心ここに在らず
翌日の朝はソフィアが先に目覚め、その気配に俺も目を覚ました。
寝起きのソフィアは少しぼおっとした感じで、とても愛らしい。
せっかく早起きしたが、その分の時間は、俺がソフィアに甘える時間で消えていく。ただ、昨晩のパンもデザートも残っていたので、準備の時間は短縮されている。だから問題なく朝食を終え、そして何だかんだで再び甘いキスを交わしていた。
「それではマティアス様、行ってきますね」
「うん。気を付けて」
玄関でソフィアを見送り、いってらっしゃいのキスをして……。
その後はアクラシエルが昨日と同じ時間に迎えにきて、共に翼を広げ空へ向かった。
昨日、ガブリエルが現れた地点に来ると緊張が走る。アクラシエルに気づかれないよう、周囲に目を配った。だが、ガブリエルの気配はない。
それでも気を抜けず、図書館の建物の中に入るまで、緊張感は抜けなかった。
「……でしたよ、マティアスさん」
「……? すまない、聞いてなかった」
「大丈夫ですか、マティアスさん。心ここに在らずですが」
アクラシエルが不思議そうに見ている。
「そうだな。すまない」
するとアクラシエルはクスクスと笑った。
「ソフィアさんのことを考えていたのですね」
「……!」
「いつでも休んでいいんですよ、マティアスさん。我慢せず」
意味深な目でアクラシエルがこちらを見る。
「えっ……」
「まだ神殿で婚儀を挙げていないのですよね? 想う気持ちがあるなら迷わず神殿へ行くべきかと」
「……そうだな。近いうちに休みを……もらうと思う」
「はい。ぜひそうしてください。そうしていただければこちらもあきらめがつきますから」
「え……?」
「ああ、エルサ、おはよう」
アクラシエルはカウンターに座る女天使の方へ歩み寄っていった。
今、何か引っかかる一言があったような……。
改めてアクラシエルを見る。
女天使相手に穏やかに微笑むアクラシエルは……限りなく善良にしか見えない。
魔王の名残なのか。疑り深いのは考えものだな。
再び翼を広げ、昨日の続きの絵を見るため、四十階へ向かった。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
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次回更新タイトルは「天界での日常」です。
果たして平和な日常はいつまで続くのか……。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




