表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/50

27 飛行場へ

 

「失礼するわ。3人共、暇そうなら、少し、私に付き合ってくれないかしら?」


 部屋の扉が開かれ、サラセニアちゃんが入って来た。着替えたのか、白い修道服の様な服を着ており、正に聖女といった格好をしている。


挿絵(By みてみん)


「お姉様、その格好は?」


「ふふ、これでもこの国の聖女様ですから! これから、人を救いに行くの、あなた達も手伝ってくれないかしら? 」


「人を救いに……?」


 私の言葉に、サラセニアちゃんは微笑む。


「今度こそ、この力を正しく使うわ。この戦いで、多くの人が傷ついてる。私は聖女として、この人達を回復魔法で治療しに行く。『悪聖女』でも、聖女には違いないから」


「……」


 少し、しんみりとしながら言うサラセニアちゃん。昨日の報復攻撃の話を思い出して、私も少し気が落ち込む。それに気を使ってか、サイウンは敢えて明るくふるまった。


「良いですね! 私も協力しましょう。お嬢も行きましょう。どうせ、ここで悶々としているのも身体に毒です」


「そうね。ところで、治療っていうのは、何処でするの? 王城の一角とか? 」


 サラセニアちゃんは、ニヤリと微笑むと、首を横に振った。


「いえ、王城では無いわ。場所は、オズオーヴァ飛行場。我らが旦那様の職場ね! そこに野戦病院を設営したそうだから、そこで片っ端から怪我人を治療をするわ」


 ***


 街の道路は、避難する人々で溢れかえっていた。幸い、オズオーヴァ飛行場は前線側にあるので、そちら方向に向かう車は皆無で、私達が乗るサラセニアちゃんが運転する車は、スムーズに進行した。


 その間、サラセニアちゃんは、ウィン様の話をずっとしていた。彼女も彼女で、彼を心配しているのだろう。


「オズオーヴァは郊外にある飛行場だから、昔はよくウィンがあそこで1日中、飛行機の発着陸を見ててね。私達、幼馴染3人もそれについてったものよ」


「懐かしいわね。私達はあんまり飛行機は興味無かったけど、クラリアはウィン様と並んで目をキラキラさせて……」


「結局2人共、空に魅入られてしまったわね。まさか、2人揃って空軍に入って、エースにまで成り上がるとはね」


 懐かしげに昔語りをする2人。私は少し、寂しさの様なものも感じる。私はこの舞台の作者なのに、彼女達の事を何も知らない。


 改めて、彼女達は小説のキャラクターでは無く、生きた人間なのだと思った所で、私の様子を心配してか、サラセニアちゃんが声をかけてくれた。


「王女様。それにサイウンさんも。ウィンとクラリアは、根っこはこんな感じの、空を飛ぶ事にしか興味無い飛行機バカだから、今後変な言動をしても、あんまり幻滅しないであげてね」


「そうそう。私達幼馴染は慣れっこだけどさ。結構このあたり分かってなくて、引いちゃうファンの子とかいるから」


 ファンの子……確かに、彼の容姿と実績、そして第2王子という事を勘案すれば、ファンクラブくらいはありそうだ。


「基本的に空を飛ぶ事と、女の子の下着の事しか考えて無いわ。あの人。正直、素の性格もあんまり良くは無いし。……スケベだし。それが、なまじあの外見で、あの戦果でしょ。勝手に幻影抱いてファンになって、勝手に幻滅して失望する貴族令嬢の子とか結構いるのよね……」


「そうそう。中には色々と厄介な子とかもいたわね」


「いたいた! シスリー侯爵令嬢とか、マース伯爵令嬢とか。アレは中々厄介だったわねぇ。まあ、私達の愛情パワーで身の程を分からせてあげたけど!」


 色々あったのか、遠い目をしながら語る2人。何があったのか……。少し気になるが、聞くのが怖くもある。


「王女様は、あの2人と違って歓迎してるから、安心してね? 」


「何か……あったの?」 


「ま、色々ね? あの2人も、私達のハーレムを否定しなければ、ウィン様の4人目、5人目のお嫁さんになれたのかもしれないのに、惜しい事したわねぇ……聞きたい? 何があったか?」


「ネペ。それ以上は、王女様が引いてしまうわ。もう少しこの環境に慣れてからにしましょ」


「そうね。おねえさまは、珍しく私達と共存共栄できそうな子だからね」


 少し黒い顔をしながら微笑む2人。


 ……なんというか、察するに、やはりこの4人の共同体(ハーレム)を否定、破壊しようとした場合、彼女達は全力で相手を敵認定する様だ。つくづく、あの急ブレーキの場面で記憶が戻って良かった。


この間にもウィンは無双中。


コメント、評価、ブックマークもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ