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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode2】天界大騒乱

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溺愛

気配もなく背後をとられるなんて……魔王時代では考えられないことだった。


天使になってすっかり焼きが回ったか。


「アクラシエルか。カウンターにいなくていいのか?」


「今はお昼休憩の時間ですから」


なるほど。


「それでマティアスさん、この絵画ですが、あなたにはどう見えますか?」


なぜそんな聞き方をするのだろう……。

普通に見れば、ラファエルが花婿で隣が花嫁の婚儀の絵に見えるはずだ。


「ラファエルの婚儀の絵に見えるが」


無難過ぎる回答をしていた。


「ええ、その通りです。ラファエル様が初めて婚儀を挙げられた時を描いたものなのです」


そこからアクラシエルは、その婚儀がどんなもので、どんなに豪華で、どんなに天使たちが祝福したのかを語ってくれた。その熱のいれようからして、アクラシエルも婚儀の場に招待されていたのだと思った。


「それで祝いの宴は三日三晩かけて行われたと」


「ええ、そうです」


アクラシエルは興奮気味に頷く。


「その間、ラファエルは寝所から一度も出てこなかったのか?」


俺の問いにアクラシエルは頬を赤く染めた。


「そうですね……。花嫁のことを……その、溺愛されていたので」


「……花嫁を溺愛……」


うん……? 花婿ではないのか……?


「あ、間違えました。花婿を、です」


「……、この絵では花嫁に見えるが……」


「ああ、それは皆さんこの絵を見てよく勘違いされるのですが、違うんですよ」


アクラシエルはエウリールが語ったように、ラファエルの二面性を説明した。


「なるほど。ではこの時のラファエルは、芸術をこよなく愛する守護者おんなとして、この花婿を迎えたというわけか」


「ええ。そうです。ただですね、この花婿は、その、女性のように美しかった。線も細く華奢で女性のようだった。だから……マティアスさん、あなたのようなキトンの着こなしが難しかった。その結果がこのような姿に落ち着いたというわけです」


再度花婿の姿を見る。


確かに年齢としてはそれなりなのだろうが、少年……いや少女のようにも見えた。


「でも今はこの時よりも成長していますし、少しは男らしくなったと思いますけどね」


そう言うとアクラシエルはゆっくり歩き出した。

つられて俺も歩き出す。


「ラファエル様のお姿は、女性として認識してみるか、男性として認識してみるかで、大きく変わるんです。男性のお姿の時のラファエル様は……あなたのように逞しいお姿でした」


「そうなのか⁉」


最終的にラファエルのことを男性と認識したが、だからといって突然筋肉隆々の男性には見えなかった。男性とは分かっているが、変わらず中性的に見えていた。


「ええ。女性として認識した時のラファエル様は……まさにソフィアさんのように可憐で美しい花のようでした」


……。

認識の強さの度合いの違いなのだろうか。


ラファエルは見る者によって、どうやらかなり姿が変わるようだった。


「だが絵画に描かれているラファエルは戦場でも、そうでない時でも同じように見えたが」


俺の疑問にアクラシエルは微笑んだ。


「ああ、それはラファエル様の意向で、男女の認識が確定されていない時のお姿で描くように、画家に指示を出していたからですよ」


「そうなのか。……アクラシエルは随分詳しいんだな」


「ええ。私はこの図書館の係員の『役割』を、もう千年近く担っているので……」


……!


驚いた。


俺のように天界に来たばかりの天使なら、日がな一日を絵画を見たり、蔵書を読んだりでなんとかやり過ごせる気がした。


でも千年もここに通うなんて……。


蔵書も展示品も一切増えない、ということはないだろう。


それであっても……。


おそらくすべての蔵書を読み、絵画も遺物もすべてアクラシエルは把握している。


驚嘆するしかなかった。


「あっ」


アクラシエルに驚嘆はしたが、声を出すつもりはなかった。


思わず声が出てしまったのは、いかにもここに絵を展示します、という状態ができているのに、そこには絵がなかったからだ。


「ああ、ここですか」


アクラシエルは歩くのを止めた。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「間抜けな横恋慕をした者」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼

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