ワクワクしたのか……?
ソファに座り、ワインのボトルを持ち上げた。
ラベルには線画で描かれた葡萄のイラストと赤ワインの文字。
それ以外の情報はない。
天界で作られたものなのだろうか……?
とりあえず栓を開け、グラスに注いでみる。
香り、澱の具合、色。
俺の知っているワインそのものだった。
一口含み、口の中でじっくり味わう。
やや強めで舌触りが天鵞絨のようだ。
ふくよかで余韻はやや長めに残る。
これでほろ酔いにしかならないなんて……。
俺は立て続けに三口ほどワインを飲み、そこでようやく一息ついた。
このワインをソフィアはどうやって手に入れたのだろう?
そもそもこの部屋を貸してくれたという天使は誰なんだ?
そう言えばソフィアは「こちらの二階の部屋を『役割』と一緒に貸していただくことができました」と言っていた。「衣服は『役割』をこなすことで手に入れることが可能です」とも言っている。
『役割』……。
この『役割』というものを担っていれば、大天使から命令されることがない。そしてソフィアは『役割』もこの部屋と一緒に手に入れたと言っている。
一体どんな『役割』なのだろう? それは悪魔狩りより優先される『役割』なのだろうか?
しかし、悪魔狩りを天界はいつまで続けるつもりなんだ?
魔界に悪魔は……もういない。
残るは地上のみだ。
地上にいる悪魔の数は……正直把握できていない。
先代魔王はもちろん、歴代の魔王を含め、誰も統計をとっていないからだ。
どれだけの数の悪魔が地上にいるか分からないが、それを全て狩り終えるまで、天界は悪魔狩りを続けるつもりなのだろうか……?
不意に視界を遮られた。
顔に触れるその滑らかな手は……。
ソフィアだ。
細い手首をつかむと、唇を押し当てる。
「マティアス様、ワインはいかがでしたか?」
手を離すとソフィアは、対面の席に腰を下ろした。
「うん。美味しかった。これでほろ酔いで済むなら一本開けてしまいたいところだが……。天界に来て初日だからな。とりあえずこの一杯で十分だ」
空になったグラスを示す。
「そのワインは、この部屋を紹介してくださった方が入居祝いとしてくださったんですよ」
「そう、ソフィア、この部屋を紹介してくれた天使って何者なんだ?」
「はい。アクラシエルさんという方で、私がイチイの巨木でマティアス様を待っている時に声をかけてくださったんです。『あなたは見かけない顔ですね。天界に来たばかりですか?』って。私が頷くと『では住処が必要でしょう。部屋へ案内しますよ』と仰ってくださったんです。でも私、無一文でしたから『ご提案、ありがとうございます。でもあいにく持ち合わせがないんです』と答えたら笑われてしまって……」
ソフィアが頬をバラ色に染めた。
お金の心配をソフィアがするようになったのは……魔界から地上へ落とされたせいだ。
地上へ落とされた直後は、天界に来た時と同様、まさに身一つで無一文だった。
お金で苦労した記憶がソフィアに残っていることを申し訳なく感じた。
「あ、マティアス様、もしかしてお金に苦労していた時のこと思い出しています? 私も思い出しました。それで実は……ワクワクしていました」
「ワクワクしたのか……?」
驚いてソフィアを見た。
本日更新はここまでとなります。
次回更新タイトルは「初めて知ることばかり」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
【新連載スタート】毎朝7時更新
『異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~』
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クラスのアイドルの女子が
男子二人組に襲われそうになっているところを
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