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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】千年片想い

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傾国の美女

事務所に入り、反対側のドアを開けると、そこはもう倉庫だった。


そしてそこには……沢山の悪魔の姿があった。


倉庫の中央にはまるでセットのようにステージが組まれていた。


そこに何人かの悪魔がいて……。


「ソフィア……」


椅子の背に両手を縛られた状態で座るソフィアの姿が見えた。


俺がいる場所からは後ろ姿しか見えず、顔は見えなかった。


「諸君、この女が誰であるか分かるか?」


銀髪をオールバックにした屈強な体躯の悪魔――ゲオルクが大声で集まる悪魔を見渡した。


「随分、綺麗なねーちゃんじゃねーか。まるで聖女様だ」

「舐めまわしたいぐらいの白い肌だなぁ」

「この女、魔王の秘書じゃないか?」


その声にゲオルクが反応した。


「そう、この女は魔王の秘書であり、魔界の滅びを招いた女だ。先刻、世界中で公開された動画を見た者はいるか? この女は天使の姿で魔王を誘惑していた!」


その言葉に悪魔たちの間でざわめきが起きた。


「この女は、まさに傾国の美女。その美貌で魔王の心を骨抜きにし、和平交渉を勧め、人質の引き渡しに応じるように王を説得した。その結果、魔界は弱体化し、天界に負けたのだ!」


ゲオルクの言葉に、その場にいた悪魔はソフィアに向け、罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせた。


俺は瞬時に理解した。


ゲオルクがソフィアをさらった理由。


それは二つあった。


一つは俺をおびき出し、脅すため。


そしてもう一つ、それは魔界が破滅した原因をソフィアに背負わせ、そして俺に……魔王に非はないとここにいる悪魔に認めさせ、そして俺を担ぎ上げ天界といくさを始めるためだった。


純血至上主義の親父の騎士団がいかにもやりそうなことだった。


怒りで震える俺を、ロルフはズボンのすそを引っ張り、必死に落ち着かせようとしていた。


「裏切り者をこのままにしておくわけにはいかない。この場で処刑する」


ゲオルクの声に悪魔たちが口々に叫んだ。


「服を剝ぎ取り、許しを請わせろ」

「そうだ! 処刑する前に醜態をさらさせろ!」

「魔王を落とした嬌声をここで聞かせろ」


俺の怒りは限界だった。


これ以上、ソフィアを侮辱させるわけにはいかない。


「それも面白いな。さあ、どうしようか?」


ゲオルクが俺を見た。


……俺がここにいると分かって悪魔たちを煽ったのか。いいだろう、ゲオルク。受けてやる。


大きく深呼吸すると、前髪を後ろにかきあげた。


「ゲオルク」


腹に力を込めた一声に、悪魔たちのざわめきが止んだ。


その場にいた全員が俺を見た。


「お前たち、頭が高いぞ。俺を誰だと思っている」


その声に、その場にいた悪魔が一斉にひれ伏した。


俺は……親父に瓜二つと言われていた。


顔も声もやろうと思えば親父を再現できた。


「どけ」


俺の一声に、ゲオルクがいる場所に行くための道ができた。


堂々とその道を進み、ゲオルクの前に立った。


「王の前だぞ、ひれ伏せ」


ゲオルクは、俺が先代魔王ではないと分かっている。


だが、この姿と声に従うしかなかった。


それだけ俺は親父に、先代魔王に似ていた。


ゲオルクがひれ伏すことでソフィアの姿が見えた。


ソフィアは布でさるぐつわをされていた。


今すぐにソフィアに駆け寄り、布を口から外したい気持ちを堪え。声を発した。


「皆、よく聞くがよい。魔界が滅んだのはこのようなちっぽけな女のせいではない」


異論を挟む者は、いない。


「天使は死ぬと、どうなる? ヘルマン?」


ゲオルクの隣でひれ伏していたヘルマンがその姿勢のまま答えた。


「天使の魂は天界へ戻り、時をおいて復活します」


「そうだ。では悪魔はどうだ?」


「悪魔は死ねばそれでおしまいです」


「その通りだ、ヘルマン」


一呼吸置いてから再度言葉を続けた。


「お前たちは天界と魔界が何度戦闘を行ったか、理解できているか? どれだけの悪魔が命を落としたか、理解しているか?」


答える者は誰もいない。


「長く続く戦闘で命を落とした悪魔の累計はおよそ七十億だ。魔界が天界の手に落ちた時、魔界にどれだけの悪魔が残っていたか、分かるか? 


わずか一万弱だ。我々は戦に明け暮れ過ぎていたのだ。滅びの道を避けるには、和平しかなかった。人質を取り戻し、少しでも悪魔が減ることに歯止めをかけるしかなかった」


倉庫に集結していた悪魔は静まり返っていた。


「新たに戦を――」


突然、倉庫の入口のシャッターが吹き飛んだ。


入口近くにいた悪魔が数体、その場から吹き飛んだ。


「た、大変です、ゲオルク様、上空より、天使軍、その数、約一万、こちらへ向かってきています」


ボロボロに傷ついた悪魔が駆け込んできた。


「何ッ⁉」


ゲオルクが叫び、多くの悪魔が立ち上がったその時。


「ほお。がせネタかと思いましたが、そうではないようですね。まさかこんな辺鄙な極東の地に、こんなにも悪魔が集結しているとは。驚きです。しかも先代魔王の騎士団までいるとは」


「……貴様、まさか……大天使……」


ヘルマンの声に悪魔たちが震撼する様子が伝わってきた。


「そうです。さあ、震えあがりなさい、悪魔どもよ。わたくしは大天使ウリエル、一度の鞭で千の悪魔を討ち取る者ぞ」


ウリエルが鞭を構えると、悪魔たちが一斉に動いた。


俺はソフィアに駆け寄り、手の縄をほどこうとした。


ダメだ。ほどけない。魔力で結わかれている⁉


「ロルフ!」


ロルフが噛みつくと縄はほどけた。


口の布には魔力は使われておらず、簡単にはずすことができた。


だが俺が布をはずしても、ソフィアは声も出ないようだった。


「ソフィア、行くぞ」


ソフィアを抱き上げ立ち上がった。


多くの悪魔が倉庫の屋根に穴をあけ、そこから飛び立っていた。


ゲオルクとヘルマンの姿もなかった。


「ベラはどこだ、ベラ!」


俺が叫ぶと、ベラがジャンプして俺の肩に乗った。


「行くぞ」


ロルフを先頭に、事務所に向かい、そこから倉庫の外に出て、そのまま乗ってきた車に戻った。


昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「同士のよしみ」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼


【完結】『歌詠みと言霊使いのラブ&バトル』


https://ncode.syosetu.com/n7794hr/


バトルパートでは激しい戦闘もあればコミカルな戦いもあり

恋愛パートは思春期の男子らしいHな描写もあれば、甘く切ない展開もあります。

仲間との友情も描かれています。

全67話で完結済みです。一気読みにいかがでしょうか⁉

ぜひこちらの作品もよろしくお願いいたします。

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