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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode2】天界大騒乱

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魔王の面影

ガブリエルが降り立った場所は、ヨーロッパの森の中だった。


まだ昼を過ぎたぐらいの時間なのにとても薄暗い。

この暗さは悪魔が好むものだ。ここに悪魔が潜んでいる可能性は高いだろう。


ガブリエルは女天使を連れ、道なき森の中を静かに進んだ。

俺は五メートルぐらいの距離をとり、二人の後に続いた。


密集して生える木々。巨木が多い。葉の色は黒を思わせる緑色。

これはトウヒの木だ。となるとここはドイツの黒い森(シュヴァルツヴァルト)か。


……!


気配を感じる。


懐かしい魔力の気配のはずなのに、鳥肌が立っていた。

天使になった俺は、脳の理解と体の反応がちぐはぐになっている。


不意に女天使が振り返った。


無言で弓矢を渡される。俺がそれを受け取ると、さらに剣も渡された。


俺が着ている純白のキトンには金糸の腰ひもが巻かれている。

剣はその腰ひもに留め、矢筒を背負い、弓を手に持った。


その時だった。


矢が風を切る音が聞こえる。


寸でのところで放たれた矢を避けた。


矢羽の色は黒い。

悪魔が放った矢だった。

俺が悪魔に狙われた……?


悪魔同士の殺し合いがないわけではなかった。


だが、俺の治世においては天界との戦いが激化していたから、悪魔同士での殺し合いは激減していた。魔王という立場であれば暗殺を経験することは当たり前だったが、俺にその経験はない。だから正直、悪魔の武器で攻撃されたことにショックを受けていた。


……!


次々と矢が放たれた。


気づけばガブリエルと女天使は木々に身を隠しながら、遥か上空にいる。


「マティアス、君はここで犬死にするつもりか? ボクはそれでも構わない。君が死んだら喜んでその魂を天界へ届けよう。すべての記憶を失った君の魂が天界に戻ったら、あの女性の天使はどう思うかな?」


ガブリエルは残酷な言葉を吐いているのに、顔にはあの優美な笑顔を浮かべている。


俺はそれにつられ、頬が緩みそうになっていた。


そうしている間にも矢が次々と飛んでくる。

完全に狙い撃ちされていた。


翼を広げれば、いい的になってしまう。


仕方なく手近な巨木の影に隠れ、矢が飛んでくる方角と敵の人数を確認した。


敵……悪魔が敵?


そう認識するつもりはないのだが、天使となった俺の脳は、遂に悪魔を敵として認識しようとしていた。


ビュンという音がして、俺が身を隠す巨木に矢が命中した。


くそっ。俺が魔王だと分からないのか?

いや、はぐれ悪魔か? 俺が魔王だと知らない?

でも俺の姿は先代魔王と瓜二つ……。


そこで自分の手を見て、容姿の変化を思い出す。


俺は今、ガブリエルと同じ、雪のように透き通った肌をしている。そしてウリエル……エウリールは俺の姿を見て「しかしお前が金髪碧眼になるとは。違和感満点だな」そう言っていた。


そうだ。

今の俺に魔王の面影は……ない。


……!


矢がすぐ横を通り過ぎていった。


俺がいる巨木を中心に囲まれつつあった。

敵の数は五体。

完全に囲まれる前に倒すしかない。


かつて戦った天使のことを思い出す。

天使の武器は弓と剣が基本。

だが、天使ならではの武器があった。

しゅに祈りを捧げることで与えられる天使の光。

悪魔はその光を目に受けると、一時いっときの間、盲目も同然となる。


俺は戦場で起きたことを思い出す。


天使の光によって、多くの悪魔が視界を失い、その間に全身に矢を受け、首を斬り落とされた。


しかし……。


しゅへの祈りなんて知るわけがなかった。

だが藁にもすがる想いで祈れば、しゅは助けてくれるのだろう?


ただ心を無にして祈ってみた。


まだ死ぬわけにいかない。天界では俺の帰りを待つ人がいる。

どうか俺を導き、守ってくれ。


すると。


全身から溢れんばかりの光が放たれた。

俺の背の方角から悪魔の呻き声が聞こえる。

光が収まると、弓に矢をつがえた。


すまない、同胞よ。


俺は矢を悪魔目掛けて放った。


【お詫び】

予約投稿で間違って21時に設定していました。

11時を過ぎてからの公開となり、大変申し訳ございませんでした。


昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「心の傷」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼

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