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22 シナリオ完全崩壊……?

 

「さて、そちらの美人様は、どうしましょうかね?」


 ウィン様は、サイウンへ視線を向けた。彼女は未だ惚けている。


「……サイウン」


「はっ!」


「ぼけっとしてないで……。シナリオブレイク計画。なんとかなりそうよ。」


 サイウンは、なんとか正気を取り戻した様で、私の顔を見て、微笑んだ。


「何とかなりそうですね」


「……話、ちゃんと聞いてたの?」


「もちろん! ウィン様が明日、ちゃんと来てくださるというお話ですよね!」


「一応、聞いてはいたみたいね……」


 私達の事を、他の子達が不思議そうに見ている。それはそうだろう。いきなりシナリオブレイク計画とか、わけの分からない事を言い出したのだから。


 ……ここは、きちんと彼らにも、話をしておくべきかもしれない。


「不思議そうな顔をしているわね……。無理も無いわよね」


「はい。突然どうしたのかと」


「……今から話すことは、あくまで与太話、たちの悪いジョークくらいの感覚で聞いて欲しいのだけど……」


 私はウィン様達へ、私自身の前世ついて、そして、『その世界で読んだ小説』そっくりの世界へ転生してしまった事を、打ち明けた。流石に、自作小説の舞台に来てしまったとは言えない。


 彼らは最初、訝しげに聞いていたが、私があまりにも真剣に話すので、それなりに信じてはくれたみたいだった。


「……なるほど、この世界は、その話の中の世界そっくりで、本来、貴女と我々は敵対するはずだったと」 


「信じてはくれないでしょうけど」


「ま、半信半疑というのはそうですが」


 ウィン様は困った様に私を見ている。他の3人も同じだ。


「しかも、私達が全滅したら、世界が核戦争で滅ぶ、ねぇ」


「実際、この国、核兵器は所持してるから、絶対にありえないとは言い切れないわよ」


「7か月戦争もぉ、友好国から核兵器を供与されてぇ、それで連合を脅かしてぇ、何とか停戦にまで持ち込めたしぃ……。核兵器に対してぇ、妙な信仰みたいなのがあるからねぇ。ま、その信仰を持っているのは私もだけどぉ」


 クラリアちゃんの言う通り、7か月戦争は、化学・生物兵器の実戦投入に流石にドン引きした各国の働きかけと、ラヴメニクロス王国の友好国であるラノダコールという国が、自国の原子爆弾を供与して、それを使ってラヴメニクロス側が、連合側へ脅しをかけた事で停戦になったという。この辺りも、来る前に少し勉強した。


 この時、領土を奪われたものの、この経験によって核兵器が、他国との強力な交渉カードになる事を学習したというか、味を占めたというか。ともかく、その後は航空機と同等か、それ以上に、核兵器の開発へ注力したこの王国は、自国でこれらを量産する事に成功し、今や世界でも指折りの核兵器保有国となっている。


 保有する核弾頭は数百発。散々な目にあい続けてきた事による、病的な被害者意識と、被害妄想をこじらせた末の事で、まこと恐ろしい話である。実際、『原作』ではこの国の核兵器が原因で、世界は核の炎に包まれる訳だし。


「だから、私としては何としてでも、あなた達と仲良しこよしでいたいというか……。な、なんというか、不束者ですがよろしくお願いします」


 私の言葉が滑稽に映ったのか、ウィン様は、軽く笑った。


「くく……成程。事情は大体分かりました。あなたの事も一等、大事にしますよ。あの弟には指一本触れさせません」


 『原作』の黒幕が弟君であった事も言ってあるおかげか、ウィン様は少し、独占欲を込めた目で私を見てくる。なまじ美人なせいで、嫌悪感は全く持たないのが流石だ。


「お兄ちゃん、弟様の名を出されると、対抗意識が表面化するの、なんというか人間臭いよねぇ」


「弟は正室の子。母上は公妾。母の身分が高いだけでヨイショされている弟には、コンプレックスあるんですよ」


「流石ウィン様! 良い自己分析ね!」


「王女様も、弟様になびいちゃ駄目ですからね! ウィン、彼には凄いコンプレックス持ってるんで、多分王女様が弟様に寝取られたらマジギレしますよ、この調子だと。この人、良くも悪くも『自分の女』認定した相手には、凄まじい執着を見せるタイプなので。とりあえず、現状、王女様へ悪い印象は持って無さそうですし」


 ヤンデレレベルで独占欲が強い、それも第3王子に対してコンプレックス持ちなんて情報、初めて聞いた。そんな設定、私は作っていない。言っては悪いが、彼は、ざまぁ対象の1人でしかなかったのだ。やはり、彼らに関しては凄まじい密度で、設定の空白が埋まっている。


「弟様も、悪い人では無いんですが……いかんせん、過激思想持ちなのがね」


「愛国心自体は悪い事じゃないけど、何事も、好悪両面あるからねぇ。現在の国力考えずに、国民達の憎悪と敵愾心を煽るのは止めて欲しいんだけど……」


 サラちゃんとネペちゃんは、少し困った顔をしながら、第3王子について言及した。


「けっこう、過激派の方なんですか?」


「ええ。まぁ。純粋な奴ですよ、良くも悪くも。国で流しているプロパガンダを妄信して、国粋主義、民族主義に目覚めちゃった子です」


 ウィン様は、サイウンの疑問に、何とも言えない味わい深い顔をして答えた。


 自分の所の王家が国民へ流したプロパガンダを、自分で妄信している人……なんというか、こちらはこちらで厄介そうな方だ。そりゃ、チャンスがあれば核戦争を起こすだろう。彼とは今後とも、あまり関わらない方が良いだろう。


「弟君の事はともかくぅ……明日の夜まで待たずにぃ、ここで『シナリオ完全崩壊』、させちゃおうかぁ?」


 ウトリクラリアちゃんはにやにやしつつ、ウィン様から離れて、私にボディタッチしてきた。


「え」


「……クラリア、貴女がウィンと致したいだけじゃないの?」


「ここの所、ご無沙汰だったしぃ……?」


「ま、良いんじゃない? 王女様とウィンが良いならだけど」


「私も付き合うわよ。……おぉ、王女様、こんなパンツ履いて……これはウィン様、一晩中下着姿のまま愛でて離してくれないわよ。なんならこれは、夜伽の後に没収&コレクション行きコースね」


 サラセニアちゃんも、それぞれ私のそばに来て太ももを軽く撫で上げた。


 ネペンテスちゃんにいたっては、私のスカートをめくって今履いているパンツを確認しているが……よりにもよってウィン様のストライクのやつだったらしい。え、没収されるの? これ結構お気に入りのやつなんだけど。


 この流れはまずいかもしれない。貞操の危機を感じて、私は目でサイウンに助けを求めた。いや、明日の晩にはどちらにせよ、彼らに美味しくいただかれるわけだが、それにしても心の準備というものがある。


 それも真昼間から、初めてで4対1はキツイって。色々と。


「サイウンさん、と、言いましたっけ? 貴女の主、少しお借りしますよ?」


「へ……? は、はい。お嬢をよろしくお願いします! 」


「ふふ、良い子ですね」


 頼りの乳母姉は、ウィン様に甘い声で囁かれると、あっさりと私を明け渡した。


「サイウン?!」


「お嬢、どうせ明日の晩までの貞操です。どうせなら、ここでさっさとシナリオ完全崩壊させてしまった方が効率的です……。それに、ウィン様にあんな声で囁かれたら断れません♡」


 駄目だ、この乳母姉。リアリストな所と、ウィン様への惚れた弱みが変なシナジーを起こして、彼のお願いを聞く人形になっている。


 あ、これは駄目だわ。このままベッドインコースだわこれ。痛くされないといいなぁ。


 私が、覚悟を決めたそんな時である。突如として、部屋の扉が激しく叩かれた。


「ウィン! ウィン! 大変な事になった!」


 なかなかの美声がする。扉を叩いているのは男性の様だ。


「なんですか兄上。藪から棒に。私はこれから嫁達とお楽しみタイムなのですが?」


「それどころじゃないんだ! とにかく来てくれ!」


 兄上、という事は扉を叩いているのは、この国の第1王子だろう。

もうちっとだけ続くんじゃ。


核兵器云々のくだりはコズミック・イ◯からインスピレーションを受けました。


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