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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode2】天界大騒乱

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愛おしいという気持ち

もうあのイチイの巨木に、ソフィアはいないと分かっていた。

だが、今の俺に他に行く当てはない。


幸い天界は寒くもなければ暑くもなく、快適な気温が保たれている。

あの巨木の下で眠ったとしても、問題はないだろう。


癒しの力で軽くなった足のおかげで、坂道をすいすい進むことができた。


「……!」


イチイの巨木の下に、フード付きのマントを被り、手にランタンを持った天使がいる。


顔は見えないが、こんな時間にここにいる天使なんて、ソフィア以外は考えられない。


「ソフィア!」


「マティアス様!」


ソフィアに駆け寄り、その体を抱きしめた。


「お帰りなさいませ、マティアス様。お怪我はありませんか?」


ソフィアはすぐに俺から体を離すと、心配そうに視線を体に走らせる。


「大丈夫だよ。ソフィア。心配をかけてすまなかった」


「いえ、私は慣れっ子です。マティアス様を戦場に送り出すのは、これが初めてというわけではないのですから」


ソフィアは優しく微笑んだ。


「ソフィア……」


愛おしいという気持ちがこみ上げる。


「ただ、今回向かったのは、いつもの戦場とは違います。敵は天使ではなく、悪魔……。マティアス様はお強いので、体の怪我は心配していませんでした。むしろマティアス様の心がお疲れでないか、それだけが心配でした……」


ソフィアは俺の心音を確かめるように、左胸に右手を置いた。


「……今日、俺は沢山の悪魔を手にかけた」


ソフィアが苦しそうな顔で、俺を見上げた。


「俺の容姿は変わってしまった。誰も俺が魔王だとは気づかなかった。だから悪魔は容赦なく俺を攻撃してきた。やらなければやられる。そんな状況だった。もう躊躇している場合ではなかった」


ソフィアはその状況を想像したのだろう。辛そうに顔を歪める。


「不思議だったよ、ソフィア。悪魔を敵と俺の脳が認識するようになった。そして悪魔の気配を感じると鳥肌が立った。それにしゅに祈りを捧げることで与えられる天使の光。これを使うことができるようになっていた。俺には魔王としての記憶があるのに、体と脳の理解は天使になりつつある」


「マティアス様」


凛とした声でソフィアが口を開く。


「マティアス様が悪魔狩りに向かった後、いろいろ動き回ってみました。そして家を手に入れ、食料など必要なものも得ることができました。フカフカのベッドが待っています。家に帰りましょう。マティアス様と私の家に」


「ソフィア……」


俺と手をつなぐと、ソフィアは強い意志を感じさせる足取りで歩き始めた。


「天界でのルールについても、教えてもらいました。天界では役割を持っていれば、大天使から命令されることがないそうです」


「そうなのか⁉」


「はい。もちろん例外はあるようですが」


「でもガブリエルは、対悪魔への行動は何事よりも優先される、と言っていたが……」


「それは……対悪魔への行動と天秤にかけた時、婚儀は『今じゃなくてもいい』ということだったのだと思います。どうも天界では婚姻が、嗜好品のような扱いなんです」


「嗜好品……?」


「……はい。その、天界にいらっしゃる皆さんは地上での記憶がありません。ですから恋愛感情とか、その、その  とかをあまりお持ちではないようなのです」


「え、何? 恋愛感情と?」


「ですから、その、  です」


「すまないソフィア。全然聞こえないのだが」


ソフィアはしばし沈黙した後。


「男女の交わりへの欲求です!」


「……!」


三日月と蛍のような光、そして手元のランタン以外の明かりはないが、もし今が昼間なら……。


雪のようなソフィアの白い肌は、バラ色に染まっているはずだ。


昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「何も感じない」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼

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