さあ、楽しい狩りの時間だ
窓辺で洗濯物を干していると、玄関から声が聞こえた。
壁にかけられた時計を見ると、9時45分を指している。
アクラシエルが来たに違いなかった。
「はい」
玄関に向かって驚いた。
「……!」
ソフィアとの会話の中でアクラシエルは男の天使だと思っていた。
だが目の前にいるのは……。
腰まである長い髪は、綺麗なストロベリーブロンド、瞳の色は琥珀色で、ほんのりピンク色に染まった白い肌をしている。
「あなたがマティアスさんですね」
美しい薔薇の花のような笑顔だった。
「ああ、そうだ」
「私はアクラシエルと申します。昨日、ソフィアさんと知り合い、この家を紹介した者です」
アクラシエルが手を差し出す。
その手を握り、挨拶をした。
「その節は大変世話になった。ありがとう。部屋は快適でとても心地が良い。それに美味しいワインも。とても飲みやすかった。心遣いに感謝する」
「喜んでもらえて良かったです。『役割』の件はソフィアさんから聞いていますか?」
「ああ。図書館の係員」
「ええ、そうです。もし準備が良ければ、早速行きましょうか?」
「ああ、頼む」
「では行きましょう」
アクラシエルは美しい翼を広げ、空へ舞い上がる。
俺も翼を広げ、その後を追った。
上空から見ると、図書館は家から本当に目と鼻の先に感じた。
一本道の突き当りの三つの建物はハッキリ見えていたし、塔のように高いあの建物が図書館に違いないと思ったその時だった。
「マティアス」
美しい声が頭上から聞こえてくる。
この声は……声の方を見るまでもなく分かった。
ガブリエルだ。
前を飛んでいたアクラシエルが、驚いた顔で俺の後ろの上空を見ている。
「マティアス、呼んでいるのだ。聞こえないか?」
苦虫を嚙み潰したような顔で、ガブリエルの方を振り返ってやった。
するとガブリエルはあの優美な笑みを浮かべる。
自然と顔から力が抜け、それどころか微笑を浮かべそうになっていた。
「さあ、マティアス、楽しい狩りの時間だ」
そう来ると思っていた、ガブリエル。
「すまないな、ガブリエル。お前の嫌がらせに付き合ってやりたいのは山々なんだが……」
ガブリエルは澄ました顔で、こちらを見下ろしている。
「あいにく、俺も『役割』を担ってしまった。お前に付き合うことはできない」
エメラルドグリーン色の瞳が細められ、氷のような一瞥が、アクラシエルに向けられた。
「……君か、マティアスに『役割』を担わせたのは?」
俺は翼を羽ばたかせ、すぐ様アクラシエルの前に移動した。
作者のつぶやき:
楽しい狩りの時間……といえば、あの有名な●●ハンを思い浮かべつつ……。




