お互いを意識し過ぎて……
「マティアス様……?」
戸惑うソフィアの手をとり、静かに尋ねた。
「千年以上前からずっと、ソフィア、君のことだけを想ってきた。愛している。俺の伴侶になってくれるか?」
三日月の銀色の月明りを浴び、ソフィアは輝いている。
今の言葉を聞いて、心なしかさらにその姿は一段と輝いたように見えた。
純白の翼と白のキトン。
透き通るような肌と流れるようなブロンドの髪。
なんて美しいのだろう……。
ソフィアの心の美しさが、その姿にも反映されているようだった。
「マティアス様、ありがとうございます。……私も千年以上、マティアス様のことだけを想ってきました。私をマティアス様の伴侶にしてください」
胸に様々な想いがこみ上げる。
神殿での宣誓と署名こそが正式な手順と分かっていたが、俺の中ではもうソフィアとの婚姻は成立したも同然だった。
ソフィアの手に指輪をはめる。
ソフィアの瞳と同じ碧い宝石が埋め込まれた指輪だ。
サイズはソフィアが寝ている時に測っていたので、ピッタリだった。
感無量のソフィアは両手で口を押さえ、体を震わせていたが、涙を堪えて俺を見る。
「マティアス様、ありがとうございます。とても……とても嬉しいです」
「そうか。良かった」
立ち上がった瞬間にソフィアが抱きついてきた。
ゆっくりソフィアの背に腕を回し、その体を抱きしめた。
◇
翌日はソフィアも俺も明日のことを意識しているせいか、なんだか落ち着かなかった。
さらにお互いのことを必要以上に気にしてしまい、手が触れるだけで、二人とも赤くなってしまう。そんな状態だから寝起きでも軽くハグするぐらいだったし、ソフィアを見送る際はチークキスだった。
それでいて昼寝の時は夢の中でソフィアを求め、目覚めた時にアクラシエルを抱きしめそうになり、大いに慌てた。
アクラシエルは「マティアスさんは明日、婚儀だから。……もしかしてソフィアさんと思いました?」と、頬を赤らめながらこちらを見るので、俺はさらにあたふたすることになった。
そんな状態で迎えた午後、本を読むことなど集中できるわけはなく……。
しかも大量にある蔵書は、主の教えや四大天使の活躍の記録が多く、読む気が起きない……いや読むのに集中力が必要なものばかりだった。
それでもなんとか午後をやり過ごし、図書館を出た。
アクラシエルと家の前で別れる時……。
「神殿の扉が開くのは24時間後ですから、無理して明後日、『役割』を果たさなくていいですからね。マティアスさん、体力もありそうですし、大丈夫と思いますけど……。腰痛になっているかもしれないですから……」
とんでもないことを言われ、赤面して「……心配には及ばない。また明後日」とだけ言って逃げるように部屋の中に入った。
天使は恋愛感情や肉欲とは無縁だというのに、アクラシエルはなんというか、そう言った感情を知っているように思えた。
もしかしてアクラシエルは婚儀を挙げたことがあるのか? でも今は一人暮らし。かつて婚姻関係にあった天使がいたがそいつは死んだ……?
「あっ、マティアス様、お帰りなさい」
玄関をのぞき込むようにソフィアが顔を見せた。
「ああ、ソフィア、ただいま」
アクラシエルの件は気になるが、今はそれよりもソフィアだ。
何しろ明日、俺達は婚儀を挙げるのだから。
足早にリビングへ向かった。
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