奪うようにキスをして……
奪うようにキスをして、その体を強く抱きしめた。
そのまま抱き上げ、ベッドに向かう。
戸惑いながらも俺のキスに応えているうちに、ソフィアから甘い吐息がもれた。
ソフィアが着ているキトンは、上半身は両肩の部分で留められているだけだ。
だからベッドで抱き合いキスをしているだけで、それは簡単に外れてしまい……。
「マ、マティアス様、待ってください」
慌てた様子でソフィアは、ただの一枚布になりかけているキトンで胸を隠す。
「そ、その、男女の天使による交わりは、神殿で婚儀を挙げないとダメなんです! 婚姻関係を持つ前は、認められていないのです!」
「なに……?」
天界ではそんな制約があるのか⁉
……いや、地上でも貴族や王族での結婚では、貞操が求められていた時代があった。何も天界だからというわけではないのだろう。
……しかし地上でのその話はいつの時代の話だ?
「……マティアス様、怒っています……?」
ソフィアが困り切った顔で俺を見ている。
「いや、怒っていないよ。そんな制約があったのかと、思いを巡らせていただけだ」
ベッドの上で転がっていた留め具を拾い、ソフィアにキトンを纏いなおすように言った。ソフィアはすぐにベッドから起き上がり、白い一枚布で自身の上半身を包む。俺は両肩の布を留め具でとめた。
「よし。これで大丈夫だ。しかし、寝る時にこれではいつ脱げるかと心配だな」
「……そうですね。イオニア式でしたらまだ脱げにくいかもしれません。私は明日、朝が早い分、終わる時間も早いので、洋服屋に行ってきます」
ソフィアが力強く宣言した。
「……天界ではキトン以外の服はないのか?」
「建物が密集するこの街の入口からこの部屋まで、一本道でつながっているんです。その道の両サイドにお店だったり住居だったりがあるのですが、私が確認した限り、洋服屋は一軒のみでした。そして見る限りキトンしかありませんでした……」
俺は思わず絶句する。
だがよくよく考えれば、天使軍が身に着けているものは一様に同じものばかりだった。悪魔はそれぞれの家紋や紋章をマントやサーコートに刺繍し、自由な服装で戦闘に赴いていた。
天使軍は統率をとるために全員同じ衣服に甲冑なのかと思ったが……。
そもそもキトンしかなかったのか……。
いや、今はそんなことはいい。
ソフィアは明日の朝が早いんだ。眠らないと。
「ソフィア、いつも通りで休もう。ソフィアは寝相がいいから脱げることはないだろう」
「……はい」
明かりを消すと、遠慮がちにソフィアが横になった。
俺はソフィアに腕枕をして、そのまま静かに抱き寄せる。
「おやすみ、ソフィア」
「おやすみなさい、マティアス様」
天界での初日が終わった。
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次回更新タイトルは「そんな可愛い顔をするな」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




