何も感じない
「ソフィア、俺の察しが悪くて申し訳なかった」
「い、いえ。私もいい大人なのですから、それぐらいハッキリ言えないとですよね」
「いや、そんなこと堂々と口にするソフィアを見たくない」
「えっ……」
「でも今は言ってもらえてよかった。言ってもらえなければ、今も同じことを尋ね続けたと思う」
「……」
「ともかくソフィアが言いたいことは分かった。天界の天使は地上の記憶を持たないから、男女が存在しているものの、恋愛感情や肉欲とは無縁に近い状態なんだな。天使は命を落としても、魂が再び主の元に戻り、然るべき時に復活する。だから天使は、人間や悪魔のように繁殖の必要がない。ゆえに対悪魔への行動と比較した時、婚姻よりも悪魔狩りが優先される。そして婚姻関係を結ぶ天使は珍しいし、婚姻自体が嗜好品のように見られているということだな」
そこで俺は腑に落ちたことがあった。
地上から天界に戻った時、俺の服を平然と脱がせていた女天使。
膝をついた俺を抱きしめた時、その胸は俺の頭に思いっきり触れていた。それに俺の顔は女天使の下腹部に押し当てられていたが、まったく気にしていなかった。
恋愛感情や肉欲を持たないから、異性の体を見ても、触れても、基本的に何も感じないんだ。
「マティアス様の仰る通りです。ですからあの神殿は、常に閑古鳥が鳴いている状態。ただ、天使も人間や悪魔と接触を持ち、恋愛感情や肉欲を学んでしまうこともあるようで……。つまり天界にいる天使は、何も知らない赤ん坊のような状態。天界を離れ、学習してしまえばその限りではない、ということですね。大天使については、そもそも天使とは全く別次元の存在。ですから天使と同じ尺度で考えない方がいいのでしょうね」
「それはそうだろうな。そうしないとウリエル……エウリールなんて説明のつけようがない」
ソフィアが吹き出して笑う。
「あ、マティアス様、着きました。ここですよ」
ソフィアが立ち止まったのは、洋風の造りの一軒家の前だった。
「地上で言うと、アメリカのアパートメントに近いですかね。見た目は一軒家ですが、一階と二階は、別々の住人が住んでいるという感じです。こちらの二階の部屋を『役割』と一緒に貸していただくことができました」
二階に続く階段を登りながら、ソフィアは説明を続ける。
「天界に来るのは人間の魂ですよね。だからなのか、地上と同じ家電製品が普通にあるんですよ。魔界では電気が通っていませんでしたが、天界には電気のようなものが通っているようで、冷蔵庫、洗濯機、食洗器、乾燥機などが揃っています。しかも備え付けで」
階段をのぼりきり、ドアの前についた。
ソフィアはドアノブをつかみ、そのままドアを開ける。
「鍵もないのか?」
「はい。天使に悪者はいない、という前提で天界は成立しているようです」
「なるほど」
ソフィアが壁のスイッチを押すと、室内に明かりが灯る。
「本当だ。電気のようなものが通っているんだな」
「はい。それと日本で靴を脱ぐ文化に慣れましたが、天界では靴というか、サンダルですかね。こちらを履いたままで室内にはいるようです」
ソフィアそう言うと部屋の奥に進んだ。
ソフィアの言う通り、キッチンはIHだし、オーブンや食洗器もついている。
電子レンジもあったし、電気ポットもあった。
「ベッドも家具も備え付けだったので、身一つで新生活を始められる感じです。衣服は『役割』をこなすことで、手に入れることが可能です」
部屋は狭すぎず、広すぎずで、二人で住むには十分な間取りだった。
ソファセット、ダイニングセット、ダブルサイズのベッドも置かれており、窓にはカーテンもひかれている。
「お風呂もトイレも、ユニットバスですが、ちゃんとついています」
ソフィアに言われ、キッチンの対面にあるドアを開けると、そこにバスルームがあった。
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次回更新タイトルは「いくら飲んでもほろ酔い」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
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