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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】千年片想い

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同士のよしみ

上空を見ると、確かに天使軍の姿が見えた。


倉庫の屋根から逃げた悪魔の一部は天使軍と遭遇したようで、戦闘が繰り広げられていた。


空から車に目を戻すと、ソフィアをまず車に乗せた。


「ロルフとベラも早く」


「待て、マティアス」


その声に俺は動きを止め、振り返った。


……エウリール……いや、ウリエル。


「ソフィアは魔力で口を封じられている。おれの力でその魔力を解こう」


車に近づいたウリエルは、ソフィアを呼んだ。


するとウリエルはいきなりソフィアに口づけをした。


「な、ウリエル、お前……」


近づこうとする俺をウリエルは手で制した。


「よし、これで大丈夫だ」


ソフィアの頬は上気し、少し開いた口からは滴がこぼれ落ちた。


「ウリエル、説明しろ!」


「だから魔力を解いたんだよ、天使の力で。まさかマティアス、おれがソフィアの唇に触れたと思ったのか? そんなことするわけないだろう。天使の力を送り込んだだけだ」


「そうなのか……。疑ってすまなかった」


「まったく。お前はソフィアとキスをしたくて、したくて、堪らなかったのだろう? 安心しろ。唇にキスできるぞ」


「え……」


「ソフィアの口に、天使の力を残しておいた。キスをしても天使の力が作用して、キスをしたとカウントされない。まあ、食品用ラップフィルムごしにキスをしているようなもんだ。そうはいっても天使の力は見えないし感じられないから、普通にキスしているのと変わらんがな」


ウリエルはそう言うと俺の肩をポンと叩いた。


「行けよ、マティアス」


「……ウリエル、どうして、天使に戻った?」


「仕方ないさ。これしか方法がなかった。おれも地上に落とされた時点で魔力も羽も奪われていたからな。魔王騎士団と悪魔数千を相手にするには、人間のままでは無理だった。だから天使に悪魔が集結していると知らせ、その見返りに大天使への復権を求めた。元々、しゅが持つ予言書の中で、おれは堕天することが予告されていた。そして復権することも。だからあっさり、復権できたというわけだ」


「俺たちを助けるために……?」


「さあな、どうかな。丁度世話になっていた人間の女に浮気がバレて、追い出されそうになっていた。そろそろ天使に戻るいい頃合いだったのかもしれない」


「……話し方が悪魔の時のままだ。まだ、未練があるのでは? 天使ではない自分に」


「ふふ。マティアスはわたくしのこの口調の方が気に入っているのかな?」


「……いや、悪魔の時の方がいいな」


「だろうと思ったよ。さあ、早く行け。お前がここにいると分かるとややこしくなる」


「分かった。恩にきる」


「同士のよしみさ。おれもお前と同じだったからな」


「え」


「マティアス、天使軍が地上に降りてきている。早く」


ロルフに促され、俺は車に乗った。


ウリエルの姿はもうなかった。



そのまま家に戻ろうとしたら、ベラがデパートに戻るように俺に訴えた。


ソフィアのカバンやスマホ、買い物したもの、そのすべてをデパートに置いてきたのだという。


魔力で人には見えないようにしてあるから、盗まれていることはない。だから早く取りに行こうというのだ。


「だったら別の日でもいいのでは?」


「ダメだ。マティアスもソフィアも明日から仕事だろう。あたしやロルフで持てる荷物じゃない。それとも次のオフまで放置か?」


「……。ソフィアは疲れていないか? 一刻も早く家に帰りたいのでは?」


「私は大丈夫です……。マティアス様こそお疲れでは?」


……あんなに怖い思いをしたのに、俺のことを気遣うなんて……。


今すぐ抱きしめたくなる衝動を抑え、ソフィアの頭を優しくなでた。


「俺は大丈夫だ。本当に、ソフィアが無事で良かった」


「じゃあ、とっとデパートに寄って、家へ帰ろうぜ」


ロルフの言葉に頷き、俺たちはデパートへ向かった。



ようやくマンションに着くと、俺たちはバレないようにこっそりと裏口から部屋に戻った。


協力してもらった記者とカメラマンには、匿名でデリバリーのステーキ弁当を差し入れておいた。


「オレもベラも魔力を使ったから腹ペコだぜ、マティアス」


「分かっている。ちゃんと全員分の配達を頼んでおいたから」


ロルフとベラは大喜びだった。


「デリバリーが届くまで時間がある。ソフィア、着替えでもするか?」


「……はい。シャワー、浴びてきますね」


俺は頷き、ソフィアが戻ったらすぐ食事ができるよう準備を整えた。


「ベラ、倉庫に連れ込まれてから、ソフィアは何もされていないんだよな?」


「ええ。それは大丈夫。ちょっとでも変なことしたら、噛みついて引っ掻いてこてんぱにするつもりで毛を逆立て、ソフィアを守っていたから」


「そうか……。良かった……」


「ソフィアは強かったわよ。戦場に出たこともない、お城の中でマティアスの秘書だけやっていたとは思えないぐらい。ゲオルクやヘルマンからどれだけなじられても、決して涙を見せなかった。あの集結した悪魔たちの前にあんな姿で連れ出されて、卑猥な言葉を投げつけられても屈しなかった。心が折れなかった。まるでジャンヌ・ダルクね」


ソフィアはいつの間にそんなに強くなったのだろう……。


いや、地上へ落ちてからのソフィアはとっても逞しくなっていた。


「マティアス、肉の香りがするぞ!」


ロルフが飛び起きた。


そしてインターフォンが鳴り、ソフィアはシャワーを終えて出てきた。


「よし。腹ごしらえをしよう」



昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「サプライズ」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼


【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』


https://ncode.syosetu.com/n7794hr/


バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり

恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。

仲間との友情も描かれています。

全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉

ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。

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