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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode3】魔界大騒動

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エピローグ

神殿に向かい飛行を開始し、そこでようやくソフィアと二人、話すことができた。


「ソフィア、昨晩はゆっくり休めたか?」


「はい。三人でぐっすり眠ることができました」


「レイラとアクラシエルとのおしゃべりは、楽しかったか?」


その瞬間ソフィアの顔が赤くなる。


「そ、そうですね……。その、色々とお勉強させていただきました……」


「……そうか」


「マティアス様は、エウリールとラファエルとお酒を楽しんでいたのですか?」


ソフィアにあのパーティーのことを説明していないのか?


いや気を使い、パーティーのことは持ち出さず、女子トークの延長線上で、いろいろなことをソフィアに教えてくれたのだろう。


「ああ。ボトルのワインが何本も空になった。エウリールとラファエルとも沢山話せた」


「それだけ飲んでも、二日酔いになっていないのはすごいですよね」


「そうだな。これが魔界や地上だったら、俺は今頃、爆睡しているだろう」


そこで言葉を切り、俺はソフィアを見た。


「ソフィア、これからの神殿の婚儀、何か不安はないか? 大丈夫か?」


頬をバラ色に染めたソフィアが静かに答える。


「大丈夫ですよ、マティアス様」


ホッとした俺の視界の先に、神殿が見えてきた。



早朝でもないが、まだ家にいる天使が多いだろうこの時間、街へ続く道はもちろん、神殿に続く丘の道にも、天使の姿はない。


俺達は神殿の扉の前に降り立った。

エウリールとラファエル、レイラとアクラシエル。

四人が俺とソフィアを囲んでいた。

そして四人の後ろの丘のふもとから見える空には……。

虹がかかっている。


俺が婚儀を挙げる時、虹をかけてくれとエウリールに話していた。

その約束が守られている。

平和のシンボルの虹を見て、ソフィアは微笑んでいた。


「さあ、行けよ、マティアス」


エウリールに促され、ソフィアと二人、扉の方を向いた。

そしてゆっくり、扉を押そうとした時。


「マティアス」


穏やかで優しい声……ミカエルだ。

その声に振り返った俺は、多分、らしからぬ表情をしていたのだろう。


「マティアス、具合でも悪いのか?」


ミカエルに心配された。


「これから婚儀を挙げる顔には見えないな」


そう言うなりミカエルが、俺の額に祝福を与えた。


……!? 急に体中に、神の力がみなぎる。

体を急速に巡る力に戸惑いながらも、ミカエルに告げた。


「……ミカエル、お前の言う通り、俺はこれから婚儀を挙げる。何か用があるなら、終わった後に」


「それは無理だ」


「……!」


絶句していた。

だが。


「なぜなら神殿に入る前に伝えたいことが二つあるからだ。まずマティアス、今日から一カ月はありとあらゆる任務を免除する。宮殿で過ごすなり、地上や魔界へ行くなり好きにするといい。そして……おめでとう」


あまりにも驚き、俺は声が出ない。


「マティアス様」


ソフィアが優しく俺の手に触れ、そこで我に返った。


「……ミカエル、ありがとう」


その瞬間、ミカエルが初めて笑顔になった。

微笑などではなく、ちゃんとした笑顔だ。

あまりにも神々しく清らかな笑顔に、胸が熱くなった。


「さあ、行くがいい」


ミカエル、エウリール、ラファエル、レイラ、アクラシエルに見送られ、ソフィアと俺は神殿の扉を開いた。


長い廊下の先には天蓋付きのベッドが見えている。

その奥には祭壇があり、突き当りの壁には巨大な十字架としゅの姿。


爽やかな薔薇の香りがここまで漂ってきていた。

二人で手をつないで神殿の中へ入った。

後ろで扉が閉じる音が聞こえる。


「ソフィア、沐浴を終えたら、祭壇の前で会おう」

「はい。マティアス様」


つないでいた手を離し、ソフィアと俺はそれぞれ左右の通路を進んだ。



ミカエルの登場には驚かされた。

また何かを命じられるかと思った。

まさか祝福を与えられ、ハネムーンを与えてもらえるとは……。


心に憎い演出だ。

やはりミカエルには敵わないと思ったが……。

ふとソフィアの言葉を思い出す。


――「相手がミカエル様なら仕方ないですよね。でも、そのミカエル様でも手に入らないものがあるって、マティアス様は知っていました?」


今、その答えが分かった。

ミカエルには手に入らず、俺がこれから手に入れるもの。

それは……ソフィアだ。

俺はこの神殿でこれからソフィアの身も心もすべて手に入れる。

今度こそ一つに結ばれる。

沐浴のための湯船につながる階段を、ゆっくり降りていった。


(完)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

途中、迷うこともありましたが、無事完結できてよかったです。

実はこのゴールに至るまでの間に書き溜めたエピソードはたんまりあります。

もし読んでみたいという声があれば、もしかするといつかしれっと更新を再開しているかもしれませんが、まずはこれにて終了ということで。


最後までついてきてくださった読者様、ありがとうございました!


【おまけ】

本作のスピンオフの悪役令嬢ものを現在更新しています。

『悪役令嬢ポジションで転生してしまったようです』

https://ncode.syosetu.com/n6337ia/


毎晩20時公開。ぜひご覧ください!

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