希望エリアは……日本?
『天界軍騎士総本部』が開く8時にあわせ、俺たちは三人揃って家を出た。
本部にはすぐ到着した。そして騎士希望であることを伝えると、あっという間に受付へ通される。そこで書類を記入し、即審査となった。もちろん全員、騎士として採用される。これから悪魔狩りに行きたいと伝えると、アクラシエルが言っていた通り、俺以外は実演を求められた。
ソフィアは用意された的に五回連続命中させ、さらに上空に投げられた林檎も見事射止める。審査していた騎士が思わず拍手するぐらいの腕前だ。
アクラシエルが使った天使の光は確かに強力なものだったし、実際に悪魔狩りから帰還した騎士に対して行った癒しは完璧だったようで、合格点をもらえた。
実演を終えた俺たちは武器を受け取り、出発前審査を受けることになった。
審査と言ってもここでは悪魔狩り向かったパーティを記録するのが主で、同時にどのエリアに向かうかを決められることになっている。
ガブリエルに悪魔狩りへ連れて行かれる時、これらがすべて省かれていたのは……奴が大天使だからだろう。
「希望エリアは……日本?」
書類を見た審査官の騎士は首を傾げる。
天界において日本の知名度はかなり低いようだった。
「サイラス審査官、日本は少し前に、ラファエル様とウリエル様が降臨した極東の地ですよ。その時は数千の悪魔がその地に集結していたとか。今はそこにラファエル様とウリエル様がいますが、撃ち漏らした悪魔が潜伏している可能性があります。ですからそこへ向かおうかと。こちらのマティアスさんはすでに百体以上の悪魔を狩っていますし、行き先の選定をできる立場です。その腕前は疑いようがないものなので、安心してまかせてよいかと」
アクラシエルが助け船を出してくれる。
「なるほど。確かにそんな出来事があったな」
サイラス審査官はそう言いながら書類に目を通し、ハッとした表情になり、アクラシエルを見た。
「アクラシエル様⁉ あ、悪魔狩りに参加されるのですか⁉」
アクラシエルはウィンクして唇に指を当て、「しーっ」と囁く。
サイラス審査官は周囲を見て、それから軽くコホンと咳をした。
「……分かりました。許可しましょう。『神の家』の利用も希望するということで了解しました。こちらから連絡をいれておきます」
そう言うと書類に印を押す。
そして小声でアクラシエルに「お気をつけて」と囁くと、ゲートを開けた。
ゲートを抜けるとそこはまさに断崖絶壁という感じで、そのまま地上へ向け飛び立てるようになっている。
「アクラシエル、さっきのサイラス審査官、あれは知り合いか?」
俺の問いにアクラシエルは頷いた。
「彼もまた天界に来てすぐに図書館の係員の『役割』を得て、十年ぐらい私と図書館で過ごしたんです。その頃はまだ魔界との戦も激しい時期で、彼はあの体躯。丈夫な体をいかすため、騎士へ立候補したんですよ。歴戦を経て、順調に出世したのでしょう。審査官になっていたことは、今日初めて知りました」
「なるほど」
俺が答えるや否や、アクラシエルは翼を広げた。
「さあ、マティアスさん、ソフィアさん、地上へ行きましょう!」
輝くばかりの笑顔を見せ、アクラシエルが飛び立った。
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次回更新タイトルは「寂しがり屋の元魔王」です。
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