二人だけしか知らない秘密
バトラーからスマホを受け取ると、ソフィア素早く操作し、ラファエルの情報を検索する。
ラファエル……phantomはアーティストの活動を続けていた。
相変わらずの人気だし、最近はMisfitというアーティストとユニットを組み、チャリティーコンサートや慈善活動に力を入れていた。
「あ、ありました。phantomのSNSが。DMは……承認した相手からは送れるようになっていますね。私が以前使っていたアカウントが残っていれば、ここからDMを送れるのですが……」
スマホを操作していたソフィアが固まった。
「どうした、ソフィア?」
驚きの表情でソフィアは俺を見る。
「なんかその、私、芸能活動を続けていることになっていました」
「え⁉」
「なんでもあの日、事故に巻き込まれ、大怪我をしてしまい、そこからVTuberとして活動していることになっています……」
「そうなのか⁉」
「はい。ちなみにマティアス様も同じです」
驚いた。
突然俺たちがいなくなり、でも仕事は山ほどあり、田中さんとしては苦肉の策だったのかもしれない。
「まあ、その件は一旦保留だ。ソフィアのアカウント、使えそうか?」
「あ、はい。ログインできるか試してみます」
ソフィアはスマホを操作し、「あ、できました。パスワードは変わっていませんでした」と言うと、アクラシエルを見る。
「とりあえずphantomにメッセージを送りますが、ラファエルとアクラシエルさんの二人だけしか知らない秘密って何かありますか? それを書けばこのメッセージが悪戯ではなく、本物だとラファエルが信じると思うんです」
俺とソフィアが何を話しているのか分からず困惑気味だったアクラシエルが、ソフィアに問われ、我に返った。
「そうですね。……いろいろありますが」
しばし考え込んだ後、アクラシエルは頬を赤くしながら、小声でソフィアに告げる。
「その……五回は頑張ったと思うのですが、褒めてくださいますか、ラファエル様、と書いてみてください。……ラファエル様なら、なんのことか分かると思います」
「五回は頑張ったと思うのですが、褒めてくださいますか、ラファエル様、ですね。分かりました」
ソフィアはとても真面目にメッセージを打ち込んでいるが……。
おい、おい、アクラシエル、まさか五回って婚儀を挙げた夜の秘め事の話じゃないよな……。
アクラシエルを見ると……。
アクラシエルは顔を真っ赤にして俺を見てぎこちなく笑い、頭を掻く。
……。
自分の勘が当たっていることを確信した。そして何も気づかずにメッセージを打ち込むソフィアに同情した。
だが。
アクラシエルのメッセージと共に、スマホに連絡をくれるようDMを送ると、速攻で反応が返ってきた。つまり、ソフィアがメッセージを送って一分も経たずに電話が鳴ったのだ。
電話には俺が出た。
スピーカーフォンで会話を始める。
「phantom、いや、ラファエル、俺だ。マティアスだ」
「……マティアスか。あの時は……すまなかった」
相変わらずの澄んだ美しい声だった。
この声が謝罪の言葉を口にするとは……。
驚いて声がでない。
アクラシエルは両手で顔を覆い、泣いていた。
ソフィアは俺と同じで、驚愕の表情を浮かべている。
「ソフィアちゃんとは天界で再会できたんだな」
「……ああ」
なんとか声が出た。
「良かった……。神殿で婚儀は挙げたのか?」
「それは……」
聞かれたくない話を尋ねられた。
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次回更新タイトルは「まったくの想定外」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




