脱がすのが専門なんだが
夜空の散歩は本当に楽しかった。
魔界でこんなことをしたら、城中の悪魔が空を見上げ、あんな風に情熱的なキスはできなかっただろう。いや、それ以前の問題で、衆人環視の中でのデート、ましてやキスなどソフィアが許すわけがなかった。
かといってもし地上で飛ぶことができて、同じように夜空を散歩したら……。
俺達のデートの様子やキスする姿はSNSを賑わせ、沢山の動画が投稿されるに違いなかった。UMA(未確認生物)のカップルとしてバズリそうだ。
そんなことをベッドに横になって妄想していると、ソフィアがシャワーを終えて部屋に戻ってきた。
……!
ソフィアは昨日の宣言通り、イオニア式のキトンを着ていた。
その新しいキトンを着たことで、ソフィアは難攻不落の城になってしまった。
どこが難攻不落なのかと言うと……。
ホワイト・ベーカリーでの『役割』を終えた後、ソフィアは洋服屋に行った。そこで俺の替えとなるキトンと自身のイオニア式のキトンを手に入れていた。そしてソフィアは、留め具の代わりに自身でボタンを用意し、それを縫い付けていた。
ボタンと言ってもそれはパールのネックレスをバラし、パールをボタンに見立てて縫い付け、それをひっかけるための輪を縫い付けていた。
このパールのボタンできっちり留められたことで、ソフィアのキトンは昨晩のように一枚布にあっという間に早変わりする可能性が限りなくゼロになってしまった。
……まあ、昨晩のような状態になれば俺は暴走しかねない。
それにうっかりキトンが脱げて、見てはならないものを見たところでどうすることもできなかった。ただ悶々とすることになるのだから、これはこれで良かったと思うべきなのだろう……。
それでも男としての性なのか……残念……だった。
「マティアス様、このキトン、そんなに似合いませんか⁉」
渋い顔で黙っていたので、ソフィアが心配そうに尋ねた。
「いや、とても似合っているよ。ソフィアはスタイルもいいから、どんな服でも似合う」
ベッドのそばで立ちすくむソフィアの腰を抱き寄せ、そのままベッドに押し倒す。
「でもどんなにソフィアがオシャレをしようと、俺は脱がすのが専門なんだが」
そう言いながら、留め具の代わりのパールのボタンに触れた。
「マ、マティアス様、ダメですからね」
ソフィアが慌てて上体を起こそうしたので、その胸に頭をのせ動きを封じる。左頬はマシュマロのような柔らかい弾力に触れ、とろけてしまいそうだった。
と同時にソフィアの鼓動が聞こえてくる。
突然こんなことをしたから、ソフィアの心臓は大忙しになっていた。
こんなにフル稼働させたら可哀そうだ。
ゆっくり顔を胸から離し、そのまま横になった。
すると。
ソフィアの方から俺の胸に身を寄せてきた。
いざという時は思いがけない積極性を見せるが、普段のソフィアは遠慮がちだ。
特に二人でベッドにいる時は。
だからこんな風に身を寄せられると……。
今度は俺の心臓が大忙しになっていた。
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次回更新タイトルは「元魔王とは思えない動揺ぶり」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




