お尻のガン見、禁止
翌日。
招待されたphantomの別宅は、城に住んでいた俺でもすごいと思える豪邸だった。
日本は島国なので土地が少なく、都心では土地の価格も高く、何もかもが狭いのが当たり前だった。
だがこの邸宅は、敷地の入口からエントランスまでのアプローチが海外並みに広く、エントランスホールもホテルのような広さだった。
「二人とも、よく来てくれたね」
俺たちを迎えに出てきたphantomは、ウオッシュ加工された白シャツに体にピタッとフィットした黒い革のズボンをはいていた。
あの太ももと脚の細さ、どう見ても女性だった。
「ソフィアちゃん、会いたかったよ」
phantomはそう言うと、ソフィアの手をとり、前回のように甲にキスをした。
まるでプリンスがプリンセスに挨拶をするように。
ソフィアはやはり頬を上気させ、俺がそれを見逃さなかった次の瞬間
「マティアス、君のことも待っていたよ」
phantomはそう言うと俺の肩に手を置き、右の頬、左の頬とチークキスを自然にした。
一瞬触れたphantomの頬は滑らかでヒゲの気配は皆無だった。
それに女性がつけるような甘い香水の香りがした。
俺の肩に置かれた手も相変わらず美しく、爪は綺麗に磨かれていた。
ソフィアと接する時は男性に見える。
でも俺と接する時のphantomは女性としか思えなかった。
「さあ、部屋へ案内しよう」
phantomが歩き出した。
黒い革のズボンに包まれたヒップはキュっと引き締まり、とても綺麗なシルエットを描いていた。
これは絶対に女性だろう。
「マティアス様!」
ソフィアが俺の腕をつねった。
「⁉ どうした、ソフィア」
ソフィアは頬を膨らませて、俺を上目遣いで見た。
「phantomのお尻、ガン見するの禁止です」
「……!」
俺は慌ててphantomから視線を逸らした。
◇
phantomに案内された部屋に入ると、城に戻ってきたかと錯覚しそうだった。
天蓋付きのベッド、シャンデリア、重厚なカーテン、調度品、暖炉……どれも日本の邸宅で見かけることがないようなものばかりだ。
ソフィアも驚いた様子だった。
「十五時になったらアフタヌーンティーに招待するから、それまで寛いでいてくれ。何か必要なものがあれば、そこのインターフォンがスタッフにつながるから、遠慮なく欲しいものを伝えてほしい。あとは……鍵はここに置いておく。オートロックだから、外に出る時は鍵を忘れないように」
phantomはそう言うと部屋を出ていった。
「……マティアス様、驚きました。まるでお城に戻ったような気分です」
「ああ。本当に。phantomは……日本人じゃないのかな?」
「どうなのでしょう……。髪の色はプラチナブロンドですが、染めている可能性もありますし……。瞳は濃い茶色で日本人らしい色ですよね。でもこれもカラーコンタクトかもしれないですし。肌は……白いですが、日本では東北に白い肌の方が多いと聞きます……」
「性別だけでなく、国籍も不明か。本当にミステリアスな人だな」
「そうですね」
ソフィアはそう言いながら、部屋の中をゆっくり歩き、壁にかけられた絵画を眺めた。
「……打ち上げのドレスコードが、男性はタキシードかスーツ、女性はドレスかそれに準ずるもの、という指定も納得ですね」
「そうだな。タキシード、ちゃんと新調しておいて良かった」
俺はそう言ってから、壁に掛けられた大きなアンティーク時計を見た。
「十五時まであと一時間ぐらいか。ソフィアは着替えたりするか?」
「いえ、アフタヌーンティーでしたら、この服装で大丈夫かと。マティアス様もそのままで大丈夫そうですよね。今やっておきたいことは……ドレスをクローゼットにしまうぐらいでしょうか」
「そうだな。まずはそれをやって、それが終わったら……、そこのテーブルにチェスがある。久しぶりにチェスをやろう、ソフィア」
「……! マティアス様とチェス。お城でよく遊びましたね。ぜひやりましょう」
ソフィアと俺は簡単に荷ほどきをして、久々にチェスに興じた。
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次回更新タイトルは「アフタヌーンティー」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』
https://ncode.syosetu.com/n7794hr/
バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり
恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。
仲間との友情も描かれています。
全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉
ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。




