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2 斜陽の国

「ラヴメニクロス……ですか?」


「ええ。どういう国? サイウンは頭良いし、知ってるかなって」


「ふむ……ラヴメニクロス。まぁ、小さな田舎国家ですね」


 私の家に帰宅途中の車内。


 私の言葉に、この真紅色の髪をボブカットにした、1つ上の歳の乳母姉にして親友、サイウン・レインボークラウドは、車のハンドルを握りながら、頭の中から情報を引っ張り出している。


 ちなみに、車というのは馬車ではなく、自動車だ。


 私が生まれる100年ほど前に起きた、蒸気機関および内燃機関の発明と、いわゆる産業革命は、この世界を文字通り変えてしまった。


 それまで主流の移動手段だった馬車は、自動車や鉄道や飛行機にとって代わられ、職人は機械にとって代わられ、魔法使い達が、それまで長い間修行してやっと使う事が出来た魔法は、それを代用する機械によって、誰でも簡単に使える様になった。


 最初は当然、それらを生業にしている人達からの反発もあった。


 だが、結局人類というのは、楽な方に、効率的な方に流れるもので、機械化の流れを止める事は誰にも出来なかった。不満と怨嗟の声は、うるさい機械の音にかき消され、やがて聞こえなくなった。


「……それと確か、世界で初めて空軍を作った国、でしたかね。国土はそこまで豊かではないものの、技術大国だとか」


「空軍……。飛行機?」


「そうです。飛行機。技術大国の面目躍如といったところで、様々な戦闘機、爆撃機、攻撃機、偵察機といった軍用機を開発し、それらをまとめ、有効に活用しているとか」


 飛行機はそうした『革命』の生み出したものの中でも、最高傑作の1つだ。それまで空を飛ぶものと言えば、鳥か虫か蝙蝠かドラゴンくらいだった中に、人間も入るようになった。いや、厳密に言えば、腕の良い魔法使いなら空を飛ぶことも出来るが、それが操縦方法さえ習得すれば、誰でも出来るようになったのが凄いのだ。


 それを統合運用する空軍を組織している国は少ない。大国に分類できるこの国でも、陸軍航空隊、海軍航空隊はいるが、独立した空軍自体は持っていない。有効性自体は認めているのだが、ノウハウ無しで簡単に1から作れるものでは無いのだから、責められる事では無い。


 だが、だからこそ、それを運営している事自体、ラヴメニクロスという国に一目を置いてしまう。


「ふーん。飛行機……空軍……。面白そうな国ね」


 正直、そこまでかの国に、関心は無かったのだが、少し興味が湧いてきた。


「しかし、あまり良い国でも無いみたいですよ」


 少し声のトーンを落として、サイウンは言う。


「どうして?」


「簡単に言うなら斜陽なんです。昔は強かったってやつですよ。最近は周辺国の謀略で領土を奪われ、戦争に負けて領土を奪われ、国土はどんどん小さくなっている。それに加え、少し前に起きた火山噴火で農地やインフラは壊滅状態になったとか」


「……それは……。気の毒な事ね」


「ここでも寄付を募っていた事があったでしょ。そこです」


 そう言えば、少し前に、この国でもどこかの国で起きた噴火災害の復興寄付を募っていた事があったが、それがラヴメニクロスだったのか。


「今では復興も進み、少しは落ち着いているみたいですがね。それでも、敗戦と噴火のダブルパンチで、経済的にはボロボロ。金食い虫な空軍重視の方針もあって、軍事費も増大。国民も国民で、なまじかつて強国だったせいで、国内では国粋主義や民族主義が台頭して、内外の問題の解決に強硬手段をとる事も多くなっているとか。まぁ、頭に血が上る気持ちは分かりますがね。……それで? 何故突然ラヴメニクロスの話なんか?」


「私、そこに嫁ぐ事になったみたい」


「……は? はぁ?!」


 あっさり言った私に、サイウンは素っ頓狂な声を上げた。


挿絵(By みてみん)

ラヴメニクロス王国のモデルはまんまベルカ公国だったり。ベルカ式国防術やらかしてないだけいくらかマシですが。


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