住まいゲット!童貞喪失⁉
それからはとんでもない日々を送ることになった。
まず俺も田中さんに会い、正式に事務所に所属することに同意した。
すると田中さんはグループ会社の不動産屋に頼み、俺たちが暮らす部屋を見つけてくれた。
もうカップルとして売り出すからと俺とソフィアの同居を認めてくれた。
俺とソフィアの関係うんぬんの部分はとりあえず田中さんの勘違いのままでいくことにした。その方がロルフやベラも含め、四人で暮らすことができたからだ。
エミリアは俺たちが出て行くことになると知ると、とても残念がった。
「ソフィア、あなたがいなくなってとっても寂しいし残念だわ。……でも仕事と住む場所が見つかってよかったわ。また困ったら戻ってきなさいよ」
そう言ってソフィアを抱きしめた。
続いて俺を抱きしめながら
「全く、禁欲生活千年の魔王様には敵わないわ。その心を溶かし、あなたの身と心を手に入れた女ができたら、必ずわたしに紹介してよ。わたしが敵わないと思う相手じゃないと許さないからね」
そう言うと背中を思いっきりはたいた。
店の女悪魔たちも次々とソフィアに抱きついて別れを惜しんだ。
ロルフやベラはみんなにモフモフされすぎて、へろへろになっていた。
こうして俺たちはついに、この地上で自分達の住まいを手に入れた。
部屋の間取りは2LDK。
俺もソフィアもそれぞれ部屋を持つことができた。
「今日は引っ越し祝いを兼ねて、お料理頑張ってみました!」
届いた家具や家電の設置を俺がしている間に、ソフィアは沢山の手料理を用意してくれた。
料理は全然できないと言っていたのに、お店の女悪魔たちとまかないを作ることで、ソフィアは料理の腕を上げていた。
「マティアス様、明日はお休みなので特別に、これを」
ソフィアは赤ワインのボトルをテーブルにどーんと置いた。
「エミリアさんが餞別としてくださったんです。かなり高いワインのようですよ」
そういうとワイングラスを二つ、テーブルに置いた。
「えー、オレも少し舐める」
「あたしも味見したい!」
ロルフとベラも目を輝かせた。
「まったく子犬と猫のくせに、大丈夫なのか?」
「大丈夫でーす。一応まだ魔力がある悪魔ですから~」
俺の問いかけに二人は声を揃えた。
ソフィアがワインの栓を抜き、グラスにワインを注ぎ、ロルフとベラのために小皿にワインをいれた。
「ソフィアもお酒、大丈夫なのか?」
「あ、はい。いろいろな行事の時に少しだけいただく機会もありましたので。沢山飲めるわけではないですし、強いわけではないですが」
こうして皆が着席し、新居を祝う乾杯をして、食事がスタートした。
◇
ちょっとだけと言いつつ、結局三回ぐらいおかわりをしたロルフとベラは、早々に酔っぱらった。
今はソファで二人ともひっくり返っていた。
俺とソフィアは後片付けをしていたが、久しぶりのお酒で俺も少し酔いが回っていた。
なんだかんだでほとんどのワインを俺が飲んだのだから、酔っても当然だった。
ソフィアを見ると、頬がコーラルピンク色に変わっていた。
耳もほんのり頬と同じ色をしていたので、酔いは回っているようだった。
シンクに二人で立ち、分担して洗い物をしていた。
スポンジを泡立て食器をこすっていると、小さなシャボン玉ができた。
「ソフィア見て」
お皿をお湯で洗い流していたソフィアはその手を止め、シャボン玉を目で追った。
「小さくて可愛いシャボン玉ですね」
しばし二人でシャボン玉の姿を追ったが、やがてシャボン玉は弾けて消えた。
洗い物を再開すると、ソフィアの手が俺に触れた。
その瞬間。
信じられないほど心臓がドキドキした。
ソフィアの手が触れたところを起点に全身の血流が速くなったように感じた。
酔っているからか、過敏になっているのか?
俺は深呼吸して、なんとか騒がしい心臓の鼓動を落ち着かせようとした。
「あっ」
ソフィアが小さく声を漏らし、小皿がシンクに落ちた。
運悪くそこにはワイングラスがあり、ステムにあたり、そこはポキリと折れてしまった。
「マティアス様、申し訳ありません」
「大丈夫だ。俺が拾うからソフィアは……」
「痛っ」
「大丈夫か⁉」
ソフィアは折れたステムを拾おうとして指に切り傷を作ってしまった。
俺はソフィアの手を掴むとすぐに血を洗い流し、そのままソファに座らせ、救急箱を取り出した。
引っ越しにあわせ、買ったばかりの救急箱がこんなにすぐ役立つとは思わなかった。
ガーゼを取り出し、傷口に当て軽く止血を行った。
魔力があれば簡単に治せるのに、人間の体は不便だった。
「……マティアス様、ご面倒をおかけして……すみません」
ソフィアの瞳が潤んでいた。
「気にするな、ソフィア」
しばらく傷口を押さえ
「ソフィア、自分で少し押さえてもらえるか?」
ソフィアは頷いた。
その間に消毒薬を取り出し、絆創膏を用意した。
「よし、もう大丈夫」
消毒薬をつけ、絆創膏を貼り、ソフィアの顔を見た。
「終わったよ。洗い物は俺がやっておくから、ソフィアはそのまま休んでいるといい」
ソフィアは頷き俺を見た。
まだ瞳は潤んでいて、頬はバラ色に染まっていた。
酔いがさっきより回ったのか……?
俺は救急箱を戻そうとして目を見張った。
「おい、ロルフ、いくら酔っぱらったからって、ベラに絡むな」
ベラにのしかかっていたロルフを引きはがし、俺の部屋にいれた。
「ベラ、大丈夫か?」
ベラの瞳はトロンとして完全に酔っている。
ベラを抱え、ソフィアの部屋に連れて行った。
今度はどんなに飲みたがってもおかわり禁止だな。
キッチンに戻ると洗い物を再開した。
それにしてもロルフもベラも酒豪を自慢していたのに、あんなに酔うとは……。
動物に変化していると酒が回りやすくなるのだろうか。
そんなことを考えながら洗い物を終え、リビングに戻ると……。
ソフィアがクッションを抱え、ソファに横になっていた。
「ソフィア、眠いのか?」
俺の言葉にソフィアは慌てて起き上がった。
まだ瞳は潤んでいて、頬はバラ色で、少し汗をかき、そしてなんだか苦しそうに呼吸していた。
「ソフィア、気分が悪いのか?」
ソフィアは首を振った。
とりあえずコップに水をいれ
「ソフィア、酔いが回っているなら、水を飲むといい」
ローテーブルにコップを置き、ソフィアの隣に腰をおろした。
ビクッとソフィアが反応し、ソファの端に移動した。
……?
……おかしい。
お酒に酔っていると思ったがなんだか違う気がする。
そこで俺はあることに思い当たった。
まさか……。
今日、皆で飲んだワイン、それはエミリアがくれたものだ。
……間違いない。
あのワインには魔力で催淫効果が加えられていたんだ……。
そう認識した瞬間、ソフィアと洗い物をしていた最中に、手が触れただけで心臓が高鳴ったことを思い出した。
俺は長らく自分をコントロールしてきたから、自分の中でスイッチが入りそうになっても、それを抑えることができた。
でもソフィアは……。
エミリアの奴、最後の最後に……。
いや、きっと店に置いていた酒だ。
催淫効果を加えたものと気づかずに渡した可能性もある。
それよりもソフィアをどうするかだ。
魔力が使えないからすぐに解除することもできない。
でも効果は数時間だ。
「ソフィア、水を飲んで、今日は休め」
ソフィアは切なそうな顔を俺に向けた。
この表情は……キツイな。
深呼吸して気持ちを静めた。
そしてグラスをとり、ソフィアに渡した。
ソフィアに触れないよう、気を付けてグラスを渡した。
グラスを受け取ったソフィアはゆっくり水を飲んだ。
ベラと同じように瞳がトロンとしてきた。
口が少し開き、そこから水滴がこぼれた。
その様子を見ているだけで、俺自身も気持ちが高ぶりそうになり、必死に深呼吸した。
ソフィアがグラスをテーブルに置いた。
「よし、ソフィア、部屋に行こう。立てるか?」
頷いてソフィアは立ち上がったが、足がもつれ、倒れそうになった。
仕方なくソフィアの体を支えた。
「マティアス様、すみません……。なんだか体が熱くて、苦しくて……」
「うん。今日の飲んだワインは少し強かった。気にするな。明日になれば元通りだ」
「マティアス様の胸の中は……なんだか落ち着きます……」
「ソフィア……」
目を閉じ、暴走しそうになる気持ちを必死に抑え込んだ。
ソフィアに触れてしまえば、俺の中でも催淫効果のスイッチが入ってしまうことは分かっていた。
「マティアス様とずっとこうしていたい……」
ソフィアの体を支えた時、その両手は自身の胸の前にあった。
だが、今、ソフィアはその両手を伸ばし、俺の背に回していた。
俺の体はソフィアの柔らかい胸を感じ取っていた。
エミリアが何をしても俺の気持ちは動かなかったのに、今はもう限界だった。
ソフィアの背に腕を回し、しっかりと抱きしめた。
「ソフィア、部屋に行こう」
そのままソフィアを抱きかかえた。
部屋に行き、ベッドにソフィアをおろし、俺はソフィアを抱きしめた。
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この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!
次回更新タイトルは「練習をしたい!」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
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バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり
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