、狂信者の妹というのも、業が深いと思うウトリクラリアである。


 本当に軍人の道に進んでくれて良かったと思う。仮にウィンが宗教家の道にでも進んでいたら、間違い無く邪教の教祖になって、おぞましい事になっていただろう。それだけ、彼から溢れるカリスマ性は凄まじいものがある。


「おまけにお兄ちゃん、それっぽい事をそれっぽく言う詐欺師みたいな事するの得意だし。割と欲望に忠実なタイプだからねぇ……欲と権力に溺れた宗教家程、惨めなものは無いからなぁ」


「何か言いたげですね。何の話です?」


「別にぃ? 美しい兄を持てて幸せだなぁ、って話」


 ウィン達が作戦会議室に入ると、中にいた他のパイロット達が一斉に敬礼し、歓声を上げた。彼らは口々にウィンを讃える言葉をあげる。心無しか、皆、目が少し狂気を含んでいる様な気もする。


 プロパガンダで、ウィンを讃える内容を流しまくっているのもある。が、それ以上に、切った張ったの明日をも知れぬ軍人にとって、英雄というのは崇拝対象になりやすいのだ。


(こりゃ、手遅れかもなぁ……)


 まさに、邪教の教祖の様な個人崇拝を向けられているウィンを見ながら、ウトリクラリアは少し、危ういものを感じつつ、『そちら側』に行かせない様に、ウィンの手を握った。

しばらく旦那視点が続くかも。


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