そんな可愛い顔をするな
翌朝、窓にやってきた鳥の鳴き声で目覚めた。
カーテンは遮光性ではなかったので、部屋は結構明るくなっている。
どうやら窓は東向きのようだ。
俺は目覚めたが、ソフィアはまだ寝息を立てている。
そうだ、キトンは大丈夫か?
ソフィアの着衣を確認したが、留め具はちゃんととまっている。
腕枕をしていた腕をゆっくり抜くと、ベッドから起き上がった。
そしてそのままキッチンに行き、冷蔵庫の中を確認する。
ソフィアが言っていた通り、冷蔵庫の中にあるのは野菜と果物だった。
俺はサラダを用意し、ドレッシングを手作りし、フルーツの盛り合わせを作った。さらにパン・ド・カンパーニュを見つけたのでスライスし、焼くことにした。お湯が沸いたので紅茶を入れていると、ソフィアが起きてきた。
「マティアス様、おはようございます。すみません、マティアス様が起きていることに気が付かず寝続けてしまいました」
慌てるソフィアを抱き寄せ、おでこにキスをする。
「大丈夫だよ、ソフィア。もうすぐでパンも焼ける。顔を洗っておいで」
「……マティアス様」
「そんな可愛い顔をするな。それだと『役割』をサボらせることになってしまう」
ハッとしたソフィアは頬を染め「それは困ります」と呟きながら、バスルームへ向かう。
ソフィアを見送り、トレイにサラダやフルーツの盛り合わせをのせ、テーブルへ運んだ。
その足でカーテンを開ける。
太陽の光が飛び込んできた。
窓からは婚儀を挙げるはずだった神殿が見える。
その背後には標高の高そうな山が見えている。
カタンと音がして、パンが焼けたようだ。
キッチンへ戻り、朝食の準備を続けた。
作者のつぶやき:
ソフィアを起こさず朝食を用意するなんて……!
マティアス様は元魔王。でも料理も得意でまめでポイント高いと思いませんか?




