神の家
「おい、マティアス、起きろ」
俺を呼ぶ声が遠くで聞こえる。
「マティアス、しっかりしろ、起きるんだ!」
今度は体を大きく揺さぶられ、強制的に目覚めさせられた。
頭が重く、何も考えられない。
「仕方ないな。悪く思うなよ」
頭を持ち上げられた。
……ウリエル?
そう思った瞬間、全身に電流が通ったような衝撃で俺は完全に覚醒した。
「ようやく目覚めたな」
「ウリエル、何が起きた⁉」
「何が起きたか……。とんでもないことが起きている最中だ」
「えっ……」
「マティアス、今、自分がどこにいるか分かるか?」
「……俺は……」
記憶を探り
「俺はphantomの別宅に招かれて、アフタヌーンティーに参加し、部屋に戻ってきて……」
そこでハッとしてウリエルの顔を見た。
「ソフィアは? 確かドレスの試着に向かったはずだが」
「良し。記憶の混濁はないようだな。では簡潔に説明しよう。マティアス、お前は今、地上に設けられた『神の家』にいる」
「神の家……?」
「地上に設けられた天界の拠点だ。各国に一つずつ設置されている」
「なぜ、神の家に……? いつの間に移動したんだ?」
「マティアス、よく周囲を見てみろ」
ウリエルの言葉に辺りを見渡す。
天蓋付きのベッド、シャンデリア、重厚なカーテン、調度品、暖炉……。
ローチェストに置かれたカバンは俺とソフィアのものだ。
まさか……。
「移動したわけじゃない。最初からソフィアとお前は神の家にいたんだ」
衝撃的な情報に言葉が出なかった。
「まったく、魔力を失うとこうも鈍感になっちまうのかね。そこら中に神の力が満ちているというのに、まったく気が付かなかったか?」
ウリエルの言葉に頷くしかなかった。
「まあ、ただの人間だ。仕方ない。ソフィアとお前は誘い出されてしまったんだ。ソフィアは天使の力が封印されている、それがバレてしまったんだよ」
「え……」
「ゲオルクとヘルマンの一件、あの時、上空に現れた天使軍の中に、もう一人、大天使がいた」
「……!」
「極東の辺鄙な地に悪魔が集結していた。通常なら考えられない事態にその真偽をしかと確かめるために遣わされた大天使、それはラファエルだ。おれは大天使に復権したが、まだ信頼されていなかった。だから日本という天界からしたらほとんど意識を向けていなかったこの辺境の地に、二人の大天使が降臨する事態が起きた」
戦場においても大天使が二人も揃うことなんてあり得ないことだった。
「ラファエルはあの時、すぐにソフィアに気づいたわけではなかった。ソフィアの天使の力はマティアス、ロルフ、ベラの三人で封印したもの。それは強固なものだ。だからラファエルが気付いたのは、ロルフとベラの魔力の方だった。そしてその魔力を追わせた。そしてお前たちのことを調べた」
ロルフとベラに残された魔力なんて、あの場にいた悪魔たちに比べたらほんのわずかなのに……。
それに気づくなんて……。でもそれが大天使だ。
「お前たちの身元はすぐにバレた。なにせお前さんは現存する最後の元魔王だからな。でもこの時点でもまだソフィアの天使の力のことには気づいていなかった。しかしお前たちはラファエルの観察下におかれることになった」
「そんなことになっていたなんて、知らなかった……」
「観察下に置かれたが、元は魔王でも今はただの人間。魔力が残るロルフとベラを連れているものの、目立つ悪行をするわけではなく、ただ人間として生きているだけだ。そんな奴らに天使はなんの裁きを下すこともできない」
「……」
「次第にラファエルの関心はお前たち、つまり、マティアス、ロルフ、ベラから離れた。そしてお前のそばにいる美しい女性、そう、ソフィアに向けられた。天使は美しい者に興味と感心を抱く。その美しさとは外見的な美しさだけじゃない。心の美しさだ。しかもソフィアは魔王のそばにいながら、純潔を保っていた。一体何者なのか?となった。そしてラファエルは自らお前たちに会いに行った」
「まさか……」
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次回更新タイトルは「phantom」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』
https://ncode.syosetu.com/n7794hr/
バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり
恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。
仲間との友情も描かれています。
全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉
ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。




