生理現象みたいなもの
15時までまだまだ時間がある。
神の家には、以前phantomが案内してくれたアフタヌーンティーを楽しめるカフェがあり、そこでは食事も楽しめた。カフェで時間を潰すこともできたが、一応俺たちは悪魔狩りの名目でここに来ている。いきなりカフェで寛いでいては……さすがに天界へ報告されそうだ。
だから、俺たちは神の家をひとまず出ることにした。
「つまりこれから、マティアスさんとソフィアさんの知り合いの悪魔に会いに行くんですね?」
アクラシエルはラファエルと会話ができ、さらに「愛しているよ」と言われ、そして会う約束もできたことから、かなりご機嫌だ。
だからニコニコしながらこうアドバイスをした。
「知り合いの悪魔に会う、とのことですが、現在の姿で会うのは初めてですよね? もしかしたらマティアスさん、ソフィアさんであると、相手の悪魔は気が付かないかもしれません」
「それは……確かにそうだ。ソフィアはまだしも、俺は悪魔狩りで地上へ降りたが、誰も俺が誰であるか気付かなかった」
アクラシエルは苦笑する。
「それはそうですよね。元 が、まさか天使の姿で現れるなんて、誰が想像できる?という話です」
「……まあ、その通りだ。事前に連絡をいれて向かおうと思う」
俺の言葉にアクラシエルは「それがいいです」と言った上で、こう付け加える。
「天使も悪魔もお互いの気配を察知できますよね。天使からすると、悪魔が持つ禍々しい気配は、ただそれだけで不快です。逆に悪魔は、天使の気配に吐き気を覚えたりするでしょう?」
「それは……お互い生理現象みたいなものだ。仕方がない」
アクラシエルは俺の言葉に頷いた。
「事前に連絡をとり会いに行ったとしても、お互いに気まずくなると思います。腹を割った話もしづらいでしょう」
「……!」
「悪魔が察知する天使の気配、それは天使の力です。天使の力の源は、主によって与えられたものであり、それは闇を照らす光です。天使である我々自身は感じませんが、この体は主によって祝福され、光輝いているのです。
そして我々が着ているこの服は天界で作られたもので、その光を、天使の力を増幅させる効果があります。ゆえに今の私達を悪魔が見れば、非常に居心地の悪さを覚えると思います。
一方、人間は、強すぎる神の力ゆえ、多くがこの姿を見ることできない。ただ、信仰心の厚い人には輝くような人型のシルエットに見えていることでしょう。聖人の域にまで達していれば、そう、先ほどのバトラーは人間ですが、我々の姿がはっきり見ることできるのです」
「なるほど」
ソフィアと俺は同時にそう反応していた。
「ただ、地上の人々が着ている服を着れば、我々の天使の力そして輝きが抑えられます。天使とは分かりにくい状態になり、一見すると、ただの人間のように見えると思います」
「つまり、これから悪魔に会いに行くのであれば、地上で人間が着ている服に変えた方がいい、ということですね?」
アクラシエルはソフィアの言葉に頷く。
「だが悪魔狩りに行くのに人間の服に着替えることは……違和感があるのでは?」
俺の言葉にアクラシエルはこう答えた。
「人間の生活圏に深く入り込んだ悪魔もいます。そう言った悪魔を狩る場合、地上の服を着てあたかも人間のふりをして悪魔に近づく……なんてことも手段の一つとしてとると聞いたことがあります」
「では着替えることに問題はないと。だが地上の服が神の家に用意されているのか?」
「有能なバトラーが用意してくれますよ」
次回更新タイトルは「男だったら誰もが抱く欲求だと思う」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




