モコモコの誘惑
MVを撮り終えた翌日、田中さんから連絡があり、phantomはソフィアと俺を気に入り、他のアーテイストにも俺たちのことを紹介してくれた。その結果、MVの仕事が一気に三件も決まった。
ドラマの主題歌、CMソング、映画の主題歌と、さすが第一線で活躍するphantomが紹介してくれたアーテイストだけあり、皆、勢いのある人ばかりだった。
離島でのロケもあり、ソフィアと俺は初めて飛行機に乗った。
「ソフィア~、マティアス、お帰りー。離島はどうだった⁉ 水着でイチャイチャできたか⁉」
離島でのロケを終えてマンションに戻ると、ロルフとベラが嬉しそうに俺たちを迎えた。
「流石に離島でも今の季節は寒いので、海で泳いでいる人はほとんどいませんでしたよ、ロルフ。でもホテルにプールがあったので、そこで少し遊べました」
ソフィアはそこでニッコリ笑い、俺を見た。
……。
プール……。
魔界では泳ぐ、という習慣がなかった。
そう。俺は泳げなかった……。
ソフィアもプールは初めてのはずなのに、ちょっと習ったらすぐ泳げるようになっていた。
俺はそんなソフィアを眺めているだけだった……。
いや、その分、ソフィアの水着姿を楽しめたからいいのだが……。
「お土産も沢山買ってきましたよ」
「イエーイ!」「わーい」
ロルフとベラは嬉しそうに尻尾を振った。
◇
「やっぱり自宅のベッドが一番落ち着くな」
俺は久々の我が家のベッドに横になり、思いっきり伸びをした。
離島ではコンドミニアムでの滞在だった。
今回撮影したMVは映画の主題歌で、担当するのは男性五人組のグループ「自然の樹海」だった。
MVに出演するのもソフィアや俺以外に、舞台を中心に活躍する2.5次元俳優が何人かいた。ただ、女性はソフィアしかいなかったので、コンドミニアムは自然の樹海で一棟、俺を含めた俳優陣で一棟、男性スタッフ陣で一棟、ソフィアと女性スタッフで一棟という割り振りだった。
つまり、離島滞在中、ソフィアと俺は部屋が別々だったのだ。
だから、こうやって家に戻り、ソフィアと一緒に休むことができるのは久々だった。
「ソフィア、まだ寝ないのか?」
「まだ、マニュキュアが乾いていなくて……」
「そうなのか」
「明日からまた外泊になるじゃないですか。ネイルサロンに行く時間がないので、部分的に自分で塗りなおしたのですが、あと十分ぐらいは乾燥させないと」
明日、ソフィアと俺はオフであり、オフでなかった。
というのも明日から一泊二日で、ソフィアと俺はスタジオや映写室を併設したphantomの別宅に招待されていたのだ。
MVの試写はphantomの別宅で明後日行われることになっており、そこにソフィアと俺も出席することになっていた。でも明日、MVの出演者やスタッフとその別宅で打ち上げを行うことになっており、打ち上げに参加し、そのまま泊っていくことをphantomに勧められたのだ。
別宅はかなりの豪邸のようで、ベッドルームが十個以上あるらしい。
俺に背中を向け、ベッドに座るソフィアを見た。
ソフィアは最近、触り心地のいいモコモコした服で寝るようになっていた。
俺は腕を伸ばし、ソフィアの腰辺りを後ろから抱きしめた。
「……マティアス様⁉」
「ソフィアのパジャマ、触り心地がいいんだ」
お腹のあたりの生地を撫でた。
ベラの毛を撫でているみたいで気持ち良かった。
「なんだか、私、猫にでもなった気分です」
ソフィアが苦笑した。
猫みたい、という言葉に俺のいたずら心に火がついた。
俺は軽く、右手でソフィアの胸に触れるつもりだった。
だが、実際に触れたら、ソフィアは予想以上に驚き、それに驚いた俺は……。
ソフィアの胸を思いっきり掴んでしまった。
パジャマの触り心地の良さとソフィアの胸の柔らかさもあいまり、俺は本能的に手が胸から離せなくなり、そのままソフィアをベッドに押し倒してしまった。
「マ、マティアス様、な、何をなさるんですか⁉」
ソフィアは手を使えないので無防備な状態のまま、顔を真っ赤に抗議した。
「ちょっといたずら心で……」
「……」
「ごめん、ごめん」
俺はソフィアのおでこにキスをした。
ソフィアは未だ、両腕を上げ、無防備な姿だった。
モコモコのパジャマは緩やかに胸の曲線を描いていた。
……とても気持ちのいい触り心地と柔らかさだった。
もう一度だけ、触れたい……。
「マティアス様、ダメですからね」
ソフィアが涙目で俺を見た。
「ちょっとだけ……」
「ダメです!」
「じゃあ、ネイルが乾いてから……」
「そーゆう問題じゃないです‼」
「……はい」
するとタイマーが鳴った。
ソフィアはホッとした顔で起き上がるとタイマーを止め、爪の様子を確認した。
「良かった、ちゃんと乾いている」
そう言うとソフィアは俺をチラッと見て
「じゃあ、電気消しますよ」
「うん」
ソフィアはいつも通りベッドに入り、俺の腕の中に収まった。
こうやってソフィアが隣にいてくれると安心できるな。
……!
ソフィアが突然俺にキスをした。
「か、軽く、触れるだけですよ。掴むとか無理です、ダメですからね」
「……! いいのか?」
「……優しくしてください……」
急に俺は心臓がドキドキしてきた。
いじらしいソフィアの様子と、あの触り心地と柔らかさに触れることができるという期待感で。
「分かった」
俺はそう言うと、上半身を起こし、そのままソフィアの胸に顔を載せた。
パジャマの心地いい生地とマシュマロのような柔らかい弾力に、とろけてしまいそうだった。
「このまま眠ってしまいたい……」
「重いです……」
ソフィアの率直な言葉に吹き出し、俺は暴走することもなく、起き上がるとベッドに横たわった。
「ありがとう、ソフィア」
ソフィアを抱き寄せ、眠りについた。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!
次回更新タイトルは「お尻のガン見、禁止」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼
【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』
https://ncode.syosetu.com/n7794hr/
バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり
恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。
仲間との友情も描かれています。
全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉
ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。




