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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode2】天界大騒乱

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もはやそんな誓い、守れるはずがない

「マティアス様、時間になったらアクラシエルさんが迎えに来てくださるので、そうしましたら図書館に向かってくださいね。一応、帰り道で迷わないよう地図を用意しました」


朝食を終えると、ソフィアは俺の心配を始めていた。


「大丈夫だ。地図がなくともさすがにこれなら俺でも迷いようがない」


図書館は、家の前の一本道を真っ直ぐ進んだ突き当りにある、三つの建物の一つだった。


困った時に駆け込む役所『天界役場』、消防・警察・病院の機能を持つ『天界救急本部』、そして美術館・博物館・図書館の三つが一つになった『天界図書館』。


「そうですよね……。お昼は天界役場にある食堂で食べられるとアクラシエルさんが言っていました。あ、あとマティアス様、翼のケアをしてくれるお店もあるんですよ。美容院に併設されていて。もし『役割』を終えた後、翼が汚れていたら……」


「ソフィア」


「は、はい」


「翼のケアは今日必要ない。悪魔狩りに行くわけじゃないから。翼が汚れる心配はない」


「……そうですよね」


ソフィアが視線を落とす。


「落ち着くんだ。ソフィアらしくないぞ」


「……はい」


「まだ心配か? 俺がまた悪魔狩りに駆り出されるのではないかと。戻って来ないのではないかと」


ソフィアが潤んだ瞳で見上げる。


「大丈夫だよ、ソフィア。今日はアクラシエルと一緒に図書館に行って、『役割』を終えたら真っ直ぐここへ帰ってくるから」


「そうですよね。ちょっと深呼吸して落ち着きます」


「いや、深呼吸するならこの後だ」


ソフィアの顎を持ち上げ、パールピンク色の唇を塞ぐ。


もうすぐ7時になると分かっていた。

ソフィアがホワイト・ベーカリーに行く時間が迫っていると分かっていた。


だから軽くキスをして終えるつもりでいたのだが……。


止まらなかった。

もっと深くキスをしたい。

その一心で口づけを重ねていた。


「う、うん」


ソフィアが俺のキトンを強く掴み、胸の中から逃れようとしている。


時間を気にしているのだと分かった。

このまま強引に抱き寄せ、キスを続けることもできたが……。


腕の力を抜き、唇を離した。


ソフィアの瞳はとろんと潤み、頬は上気し、息も上がっている。


それでもなんとか理性を働かせたようだ。


「マ、マティアス様、私は時間なので……ホワイト・ベーカリーへ……行ってきます」


「……そうだな。玄関まで送っていこう」


俺の言葉に頷き、ソフィアは呼吸を整えながら歩き出した。


その後ろ姿を見ると、再び抱きしめたい衝動に駆られたが、それをぐっと抑え込んだ。


「ではマティアス様、いってきますね」


「ああ、気を付けて」


おでこのキスで我慢し、ソフィアを送り出すと、朝食の片づけを始める。


地上と違い、天界に来てから、ソフィアを求める気持ちに歯止めが効きにくくなっている。


その理由は……。

いくつか思い当たる。


まず、俺とソフィアは対等な立場になった。


これまでのソフィアと俺の関係は……、人間と魔王、天使と魔王、天使と人間だった。


有限と無限の命という関係だった時もあり、どうしても結ばれることがためらわれ、気持ちをセーブすることになった。


でも今は違う。


二人とも天使だ。永遠の命を手に入れたのだ。

住む世界だって同じだ。

だからもう結ばれていい。

そう、脳が理解してしまっている。


そして何よりも、昨日、俺とソフィアは結ばれる寸前まで行ったのだ。あの神殿で、俺とソフィアは婚儀を挙げ、婚姻関係を結ぶはずだった。


それを……ガブリエルに邪魔された。


輝くようなホワイトブロンド、エメラルドグリーンの瞳

雪のように透き通った素肌。


どんな悪人でも頬が緩む、優美な笑みを湛えたガブリエルの姿が頭に浮かぶ。


その姿は美しい大天使だが、心は残酷だ。

俺に悪魔を殺させた。何十体も。

魔王としての記憶が俺にあると知りながら。


握りしめた拳が震える。


深呼吸をして怒りを沈めた。


女天使の癒しの力で疲弊していた心は軽やかになっていたはずなのに。思い出すと怒りは再び湧いてくる。


大きく息をはき、すう。


そう、大丈夫。


ともかくあのガブリエルのせいで、俺とソフィアは結ばれることができなかった。


でもあの時あの瞬間、ソフィアと結ばれると実感した時に、俺の中の禁欲の誓いは破棄された。


もはやそんな誓い、守れるはずがない。


ソフィアを求める気持ちは日増しに強くなるように思えた。なぜならソフィアは物理的にすぐ手が届く場所にいるのだ。そしてキスをして、同じベッドで寝ている。


我慢の限界はすぐに来る……。


なんとしてもあの神殿で婚儀を挙げ、婚姻関係を結ぶ。


それしか解決方法はない。


それまでは……。


大きくため息をついた。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「さあ、楽しい狩りの時間だ」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼

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