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3 2人の母

 帰宅後、早速、母上に今日、陛下に命じられた事を伝えた。


 私達の家は、郊外の物静かな所にある一軒家だ。


 母上は、元々、陛下に見初められた平民だった。酒場で働いていた所をふらりと現れた王太子……今の陛下に迫られて、ほいほいと関係を持ってしまったという。


 それ以来、この家を与えられ、数ある愛人の1人として囲われているが、所詮は母は、陛下にとって遊び相手……。否、遊び相手ですらなく、おもちゃの1つでしか無かったらしい。


 彼女が子供……つまり私を妊娠すると


「妊婦の相手って、精神的にも肉体的にも気を使わなきゃいけないし、めんどくさいんだが……。てか、たかが平民出身の数ある愛人の1人を、なんで王族の俺が支えなきゃならんのだ」


 と、男として、いや、人間として最低な事を抜かして、この家に寄り付かなくなったそうだ。


 金銭的援助だけは、現在もしっかり続いているのは良いが、逆に言えば「金を出しているのだから、口を出す権利もある。干渉するな?今までした援助、耳を揃えて返還してくれたなら口は出さんよ?」という理論も成立する訳で、この半分人質と言ってもいい雑な婚姻に、NOとは言いづらいのが悲しい所だ。


「今にして思うと、あの時は私も若かったわ。後先考えず、あの人に溺れてしまった。王族と関係を持つという事の意味も分からず、舞い上がっていた……そりゃ、突然自分の娘を政略の道具にされる時もあるわよね」


 私から報告を聞いた母上は、後悔した様に、頭を抱えた。


「ごめんなさい。ごめんなさい……。あなたには苦労をかけるわ」


 突然、見ず知らずの土地に送られ、見ず知らずの人に嫁ぐ事になった娘に、母は詫びた。


「そう悲壮な顔をしないでよ。別に生贄の儀式に捧げられる訳じゃ無いし。ラヴメニクロスは、近くではないけど、嫁いでから全く会えなくなる訳じゃ無いんだから」


 私など、王族とはそういうもの、として割り切っている事もあり、母よりかえって冷静であった。母をなだめるが、更に脇から別の女性が口を挟む。


「いや、生贄みたいなものだ。この国は、近々ラヴメニクロスから新型の戦闘機を輸入する計画がある。そこにきて今回の婚姻。おおむね、人質代わりだろう。新型機の情報を漏洩させない事を示す為の」


 吐き捨てる様に言った女性は、シウン・レインボークラウド。サイウンの母君にして、私の乳母上だ。


 母が平民といっても、私に流れる血の半分は陛下の血だ。そこで、乳母がつけられる事になったのだが、白羽の矢が立ったのが彼女だ。とある伯爵家の一門出身らしい。


 母なんかよりはるかに上等な血が流れる人だが、なんというか情に厚い人で、妊娠と同時に男に捨てられ、女手1つで子供を育てる事になった母を、彼女は心底憐れんだらしい。


 平民の母をもつ、いてもいなくても変わらない様な王女を、成長後も乳母が見守る必要も利益も無いにも関わらず、頼まれてもいないのに、しょっちゅう我が家に娘共々やって来てくれては、様々な支援をしてくれている。すっかり、母へも私へも情が湧いてしまったらしい。なんとも奇特な人だ。


「シウンさん……」


「くっ! サイウンが男であれば、さっさと既成事実を作らせてしまったものを……!」


「シウンさん……?」


 頭に血が上って変な事を言い始める乳母上。そんなシウンさんを、私は困った様に見つめる。すると彼女は、少し頭が冷えたのか、コホンと咳ばらいを1つ。


「現実的にいきましょう。私にち〇こはついていませんし、拒絶するわけにもいきません。かくなる上は、何とか我等がお嬢が、かの国でも幸せになれるようにする方法を考えましょうよ」


 ここで、今まで話の成り行きを見守っていたサイウンが口を開いた。彼女は母よりは現実主義者(リアリスト)であった。


ママ上は、捨てられないルートは捨てられないルートでざまぁ対象になりそうで怖いねんな……


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