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19 旦那様(美少女)

 突然、ウィン様に迫られ、陸に打ち上げられた魚の様に、口をぱくぱくさせるサイウン。


 男性経験が無く、耐性が無いせいか、単純に彼の色気にあてられたのか、唖然としながらも色っぽい視線でウィン様を見つめる。


 我が乳母姉よ、惚けているが、その方は一応私の婚約者よ。それと、美少女の様な顔をしているけど、自分の奥さん達の使用済み下着をコレクションしてる変態よ。


 そう言ってやりたくなったが、ギリギリで耐えた。


「ウィン、その人は王女様じゃないわ。従者の乳母姉の方」


「それはそれは、失礼を」


 蠱惑的に微笑んで、ウィン様は、サイウンの顎から手を離した。そのままウインクをして私の方を向く。サイウンはというと、完全に彼に魅力されたのか、ぼーっとした顔で、ウィン様を眺めている。


 ああ、あれは完全に惚れたな。私はそう確信した。赤ん坊の頃から一緒にいる乳母姉の考えている事は大体分かる。貴女、昨日の昼間車の中で、ウィン様に嫌悪感を露わにしてたじゃない。それを一瞬で篭絡するとはとんでもない男だ。


 魅了の魔法でも使っているのかとも思ったが、それは無いと思う。魅了魔法の様な常時発動する魔法を使う時は、身体から魔力が漏れ出す事で、臭くは無いが、良い香りでもない独特な匂いがする。そうした匂いは一切しなかった。代わりに、軍人だけあって、2人からは火薬の匂いが微かに漂っている。


「改めて、貴女が、私の新しい正室様ですね。サラから話は聞いています。歓迎しますよ。ウィン・ラヴメニクロスです」


 それに何より、微笑みかけられただけで、私の心は彼に鷲づかみにされてしまったから。


 ピンクブロンドのツインテールの、青い瞳の、悪役令嬢ものの小説で、まさに『ざまぁ』されそうなテンプレートこってこての外見にも関わらず、その顔は不気味な程に完成され尽くしていて、眺めているだけで正気を失いそうな錯覚に陥った。


 まるで、クトゥルフ神話の神格に遭遇したが如き衝撃である。この小説の作者の腕前では、この目の前の美少女、否、美という言葉を擬人化した様な外見を上手く表現出来ない事が悔やまれる。


 ともかく、微笑みだけで人を発狂させる事が出来そうな人間が、そこにいた。


 落ち着け。落ち着け、私。目の前の美少女は、自分の奥さんの使用済み下着をコレクションしている変態だ。私が今はいてるパンツも狙っているに違いない。


 そう自分に言い聞かせて、ギリギリ正気を保った。 


 こんな外見で、しかも第2王子で国の英雄なのだ。そりゃ、トップアスリートやロックンロールスターみたいな扱いになるし、ハーレムを囲っても誰も文句なんか言えないだろう。 


「……こ、これはウィン様、わ、わざわざ訪ねていただけるとは、ご足労をおか、おかけいたしました」


 カーテシーをしつつ、内心の動揺はまったく抑えられない。


 私のどもり具合を滑稽に感じたのか、ウィン様はクスリと笑った。


「少し緊張されていますね。大丈夫ですよ。周辺国の連中からは死神だの、悪魔だの、鬼神だの後ろ戸の邪神だの言われていますが、べつに普通の人間です。取って食ったりしませんよ」


「はは、ありがたき幸せ」


「くすす……王女様、変わった方だねぇ。アタシぃ、面白い人は嫌いじゃないよぉ」


 私の台詞に、滑稽なものを感じたのだろう、ウトリクラリアちゃんは楽しそうに笑う。


「王女様……いえ、ねえさま。緊張し過ぎよ。まぁちょっとウィン様は美人過ぎるから仕方ないけど」


「う、うん。ネペンテスちゃんの言う通りね……。それと、本当に姉さまって言ってくれた!!」


「サラお姉さまがこう呼びなさいって、しつこいからよ!」


「ネペは、こう見えて真面目だからねぇ」


 姦しい空間になりかけた所で、ウィン様は手を叩いた。


「はいはい、我が妻達よ。こんな所で立ち話もなんです。一度、場所を移しましょう」


 そのまま、彼は私に近づく。やめて、顔が近い。その眺めているだけで正気を失いそうになる顔で微笑みかけないで。鼻血が出そう。これで魅了魔法の類は一切使っていないというのだから、これは最早兵器と言っても過言ではない。


「我が新たなる正室様。これも何かの縁です。仲良くいたしましょう」


「ふ、ふぁい……」


「ふふ、可愛いですよ。元々政略結婚とはいえ、あなたを独り占めできるというなら、この婚姻を受けたのは正解でしたね」


 耳元でその美声を余すところなく披露したものだからたまらない。まずい、このままでは失神しそうだ。早く落ち着ける場所へ行きたい。


なんで作者の小説の主役クラスの男は、毎回SAN値削れるレベルの美少女男の娘になるか分かります? モテるのに簡単に説得力つけられるからだよ。


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