無防備な寝顔
昨晩は夜空の散歩に出なかったので、いつもよりソフィアとベッドで過ごす時間が長くなった。そして食事の時から俺の中でソフィアを求める熱が高まっていたので、ベッドで抱き合いキスを交わしていると……。その先に進みそうになり、何度もソフィアに止められた。
ここで一線を超えたら地上へ堕とされてしまう。
地上へ堕とされ、人間になることは……そこまで嫌だとは思わない。
ソフィアと二人、有限の命を生きる、それはそれで悪くはないと。
ただ。
記憶を奪われるのは……。
ソフィアと離れたくない。
ソフィアのことを忘れたくない。
その強い思いで、なんとか高まる熱にブレーキをかけていた。
そして今朝……。
無防備な寝顔は、再び俺の心に火をつける。
ソフィアを腕の中から離したくない――そんな気持ちになっていた。
その結果、本来起きている時間を過ぎてもなお、ソフィアと俺はベッドにいたままだった。そしてソフィアに甘え続けていた。
「マティアス様、遅刻してしまいます……」
困り顔のソフィアも可愛らしい……。
「マティアス様、聞いていますか?」
「うん……」
答えながらも次の瞬間には、その唇にキスを落としている。
ソフィアは壁の時計を見てため息をつくと……。
「……今から神殿に行きますか、マティアス様?」
「……!」
この言葉には心が動かされる。
だが。
昨晩神殿を使えなかった俺たちが今朝来ると見込んだガブリエルが、待ち伏せしている気がした。
「確かに今すぐ神殿に行きたい……。でもガブリエルが待ち受けている気がする。……起きよう、ソフィア」
ほっとした表情で、ソフィアは「はい」と頷いた。
◇
ソフィアをホワイト・ベーカリーまで見送り、その後は掃除をし、洗濯をするうちに、家を出る時間になった。アクラシエルはいつもの時間に迎えに来た。玄関に白百合の鉢がないことから、婚儀は失敗したと分かっていたのだろう。何があったのかとすぐ尋ねた。
図書館へ向かう道中で、昨晩のアリエルのことを話した。
「……まさか清めの儀式まで、二人の婚儀を止める手段に使うとは……。それはさすがに天使の私から見てもヒドイと思います……」
アクラシエルは深く同情を示す。
一方俺は、昼休憩を使い、二人だけで話したいことがあると告げた。アクラシエルは快諾し、そこで図書館に着いた。
いつも通り、気になる本をとり、閲覧席に向かった。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!
次回更新タイトルは「規格外の強さ」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




