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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】千年片想い

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キスは媚薬

ベッドがかすかに揺れ、目を覚ました。


ソフィアが起き上がろうとしていることに気づき、俺はその体に手を伸ばした。


ビクッと体を震わせ、ソフィアが俺を見た。


「……マティアス様」


俺は微笑み、ソフィアのおでこにキスをした。

これが一番安心で安全で落ち着く。


「もう起きる時間か?」


「いえ、まだです。……ふと目覚めたので、お水でもいただこうかと思っていました」


「そうか。行っておいで」


だがソフィアは動かず、俺を見た。


「……マティアス様、昨晩は……」


「うん。昨晩のキスは一生忘れられないな。なにせ俺のファーストキスはソフィアが奪ったんだからな」


ソフィアの頬がバラ色に染まった。


「でもソフィアで良かったし、ソフィア以外は考えられなかった。俺は満足だ」


「マティアス様……」


「だがソフィアのキスは俺にとって媚薬だ。俺を狂わせる」


ゆっくりとソフィアを抱きしめた。


「昨晩は俺が暴走して驚いただろう。ごめんな」


ソフィアの髪に顔をうずめ、全身を優しく包むように抱きしめた。


「俺は最近気づいたんだよ。悪運が強いって。まず、天使に攻撃を受け、地上に落ちた時、悪魔の俺は天使のようなソフィアに出会えた。次に俺は悪魔狩りの天使に殺されそうになったところをソフィアに助けられ、ウリエルに出会えた。


さらにソフィアは天使になって、俺と同じ土俵に立つことになった。その上、魔界に迎え入れることができた。魔界が滅びても俺は殺されず、地上で生きている。しかも愛するソフィアと一緒に。ものすごい悪運の強さじゃないか?」


ソフィアは静かに頷いた。


「今、ソフィアは天使で俺は人間だ。でも、まだ、俺の悪運は尽きていない。大丈夫。俺とソフィアは絶対に離れ離れにはならない。俺の辞書にバッドエンディングという文字はない。必ず、末永く幸せになりました、になるから」


ソフィアは俺の突拍子もない話に思わず笑いだした。


「ソフィア、何も笑わなくても……」


「だってマティアス様が子供みたいなことを仰るのでつい……」


「子供かどうかはこれで判断だ」


ソフィアの顎を持ち上げ、その唇に自分の唇を重ねた。


「うん」


ソフィアが身を震わせ、俺の服を掴んだ。


初めての舌を絡ませたキスに、ソフィアも俺も息が上がっていた。

だが、ちゃんと自分をコントロールし、キス以外のことはしなかった。


「まだ時間が早いから、もうひと眠りしよう」


俺とソフィアは再び眠りに落ちた。



「では、リハ始めます」


俺とソフィアはMV――ミュージックビデオの撮影に参加していた。


来年の一月からスタートするアニメの主題歌に決まった「散り行く冬の華」という曲のMVだった。


アニメをイメージするMVということで、ソフィアは主人公の華族の女学生に、俺は主人公が恋をする少尉に扮していた。


ソフィアはアイスブルーの長い髪、濃い紫色の矢絣柄やがすりがらの着物にワイン色の袴姿だった。浴衣を着たソフィアは着物にも挑戦したいと言っていたが、思いがけない形でその夢が叶っていた。


主人公は気が強いという設定だったので、眉はキリッと描かれていたし、目尻も上がるようにメイクされていた。


見るからにツンとした姿なのに、リハに入る前は「マティアス様、見てください! 着物に袴、初めて着ました」と俺に笑顔を見せていた。


だが、曲が流れた瞬間にソフィアの表情が変わった。


とても冷たい眼差しで、誰も寄せ付けないような、氷のようなオーラに包まれていた。


巨大な扇風機で風が送り込まれ、ソフィアがつけたアイスブルーの髪が風になびいた。


絵コンテによると、アップで映し出されたソフィアの顔の周辺にはCGで雪の結晶が舞うことになっていた。


何度か風の向きを変え、本番となった。


「カット」


奇跡的な一発OKだった。


ソフィアは涙目で俺のところへ来た。


「あの風の中、瞬きできないのはきつかったです……」


俺は「よくやった」とソフィアの頭を撫でた。


「では次のシーンのリハ、お願いします。マティアス、ソフィア、あとエキストラの皆さん、位置についてください」


空から降ってくる雪に気づき、皆がゆっくり空を見上げるというシーンだった。


全員のタイミングが合うように、何度か練習を行い、本番になった。


三テイク目でOKとなった。


その後もスタジオでの撮影は続き、十五時過ぎに一旦休憩となった。


この後は夜の屋外でのロケということで、俺たちは着替えてロケバスに乗り込んだ。


ソフィアはメイクと髪はそのままだった。


窓際の席で頬杖をつき、外を見つめるソフィアは、華族の女学生そのままだった。


冷たく美しい氷の華。


近寄りがたさを感じながら、俺が通路を進んでいると、ソフィアは俺に気づいた。


氷の華が美しく花開いたかのようだった。


「マティアス様!」


ソフィアが笑顔で手を振った。


……なんだかギャップ萌えというやつだな。


俺が席に座ると、ソフィアはまじまじと俺を見た。


「どうした?」


「金髪に碧い瞳のマティアス様はやっぱり見慣れないのでつい見てしまいます」


「ああ、そういうことか。そうだな。俺も鏡で自分の姿を見た時、これで白い服でも着ていたら天使なんじゃないかと思ったよ」


「! 本当ですね。今日の私服、黒じゃなくて白だったら良かったのに~」


「おいおい、元魔王が天使の姿なんてシャレにならないから」


「……でも、とっても素敵ですよ、魔王様」


ソフィアが俺の唇に小鳥のようにキスをした。


「うわあ、ホント、君たち仲がいいんだね」


「……!」


俺とソフィアは慌てて立ち上がり


「お疲れ様です」


二人でお辞儀をした。


「はは、そんな緊張しないで。気軽に、よろしくね」


「散り行く冬の華」を歌うphantomファントムだった。


phantomは今、日本のみならず、世界でもその曲が配信され、人気急上昇中のアーテイストだった。


歌だけではなく、絵の才能もあり、NFTアートの世界でも話題になっていた。


そして今回のMVにソフィアと俺を起用しようと言ってくれたのは、このphantomだった。


phantomは俺たちの斜め前の席に腰を下ろすと、イヤフォンをつけ、スマホを手に取った。


俺とソフィアは静かに腰を下ろした。


「普通の人間の方なのに、オーラがありますね」


「そうだな。なんというか才能から発せられている輝きみたいな感じだな」


「まさにそんな感じです。それに、性別不詳で通しているだけあって、声も容姿も本当に中性的ですよね」


「うん。女性だ、と言われれば、そうか、という感じだし、男性だと言われても、なるほど、という感じで本当にミステリアスだな」


phantomはイヤフォンで音楽を聴いているのだろうか。


リズムに合わせ、体が自然に動いている感じだった。


「それでは、出発しますー」


スタッフの合図でロケバスが移動を開始した。


昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「嫉妬」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼


【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』


https://ncode.syosetu.com/n7794hr/


バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり

恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。

仲間との友情も描かれています。

全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉

ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。

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