いくら飲んでもほろ酔い
「マティアス様、こんな時間ですが、お腹空いていますか?」
ソフィアが探るような目で俺を見る。
「お腹は……そういえばここに来てから何も食べていないが……。なぜだろう。空腹感はない」
やはり、という顔でソフィアは頷いた。
「食事の習慣はあるようなのですが、どうも食欲はないみたいなんです、天使は。ですから空腹感を覚えることもない……。それでも人間の頃の習慣を真似しているのか、会話を楽しむためなのか、食事は一応皆さんしているようで。
ただ、食べるのは野菜や果物で、肉や魚を食べることはないようですよ。食事で栄養補給をしているわけではないので、野菜や果物だけを食べていても問題ないようです。
あ、でもパンやケーキはあるんですよ。ここの隣の一階がパンとケーキのお店なんです。卵は使わずに作られていると聞きました」
「なるほど。あらゆる肉体の欲求から解放されているんだな」
「はい。……食事はいい、となると、シャワーを浴びますか、マティアス様」
「そうだな」
「では着替えをお持ちしますね」
ソフィアから着替えを受け取り、俺はシャワーを浴びることにする。
シャワーは地上のそれと変わらず、ガラス瓶に入ったシャンプーやコンディショナー、ボディソープも、泡立ちや香りなどこれまで使っていたものと変わらない。
ただ用意されていた衣服は、さっきまで着ていたのと同じ白いキトンで、それを纏うことでここが天界なのだと実感する。
バスルームから出ると、ソフィアが俺に声をかけた。
「マティアス様、ワインを用意しておきました」
「……酒があるのか?」
「はい。でもいくら飲んでも、ほろ酔いぐらいにしか酔わないそうですよ」
ソフィアの視線の先、ソファの前のテーブルには、ボトルのワインとグラスが置かれている。
「ではマティアス様がお酒を楽しんでいる間に、私はシャワーを浴びさせていただきますね」
「……ソフィア、まだシャワーを浴びていなかったのか?」
「はい。外出してましたし、どのみち眠る前に浴びようかと思っていたので」
「そうか。ゆっくり汗を流すといい」
ソフィアは笑顔で応え、バスルームへ向かった。
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