表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode2】天界大騒乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/190

私は穢れてしまいましたか?

「突然アクラシエルさんに抱きしめられ、無理矢理キスをされそうになり、ほんの一瞬だけ、唇が……触れてしまいました。でもすぐに逃げ出しました。ですから……」


ソフィアが必死に俺を見上げている。


他の悪魔にも人間にも天使にも、ソフィアに指一本触れさせたくなかった。


ほんの一瞬であろうと、その唇に触れたなんて……。


「マティアス様、私は穢れてしまいましたか? もうマティアス様のおそばにいることは叶いませんか?」


ソフィアの瞳から、涙がこぼれ落ちる。


「穢れてなどいない! 例えどんなことがソフィアの身に起きようと、それでソフィアのことを俺が嫌うなど……あるわけないだろう! 千年以上、ソフィアのことを想い続けてきたんだ‼」


槍を投げ捨て、ソフィアを抱きしめた。


「大丈夫だ。ソフィア。大丈夫だから」


嗚咽するソフィアを、なだめるように抱きしめる。

安心させるように頭を撫で「大丈夫だ」と繰り返す。


ソフィアに向けての言葉だった。でも俺自身も繰り返し口にすることで、気持ちが静まりつつあった。


ほんの一瞬唇が触れただけだ。

……本当は何もなければよかった。

でもそれは起きてしまった。


それでも抱きしめられ、ほんの一瞬のキスだけで済んだのなら……。


この怒りはおさめなければならないと思った。


おさめなければと思っているし、理解しているのだが……。


気持ちは落ち着いたが、アクラシエルを許さない、という思いは消えていない。


消えなかった思いを一旦頭の片隅に追いやり、俺はソフィアに言った。


「ソフィア、帰ろう。俺がいるからもう大丈夫だ」


「マティアス様……」


「帰ったら今日の出来事を忘れるぐらい、沢山ソフィアにキスをするから」


「……!」


ソフィアを抱き上げ、翼を広げた。



夜空を飛んでいる時、ソフィアはとても穏やかだった。


俺に身を預け、安心しきっている様子が伝わってきた。星空はいつも通り輝いていたし、銀色の月明りは優しく降り注いでいる。まるでいつもの夜空の散歩の気持ちになっていたのだろう。


だが……。


家の屋根が見えてくると、ソフィアはそちらを見ないよう、俺の肩に顔を押し当てた。


ドアの前に着き、ゆっくりソフィアをおろしたが、今度は俺の胸に顔をうずめる。


左腕でソフィアを胸に抱き、右手で慎重にドアを開けた。


アクラシエルは女性と見えるぐらい華奢だ。だからもし部屋に潜んでいたとしても、俺の腕一本でなんとかできるだろう。


部屋は明かりがついたままだ。


「ソフィア、部屋に入るよ」


耳元で囁くと、ソフィアは俺に密着するように体を寄せ、苦しそうな表情で前方を見る。


「俺がいるから大丈夫」


そう言って頬にキスをして、ゆっくり歩き出す。


廊下を通り、途中バスルームを確認し、リビングに向かった。


テーブルには食べかけのまま夕食。

部屋のどこにもアクラシエルの姿はない。

念のため、クローゼットの中も確認したが問題なかった。


「ソフィア、この部屋には俺とソフィアの二人しかいない。安心していい。食事は途中だったようだけど、もう大丈夫だな?」


頷く様子を見て、さらに声をかける。


「ではシャワーを浴びておいで。玄関のドアは外から開けられないようにしておくから」


「……分かりました、マティアス様」


ようやくソフィアが声を出した。


ホッとして、思わずソフィアの頭を撫でていた。

俺のその様子を見たソフィアは、笑顔になる。


良かった。いつものソフィアだ。


「もう時間が遅いので、早く寝る準備をしないとですよね」


「そうだな。……ソフィア、明日は無理をせず、辛かったら『役割』を休んでいいんだぞ」


ソフィアはクスリと笑い「そうならないよう、準備します」と言ってバスルームへ向かう。


その姿を見送るとすぐにリビングにあった椅子を玄関に運び、ドアが開かないようにセットした。これで完全にドアが開けられないわけではないが、少なくとも無理に開けようとすれば音もする。侵入者がいれば、目覚めることができるだろう。


リビングに戻るとテーブルの上の夕食を片付けた。


俺自身、昼も夜も食事をしていなかった。だが天使の体は便利なもので、それで食欲がわくこともなく、空腹で動けなくなる、ということもなかった。


ひとまず水だけ飲み、一息ついたところで、ソフィアがバスルームから出てきた。


「ソフィア、玄関のドアは椅子をストッパー代わりしておいたから。もし誰かが無理をして入ってきても、音で気が付くから大丈夫だ」


「……! ありがとうございます、マティアス様」


「疲れていたら先に休んでいいから」


「はい」


ソフィアは笑顔で返事をし、俺はバスルームへ向かった。



シャワーを浴び、リビングに戻ると、ソフィアはベッドで横になっていた。


様子を見てみると、既に寝息を立てている。


あんな場所で5時間近く待ち続け、しかも何度も涙を流した。そしてようやく緊張の糸がほぐれたのだ。眠って当然だったし、眠れるぐらいソフィアの緊張感が緩んでいることに安堵する。


電気を消し、ソフィアを抱き寄せ、眠りに落ちた。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「優しくキスをした」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ