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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode2】天界大騒乱

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自然と笑みがこぼれた

天界図書館は、美術館と博物館も併設されているだけあって、とても巨大だった。


さらに翼をもっている種族の特徴として、建物は横へ広くではなく、縦へ長い構造をしていた。その点は魔界と一緒だった。


そして収蔵物が多いからだろう。


天界役場、天界救急本部に比べ、そびえたつ塔という姿になっているのは。


「この図書館には常時五人程度の天使が『役割』を担っています。一階から三十階が図書館、三十一階から四十階までが美術館、四十一階から四十六階までが博物館になっています。出入り口は一階、三十一階、四十一階にあります。開館前は一階の出入り口しか開けていませんので、ここから入るようにしてください」


一階の入口から塔の中へ入りながら、アクラシエルが説明を始めた。


「それだけのフロアがあるのに、五人だけで管理しているのか?」


「天使の多くが『役割』を持っていて、そしてあまり休暇もとりません。この図書館に足を運ぶ天使なんて、年間で数人程度です。むしろ、『役割』でこの図書館に来る天使の方が多いんですよ」


薄暗い入口の通路を抜けた瞬間、明るい陽射しが目に飛び込んできた。


見上げると、中心は完全に吹き抜けになっていて、塔の先端はガラス張りになっている。


そこから見える青空から、俺のいる一階まで、陽の光がしっかり届いていた。


光が降り注ぐその先には、円形のカウンターがあり、一人の女天使が静かに座っている。


「同心円状に本棚があり、絵画を飾る壁があり、遺物を展示する棚があります。今日は閉館時間まで、好きなフロアを見て回ってください」


アクラシエルの言葉に驚き、思わず尋ねていた。


「え、仕事をしなくていいのか? 返却された本を棚に戻したり、美術館の入場券を発売したり、掃除をしたりとか……」


アクラシエルが静かに笑いだす。


天界ここでは仕事の概念はありませんよ。あくまで『役割』です。そして先ほど話した通り、図書館の利用者は年間で数人しかいません。今日も誰も来ないでしょう。掃除をするほど汚れることもありません。動き回る人もいませんから、埃さえたまりません。それに天界(ここ)では通貨は存在しませんから」


「……つまり五人の天使がいてもほぼやることはない、ということか」


アクラシエルは頷いた。


「先ほど私は、『むしろ、役割でこの図書館に来る天使の方が多いんですよ』と言いましたよね。天界に訪れたばかりの天使の『役割』は、図書館の係員ということが多いんですよ。理由は分かりますか?」


首を振り、分からいことを示す。


図書館ここにある本を読み、展示されている絵画を見て、多くの遺物を目にすることで、天界を知ることができます。これから永遠の時間を過ごす天界がどんな場所であるのか、それを知るための場所が図書館(ここ)なんです。来館者はほとんどいない。することはない。だから係員は本を読み、絵画を見て、遺物から天界の歴史を感じるのです」


「なるほど」


天界に来たばかりの天使に図書館の係員という『役割』を与える。それはとても理にかなったことだった。


だがそれならソフィアはなぜ……。

そうか。

ソフィアは三年間天界にいたことがある。


人間だった時からソフィアは働き者だった。


でも天界に来て、働く必要はなく、代わりに『役割』を与えられた。


そしてこの図書館の本を、沢山の絵画を、山のような遺物を見て、天界の歴史を学ぶ機会を得た。きっと毎日嬉々としてここにやってきて、知識を貪ったことだろう。


ソフィアは人間、天使と転生しているが、知識欲が旺盛なところは変わらないように思えた。


魔王の秘書として、真面目な顔で書類に目を落としていた時のソフィアの姿が浮かび、自然と笑みがこぼれた。


「マティアスさん……?」


「ああ、すまない」


緩みそうになる顔を引き締める。


「好きなフロアを見て回る、という本日の『役割』、理解いただけましたか?」


アクラシエルが心配そうにこちらを見た。


「理解した。絵画のフロアから見て回るよ」


「ええ。ぜひそうしてください」


ホッとした顔になり、アクラシエルは微笑んだ。


昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「エウリールの秘密」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼

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