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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】千年片想い

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嫉妬

途中で休憩をとりながら、一時間半かけてたどり着いた場所は湖だった。


湖に沿った遊歩道にランタンが並べられ、光の道ができていた。


まずはこの光の道で、phantomが歌う姿の撮影が行われることになった。


phantomが撮影している間に、俺とソフィアは着替えを行っていた。


「外、かなり冷えるんで、カイロ、いっぱい忍ばせておきますね」


カイロをいくつも忍ばせ、保温効果のあるインナーなどを身に着け、衣装を着たが、外に出ると芯から冷える寒さだった。


ダウンを取りに戻り、羽織ってから改めて外へ出た。


phantomの撮影はまだ続いていて、白いシャツに白いズボンという薄着のまま、音楽にあわせての熱唱が続いていた。


透明感のある歌声に思わず聴き惚れた。


「本当に澄んだ歌声ですね」


俺と同じダウンを羽織ったソフィアが隣に並んで、phantomに目をやった。


それから十五分ぐらいして、phantomの撮影が終わった。


スタッフが駆け寄り、ダウンを着せようとすると、phantomは「大丈夫」と言い、ペットボトルの水を飲むと俺とソフィアの所へやってきた。


「ごめんね。予定より長引いてしまった」


「いえ、そんな大丈夫ですよ」


「むしろ、熱唱を間近で聴くことができて感動でした」


ソフィアと俺の言葉にphantomは微笑んだ。


「でも、冷えちゃっただろう」


phantomはそう言うと、ソフィアの両手を自身の手で包み込んだ。


「あ、温かい……」


ソフィアが驚いて目を見開いた。


「思いっきり集中して歌っていたからね。汗をかいたぐらいだ。でもソフィアちゃんの手は氷のように冷たくなってしまった。すまないね、プリンセス」


そう言うと、ソフィアの手を持ち上げ、その甲にキスをした。


その瞬間、氷の華が氷解した。


分かりやすくソフィアの頬が色づいていた。


……。


「では、二人とも撮影、頑張って。わたしも着替えたら見学させてもらうよ」


そう言うとphantomはロケバスへ向かっていった。


今のphantomは完全に男に見えた。


でなければソフィアの手にキスなんてしないだろう……。


というかソフィア、なんでそんなにぽーっとしているんだ⁉


「マティアス、ソフィア、もし準備がよければリハから始めていいですか?」


スタッフの声にソフィアは明るく返事をし、俺はただ頷いた。



「う~ん、マティアス、表情がちょっと硬いかな。ヒロインと心が通っている状態だから、もう少し愛おしむ感じで」


「はい」


俺は深呼吸して、演技に集中しようとした。


だが。


どうしてもさっきのソフィアとphantomの姿が脳裏から離れず、演技に集中できなかった。


「すみません、三分でいいので休憩いただいてもいいですか?」


俺の声に監督は頷き、五分間の休憩になった。


「ソフィア、ちょっと一緒に来てもらっていいか?」


「あ、はい」


ロケバスの裏手にソフィアを連れ行くと、俺はソフィアを抱き寄せ、そのままキスをした。


「マ、マティアス様、急にどうしたのですか⁉」


ソフィアが頬を上気させ、肩で息をしながら尋ねた。


……phantomに嫉妬しているなんて言えない。


「……どうしても演技に集中できなくて……」


「そういうことでしたか。マティアス様、ヒロインではなく、ソフィアだと思ってください。演技ではなく、私のことを好きというその気持ちで抱きしめていただければ」


「……ソフィア……」


「私がどれだけマティアス様を好きかは分かりますよね……?」


ソフィアはそう言うと俺の頬に両手を添え、静かに唇を近づけた。


「マティアス様、大好きです」


そう囁き、俺の唇に自分の唇を重ねた。


……ああ、ソフィア……。


きつくソフィアを抱きしめた。


そうだ、ソフィアはこんなにも俺を愛してくれている。


phantomのことで一喜一憂したことがばかばかしく思えた。


「ありがとう、ソフィア。これで集中してできるよ」


この休憩のおかげで、俺は順調に撮影をこなした。


ラストはかなりの寄りで、ソフィアに――ヒロインにキスをまさにしようとするギリギリの姿での撮影だったが、これもリハからの本番で即OKをもらえた。


「さすが。恋人同士だけあって、完璧だったね」


phantomが拍手でソフィアと俺を迎えた。


「最高な仕上がりになっていると思う。試写を見るのが楽しみだ。上映会にはぜひ二人とも来てくれよ」


「こちらこそありがとうございました」


ソフィアがお辞儀するとphantomはソフィアと握手をした。


「マティアス、君も素敵だったよ」


そう微笑んで手を差し出すphantomは、可愛らしい花のような笑顔だった。


……え。


差し出された手に触れると、とてもきめ細やかな肌で柔らかく、どう考えても女性の手だった。


……今、俺、ちょっと、ドキッとしなかったか……?


phantomはロケバスに戻っていった。


昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「モコモコの誘惑」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼


【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』


https://ncode.syosetu.com/n7794hr/


バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり

恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。

仲間との友情も描かれています。

全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉

ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。

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