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25 王都上空 高度3000m(旦那視点)

「数時間ぶり、ですね。隊長。新しい嫁さんの元に向かったという事ですが……まさか、もう愛想つかされましたか?」


「はは、王女様へプレゼントを持って行き忘れました」


「何を忘れたんです? 花束? それとも指輪?」


「戦勝記念日!」


 王都上空3000m。


 そこでは、4機の戦闘爆撃機が編隊飛行をしていた。機体はこの国の主力機、『Rfa Type000 ガーディアン』および、『Rfa-X Type000NBC ピースガーディアン』である。いずれの機も、対空・対地用の武装を満載していた。


 4機のうち、3機は緑と茶色の迷彩塗装が施されていたが、先頭を飛ぶピースガーディアンは、銀色と青色の迷彩が施されていた。


 この機体こそ、ウィンの乗る機体である。


 部下のガーディアン3機を引き連れて、綺麗な編隊飛行をしている。


 スカイ達の元から、自身の乳母妹を連れて出立して数時間。彼は愛機で空を飛んでいた。無論、謎の軍団への対応の為である。部下達へ軽口を言って緊張をほぐしつつも、彼は油断せずに、所狭しと並んだ計器やレーダーに目を向けている。


「こちら空中管制機『ナイトランナー』。『ビッグディッパー』、休暇中にも関わらず、よく戻ってきてくれた」


「どういたしまして。『ナイトランナー』、戦況を確認したい。さっさとケリをつけて、休暇の続きと洒落込みたいですが。どうですか?」


「正直、芳しくはない。いずれの方面も苦戦中だ。イーター・ラム隊は作戦通り、フリーグ高原で戦闘中の地上部隊の支援に向かえ」


「了解。……各機、聞こえましたね? このままフリーグ高原へ向かいます」


「フリーグ高原……。かなり王都まで近寄られているね……」


「ええ。何としてでも、ここで止めなければ。王女様に、『嫁入り早々、国が無くなりました。ごめんなさい』と言う訳にはいきません」


 乳母妹の言葉に返事しながら、ウィンは操縦桿を操って、機首をフリーグ高原の方へ向けた。


 果たして、そちらの方では、遠くから煙が上がっているのが見える。あれが味方の兵器から上がっているものでなければ良いのだが……。


 そして、そんな思いは、しばらくして現場に到着して裏切られた。


「こりゃ、酷いな……」


 部下の1人が、思わず口に出した。恐らく他の僚機も同じ思いだったろう。


 地上では、撃破された味方の戦車や装甲車の残骸が、至る所で煙を吹いており、明らかに戦況が不利な事を伝えている。


「『フェイクニュース』、我々まで戦意を失ってはいけません。むしろ、ここから逆転するくらいの心持で戦いましょう」


 コールサインで部下を呼びつつ、ウィンは、手始めに機首を下げて、近くにいた敵の戦車に向けて、250㎏無誘導爆弾を落とした。石の様な素材で出来ている敵の戦車は、重そうな外見にも関わらず、案外動きは軽快だった。中々の性能がありそうだ。


 そんな戦車に、爆弾は寸分たがわず突き刺さり、爆発を起こした。250㎏もの爆薬の爆風をもろにくらった敵の戦車は、木っ端みじんになった。


 さらに、行き掛けの駄賃とばかりに、射撃中の敵の歩兵の集団に、速度を落としつつ、機銃掃射を行う。突然の空からの攻撃に対応できなかったのか、フルプレートで全身を覆った敵兵は、まとめてなぎ倒された。


「まずは1つ! 見てください! いくら敵が優勢といっても、相手もお化けではない。爆弾で吹き飛ばせますし、銃弾が当たれば死にます」


 機首を上げて、速度を高度に変換しながら、僚機に向けてウィンは叫んだ。


「我々は誇り高きラヴメニクロス空軍のパイロット。それも、このイーター・ラム隊は、かの7か月戦争を生き残った、この国……いや、大陸屈指の腕利きであると私は信じています。そんな命知らずの我々が、逃げる訳にはいかないでしょう! 私を信じてついて来てくれませんか?」


 美少女よりも美少女している美声に、部下達は皆、やる気になった様だった。


「い、いけるのか!?」


「隊長に続け!」


「そ、そうだ! 俺達が逃げたら誰がこの国を救うんだ!」


 残りの3機も、各々、攻撃に移る。


「こちら『フェイクニュース』、攻撃に移る!」


「同じく『ハンマーヘッド』攻撃開始!」


「『サンドスパイダー』交戦!」


 さらに、この無線が混線していた味方の地上軍にも届いたらしい。


「この美声……これは第2王子殿下ではないか!?」


「『北斗七星』! 来てくれたのか!」


「殿下……! 見ていてください! 反撃開始だ! 鎧野郎どもを押し返すぞ!」


 見るからに士気が上がる地上軍に、思わずウィンは笑みを浮かべた。


「……偶像(アイドル)というのも、悪いものではありませんね。特に今の様な非常事態では」


「お兄ちゃん、自分の顔、鏡で見た事あるぅ? そりゃあ、こんな傾国の美人がやるっていってるんだから、それを放って逃げるやつは男じゃないでしょ」


「はは。美人に産んでくれた両親と神に感謝、ですね。それだけに、あっさり命を落とす訳にもいきませんね」


「良く分かってるじゃん」


「新しい嫁様を嫁いで早々に未亡人にするのも気が引けます。生きて帰りますよ。クラリア!」


「言われなくとも!」


 そう言って、ウィンは再度、地上に対して攻撃に移った。


旦那もたまにはかっこいいシーン作らないとね。


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