無性にソフィアに会いたくなっていた
「コイツは関係ない。俺が自分で『役割』を手に入れたんだ」
ガブリエルは一瞬口を閉ざしたが、ふわっとまたあの笑みを浮かべる。
「そうか。では仕方ないな。『役割』を担っているというなら」
それだけ言うと、昨日も共にいた女天使に声をかけた。
「アリエル、行くぞ」
「はっ」
二人は連れだってそのまま飛んでいった。
「……あの、マティアスさん、大天使ガブリエル様とお知り合いなのですか……?」
アクラシエルが隣に回り込み、遠ざかる二人を見ながら俺に尋ねる。
「知り合い……というか、まあ、そう、だな」
「マティアスさん、あなたが騎士希望だとは知らなかった。勝手に『役割』を」
「違う!」
思わずアクラシエルの両肩を掴んでいた。
「確かに俺は昨日、ソフィアをおいて悪魔狩りに行った。でもそれは本意ではないんだ」
「そう、だったのですか……」
「……俺が悪魔狩りに行っていたこと、ソフィアから聞いていないか?」
「いえ、聞いていません。聞いていたら……あなたに『役割』を担わせませんよ。一度でも悪魔狩りに行ったことがあれば、それはもう騎士ですから。ただの天使に悪魔狩りなんてできません。屈強で強靭な肉体を持つ天使のみが担うことができるもの、それが騎士なんです。……そう、あなたのように」
アクラシエルが肩を掴む俺の腕を見て、そして自身の腕を見た。
男女の天使の違い、というのもあるが、アクラシエルの腕は細く、ちょっと力を入れて掴めば、すぐに折れてしまいそうだ。
なんとなくアクラシエルの肩から、手を離してしまった。
「でも今の言葉によると、あなたは騎士になることが本意ではないようですね」
「ああ、そうだ。俺は騎士になんかになりたくない」
「では私があなたに『役割』を与えたことは、間違いではなかったのですね」
アクラシエルが微笑む。
「その通りだ。『役割』を与えてもらっていたから、今日、悪魔狩りに行かずに済んだ」
「なるほど。あ、道草を食ってしまいました。行きましょう」
アクラシエルに促され、再び図書館に向け、移動を開始する。
するとアクラシエルは前方を向いたまま、俺に声をかける。
「ソフィアさんからはあなたのことをこう聞きました。もう一人、神殿で婚儀を挙げる予定の愛する人がいるので、彼と二人で住みたいのですが、問題ないですか、と」
……!
ソフィアがアクラシエルに俺のことを「愛する人」と紹介していた。
「神殿で婚儀を挙げる予定だ」と、ハッキリとアクラシエルに伝えていた。
この事実に俺の胸は熱くなる。
無性にソフィアに会いたくなっていた。
その華奢な体を抱き寄せ、そして……。
「着きましたよ、マティアスさん。これが図書館です」
ゆっくり降下したその先に、図書館の入口が見えた。
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次回更新タイトルは「自然と笑みがこぼれた」です。
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