アフタヌーンティー
十四時五十分になると、扉がノックされた。
開けるとそこにはスタッフがいて、俺たちをアフタヌーンティーの会場に案内してくれるという。
ソフィアと俺は部屋を出た。
踏み心地の良い赤い絨毯を歩いていると、本当に、城に戻ってきたようだった。
案内されたのは、陽の光がふんだんに降り注ぐサンルームだった。
調度品もすべて白で統一され、窓から見える庭のグリーンとのコントラストが目にも鮮やかだった。
「ソフィアちゃん、マティアス、こちらの席へ」
phantomが俺たちを席へ案内した。
既に何組かが着席していたが、皆、知らない人ばかりだった。
着席するとソフィアが俺に小声で尋ねた。
「アフタヌーンティー、ドレスコードがあったのでしょうか?」
「特に何も言われていないよな?」
「でも皆さん、白かベージュ、卵色の服ですよね」
そう言われて見てみると、男性も女性も、そんな色合いの服装だった。
「お飲み物をご用意しますが、紅茶、コーヒー、シャンパン、白ワイン、赤ワイン、どれになさいますか?」
気づくとスタッフがそばに立っていた。
「ソフィアは何にする?」
「紅茶にします」
「では紅茶を二つで頼む」
「かしこまりました。レモンやミルク、お砂糖は?」
「私はレモンをお願いします」
「俺はストレートでいい」
「承りました。すぐにご用意します」
スタッフが去ると、ピアノの音が聞こえてきた。
phantomがリストの「雪あらし」を奏で始めた。
「どうぞ、アフタヌーンティーをお楽しみください」
ケーキスタンドがテーブルに置かれた。
サンドイッチ、スコーン、ケーキ。
紅茶も到着し、優雅な時間が流れた。
◇
「美味しいを超えた美味しさでした……」
アフタヌーンティーを終え、部屋に戻るソフィアはため息をついた。
確かにphantomが用意してくれた食べ物、飲み物、どれも初めて食べるような美味しさだった。
奇をてらった味付けなどなく、王道のものばかりだった。
だが、素材の味が見事に調和し、完璧な一品となり、口の中で踊っているように感じた。
部屋に戻ると、ソフィアはチェスをやっていたテーブルの椅子に腰を下ろした。
心なしかソフィアの頬がほんのりバラ色になっているように思えた。
「ソフィア、なんだか顔が少し赤いような……」
「え」と言い、ソフィアは両手で自分の頬に触れた。
「そう言われますと、なんだか頬が少し火照っているような……」
「ワインを飲んだわけでもないのに、あの場の雰囲気に酔ったのか?」
「……そうかもしれません」
ソフィアが微笑んだ。
その時、俺はくらっとめまいがして、ソフィアの向かいの椅子に座り込んだ。
「……マティアス様も、ちょっと赤くなっていますよ」
「え……」
まさか俺もあの雰囲気に酔った……?
扉がノックされた。
立ち上がろうとしたが、力が入らなかった。
ソフィアが立ち上がり、扉の方へ向かった。
「ソフィアちゃん、今晩のパーティーのドレス、持ってきているかい?」
phantomだった。
「はい。……私としては気に入っているドレスですが、もしかするともう少し格調のあるドレスにした方が良かったかもしれません……」
「ソフィアちゃんが選んだドレスだ。きっと素敵なものだろう。……でも、どうだろう。わたしの所にいくつかドレスがある。まだパーティーまで時間があるし、試しに着てみないかい? もし気に入れば、そのままそのドレスでパーティーに出席してもらって構わない」
「本当ですか?」
ソフィアはそう言ってから俺を見た。
声を出そうとしたが、声が出ない……というか体が動かない……。
それに俺の瞼はもう閉じてしまいそうだった。
「しっ。ソフィアちゃん、マティアスはお昼寝のようだ。静かに休ませてあげよう」
「……そうですね」
「ではおいで」
ソフィアが部屋を出ていった。
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次回更新タイトルは「神の家」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』
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バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり
恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。
仲間との友情も描かれています。
全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉
ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。




