天使とは思えない邪(よこしま)な理由
食事をしながら互いの『役割』がどんなものだったかを報告しあった。
俺がウリエルの想い人を発見したと言うと、ソフィアはその絵画を見たがった。ラファエルの飾られるはずだった婚儀の絵のことを話すと、ソフィアは困り顔になった。さらにガブリエルの結婚相手の絵があったことを話すと「それは参考までに見ておきたいですね」と呟いた。
さらに景色がいいシェスタ向けの場所があると話すと「マティアス様とそこでお昼寝をしたいです」と可愛らしく微笑んだ。
……近いうちに絶対連れて行こう。そしてソフィアを抱き寄せ昼寝をしよう――俺は心に誓った。
「アクラシエルは、天界に来たばかりの天使の『役割』は図書館の係員が多いと言っていた。でもソフィアがホワイト・ベーカリーの店番になったのは、以前天界に来た時に図書館の係員の『役割』を経験済みだったからなんだろう?」
ブルーベリージャムをサンドしたベーグルを食べていたソフィアは、目をぱちくりさせた。
「マティアス様、天界で過ごした三年間の記憶は覚えていないんです。恐らく私も図書館の係員の『役割』を経験したとは思うのですが……」
「そうか。そうだったよな」
ソフィアは忘却の矢を受けていたんだ……。
「ホワイト・ベーカリーの店番の『役割』を担うことになったのは、その、私が立候補したからなんです。食料品や必要な物を手に入れるために、お店で『役割』をはたせばいいということをまだ知らなくてですね、その時点では。食べ物で困るのは大変と思ったのと、私がパンやケーキが好きということもあり、ホワイト・ベーカリーで店番の『役割』がないか、アクラシエルさんに聞いてしまったんです……」
ソフィアがはにかむように笑った。
「なるほど。それで運よく空きがあったのか?」
ソフィアは「よくぞ聞いてくれました!」という顔をした。
「本当は店番より、パン職人の『役割』を担える人が必要だったのですが、店番をやっている方の一人が、パン職人の『役割』に興味を持っていたんです。それでいい機会だいうことになりまして、その方がパン職人の『役割』を担い、私が店番の『役割』を担うことになったのです」
「なるほど。そんな展開があったのか。……そうなるとソフィアは、しばらくホワイト・ベーカリーの店番の『役割』を頑張らないといけないな」
ソフィアはこくりと頷く。
ソフィアと一緒に図書館の係員の『役割』を担いたいと思ったが、どうやらそれは難しそうだ。
「マティアス様、どうかされましたか?」
心配そうにソフィアが尋ねるので、思わず本音を話してしまった。
「なるほど。マティアス様と同じ『役割』……。それも楽しそうですね。いずれ役割交換をする機会があれば、同じ『役割』にしましょう」
ニコニコとソフィアは微笑むのだが……。
ソフィアと一緒に担いたい『役割』は、図書館の係員だった。
他の『役割』ではない。
なぜなら……。
誰にも邪魔されることのない図書館のあの場所で、シェスタの時間にソフィアを抱いて寝たいだけで……。つまり天使とは思えない非常に邪な理由からだった。
……でもまあ、どんな『役割』であれ、ソフィアと一緒なら楽しいに違いない。
「ところでソフィアの方は今日、どうだっだんだ?」
するとソフィアは嬉しそうに話し始めた。
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次回更新タイトルは「もう抱きしめてキスをするしかない」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




