会わせてやりたい
昼休憩が終わる時間になると、自然と目が覚めた。疲れていたからだろうか。夢も見ずにぐっすり眠っていた。
当たり前だが、胸の中にアクラシエルの姿はなかった。
迷惑だ、とハッキリ言ったのだから、いなくて当然と思いつつ、フロアに目を向けると……。
少し離れたカウチソファで、アクラシエルが横になっているのに気づいた。
昼休憩が終わる時間だったので、声をかけようとそばによると、アクラシエルは閉じた瞳から涙をこぼしている。
さらに寝言で「ラファエル様」と囁いていた。
そんな言葉を聞いてしまっては……。
声をかけることができなくなり、そのまま一階へ降りることになった。
アクラシエルがあんな風に泣くことになった原因は……ラファエル自身にある。だから俺には関係がないと目をつむることもできた。
でも……。
何も知らなかったアクラシエルは、俺達のことをいろいろと助けてくれた。
もちろんそこには、ソフィアと俺がラファエルの持つ男女それぞれの側面に似ているから、という下心があったのも事実だ。そして俺たちとラファエルの間の因縁を知り、ソフィアに対して許しがたい行為をした。
しかしそれを謝罪し、今は再び助言を与えてくれている。
会わせてやりたい……。
アクラシエルとラファエルを。
突然の別れだった。次にいつ会えるのかも分からない。
せめて一度でも話すことができれば、アクラシエルも落ち着くだろう。それにラファエルもアクラシエルのために、修行に励むことができるはずだ。
地上へ行くチャンスは、やはり悪魔狩りに参加するしかない。
一階に着くと、俺は悪魔狩りや騎士に関する本を探した。
◇
「マティアスさん、そろそろ時間では?」
アクラシエルの声に、読んでいた本から顔を上げる。
「随分熱心に読んでいましたね。その本、借りて帰ります?」
「いや、大丈夫だ」
本を持って立ち上がった。
「今日はうまくいくといいですね」
本棚に本を戻す俺の後ろを、アクラシエルがついてきている。
「そうだな……。まあ、二度失敗しているから、あまり期待せずに行く」
「玄関に白百合の鉢を置いておきますよ。もし神殿へ入れたならそのまま朝まで放置されていることになります。放置されていたら成功ということで、ホワイト・ベーカリーにはお二人が神殿へ行ったと伝えておきます」
本を戻す手が思わず止まる。
「……そうか。そうしてもらえると助かるよ。ありがとう」
またもアクラシエルに、親切心を示された。
ソフィアのことを思うとまだ許せない気持ちがあるが、憎めない奴だと思えてしまう。
「お役に立ててよかったです。くれぐれも気を付けてくださいね」
「ああ」
アクラシエルに手を振り、出口へ向かった。
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次回更新タイトルは「誰もいないうちに」です。
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それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




