プロローグ
ソフィアは俺のことを「たった一人の愛する人」と言ってくれた。
そして永遠の愛を俺と誓うと、笑顔を見せてくれた。
千年。
それはあまりにも長い片想いの期間だった。
でも、今、その想いは成就する。
喜びで胸が震えた。
つないだ手にも力がこもる。
この階段をのぼりきり、神殿の扉を開いて……。
そう思い最後の一段をのぼり切ったまさにその時だった。
神殿の扉の前の床に、一本の矢が刺さった。
よく磨き上げられた大理石の床に矢が刺さる……?
これはただの天使が放った矢ではない。
ソフィアを背に庇いながら、矢が放たれた方角に目をやる。
神殿の屋根に佇んでいたのは……。
大天使だった。
輝くようなシルバーブロンド、エメラルドグリーンの瞳。
雪のように透き通った素肌。
見た目は優美な美青年だ。
だがその背に広がるのは純白の翼。
「……ガブリエル」
天界との戦の最中。
天使が仕掛けた罠と気づかず、部下であるロルフとベラが死地に足を踏み入れたことがあった。猛攻を続ける天使軍を巻いて、ロルフとベラを連れ、自分達の陣地に戻ろうとしたその時、俺は大天使が放つ矢を翼に受け、地上へ落ちた。
一撃必殺の矢を放った大天使、それは――。
ガブリエルだ。
「あの時、確かにボクの放った矢はマティアス、君の醜い黒い羽を射抜いたはずだ。なぜ生き延びた? 一撃必殺の矢を受けたのに」
美しい声だった。
こんな場面でなければ、うっとりと聞き惚れていたことだろう。
でも、今はそんな場合ではない。
「生憎だったな、ガブリエル。魔王の血筋をなめないでもらいたい。それに俺は悪運が強いからな」
俺は天界にいて、天使の姿をしているが、すべての記憶を取り戻していた。だから口調が天使とは思えないものになっている。それはガブリエルを逆なでするに十分なものだったようだ。
エメラルドグリーンの瞳には冴え冴えとした冷たさが宿る。
「そうか。君は、図々しくも天界についてすぐ、婚儀を挙げようとしている。君のせいで、今、天界は混乱しているというのに。四人いるはずの大天使がボクとミカエルだけになってしまった。
ウリエルは君とそこの女に禁忌となっている力を使い、主の怒りを買った。その結果、ラファエル同様、修行が必要と人間として地上へ堕とされてしまった。
だがマティアス、君はどうだ? 主は寛大な御心で君が天界でやることに目つぶっていらっしゃる。記憶を取り戻したことも、その女性の天使と婚儀を挙げようとすることも。
主がそうされるのだ。ボクも従おうと思ったよ。だが、横やりの一つぐらい入れたくなる。それに対して、君の態度は……。魔王の血筋、だと? 悪運、だと?」
ガブリエルはそこまで言うと、大天使らしい優美な笑みを浮かべる。
見ている俺の頬も思わず緩むような美しい笑みだった。
「ボクは主に命じられ、悪魔狩りに向かうところだった。大天使には天使に命令をする権限がある。そしてここ天界において、対悪魔への行動は何事よりも優先される」
ガブリエルはそう言うと氷のような微笑を浮かべて俺に告げた。
「大天使ガブリエルが天使であるマティアスに命じる。これより地上へ降り、悪魔狩りの役割に就け」
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第一部から継続してお読みいただいている読者の方、お待たせいたしました!
いよいよ第二部スタートです。第三部も執筆済みですので
引き続き甘々、溺愛、イケメン
そして第二部からゆるくR15要素はいりましたが
お楽しみいただけると幸いです。
更新は毎日お昼の11時に公開していきます。
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『伊織くんは愛されたい!~問題児と才女の初心な恋~』
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全67話で完結しています。
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