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23 unknown

 

 王城の一角。有事に作戦会議などを行う部屋。


 その部屋には、私とサイウン。そしてウィン様と奥さん達。そして、第1王子、バル様がいらっしゃった。私達は、なんとなくその場のノリで一緒についてきただけだが。


 部屋の中央テーブルには、大きなラヴメニクロス王国の地図が広げられ、青と赤の駒が至る所に並べられている。この国では図上の駒は、青が味方。赤が敵軍であるとサラセニアちゃんが教えてくれた。数は圧倒的に赤の駒が多い。


「……それで、謎の勢力ってのは、何者なんです? ガラーツですか? それともヴェリア?シアハル?」


 ウィン様は、それらの駒を眺めながら言う。


「いや、そのどれでもない。全くの謎の軍隊だ。まるで、お伽噺に出てくるかの様な、石の様な見た目の兵器で武装していて、こちらに攻撃を仕掛けている」


 さらりと、とんでもない事が話されている。何者かに、この国が攻撃されているらしい。


「石の様な見た目、ねぇ。温暖化で氷が解けて、その中で氷漬けにされていた、旧石器時代の人間でも蘇りましたかね」


「冗談言っている場合じゃないぞ。現在、この謎の軍隊に、味方は少なくない損害を被っている」


 そう言うと、バル様は、疲れた様に近くにあった椅子にもたれかかった。


 第1王子バル・ラヴメニクロス様。ウィン様の異母兄にあたる方で、将来に備え実績と経験を積ませる為、一部で国王陛下の執務を委任されている。


 真面目な方で、政治には関わらずにパイロット稼業を満喫しているウィン様や、ガチガチの過激派である第3王子と違い、日夜、理想と現実との兼ね合いと妥協が必要な政治の世界で、胃を痛めながら頑張っているという。


「こいつを見てくれ。うちの偵察機が撮ってきた写真だ」


 ウィン様は、赤い駒を1つ取って見つめながら、写真を受け取る。


「確かに、石で出来たような銃や戦車、大砲なんかが確認できますね」


 ウィン様の見ている写真を、私も後ろから見た。


 確かに、言われた通り、妙な兵器で武装された兵士の姿が映っていた。謎の兵士達は、時代錯誤なフルプレートの鎧で防御を固めており、顔はうかがえない。


「……っ?!」


 この写真を見た時、私は、かつての記憶を思い出した時と同様の感覚に陥った。なんだろう、この感覚は……。この謎の軍団についても、私は知っている気がする。


「……大丈夫ですか? 突然の事に、ショックを受けましたか?」


 私の動揺を心配したのか、ウィン様が心配してくれた。


「とりあえず、椅子に座って落ち着いてください。私がいる限り、この都には敵機は1機も侵入させませんから」


 ニコリと微笑んで、ウィン様は椅子に私を座らせる。


 傾国の美人とは、こういう人の事を言うのだろう。男だけど。


「この謎の軍団だがな。このグラサイド山から出てきている」


「グラサイド山……。この前噴火を起こした所ですね。そこを拠点にしている?」


「拠点にしている……というより、まさに、この山の火口から、『生まれている』という表現が正しい」


「『生まれている』?」


「これが、その写真だ」


 別の航空写真をバル様が見せた。そこには、火口から続々と軍団が、行列を作って進軍する姿が映っていた。


「……何者ですか? こいつら」


「化け物……なんて表現は使いたくないが、少なくとも、人ならざるものなのは確かだろう。それに厄介なのがもう1つ」


 バル様は、赤い駒の進む方向を、赤い線で結んだ。


「奴らが進軍しているのは、この国の核兵器貯蔵庫、兼ミサイルサイロだ」


「?!」


 この部屋にいる皆が息を飲んだ。確かに、線が行き着く先は、ミサイルサイロのある、ゲードンを示していた。


「この国の保有する核兵器の3分の1が、このサイロに保管されている。これがもし、この謎の軍団に奪われる様な事があれば……」


「大変な事になりますね」


「そうだ。大変な事になる。なので、これより総動員令を発令し、全力でこの謎の武装集団を排除する事にする」


 明らかに、ウィン様の様子が変わった。完全に戦士の瞳になっている。


「私も、休暇返上で対応しましょう。クラリア、オズオーヴァまで戻りますよ」


「了解、お兄ちゃん」


「……王女様には申し訳ありませんが、この緊急事態です。婚姻の儀は延期になるでしょう。もしも無事に帰れたら、素敵な式をしましょう」


 ひざまずいて私の手を取って、ウィン様は微笑んだ。そのまま、クラリアちゃんを伴って、部屋を出て行こうとする。


「サラ。私がいない間の留守は頼みます」


「ええ。任せて」


「それと……」


 ウィン様は、自身のピンクブロンドの髪を何本か毟り、親指の爪を噛んでちぎると、その破片を彼女に渡した。


「今回の戦、厳しい戦いになるかもしれません。もしもの事があれば、これを遺骨代わりに埋葬してください」


「……確かに受け取ったわ」


「よろしくお願いします」


 あえて、4人共、多くは語らなかった。それだけ、お互いの事を信頼している事が伺える。


ようやく起承転結の「転」あたりまできました。


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