マティアスのロスト・バージンに乾杯
「マティアス自身の知識も危ういが、それ以上にソフィアちゃんの男女の秘め事に関する知識が乏しそうだと、みんな気づいていた。そこでバチェラー・パーティーとバチェロレッテ・パーティーをやることを、思いついたんだよ」
「……つまりこのパーティーは……」
俺の言葉にエウリールが答えた。
「レイラとアクラシエルは今、神殿で行われる生涯の契りがどんなものであるか、ソフィアに講義している最中だ。マティアス、お前がおれの二の舞にならないようにな。散々邪魔が入って婚儀を挙げられず、ついに結ばれるとなった時、『マティアス様、恥ずかしいです。それに無理です』とストップをかけられたくないだろう?」
「な……ソフィアはそんなこと……」
言いそうだった。
男女の秘め事を正しく知らなければ、絶対に言いそうな一言だ。
「……エウリール、確かにお前が正しい……」
俺はグラスのワインを一気に飲み干す。
「バチェラー・パーティーとバチェロレッテ・パーティーを思いついてくれたこと、エウリール、ラファエル、感謝するよ」
エウリールはこの言葉に喜び、グラスにワインを注いだ。
「そうこないとな。おい、ラファエル、お前も飲め」
ラファエルのグラスにもワインを注ぐと、エウリールは自らのグラスもワインで満たす。
「よし。乾杯をするぞ。マティアスのロスト・バージンに乾杯」
なんて乾杯なんだと思いつつも、俺のことを考えてこの場を設けてくれたのだ。
文句は飲み込み、そのままグラスを掲げた。
◇
なんだかんだで二時間近く、バチェラー・パーティーは行われた。
エウリールは女性が恥ずかしいと思わない姿勢はこれだ、と実際にその姿勢をして見せて、俺はそれを見て酔いが吹き飛んだ。その一方で、癒しの力をどのタイミングでどれぐらい使うと気持ちの良さを失わず、逆に高めながら癒すことができるかという話は……勉強になった。
結局寝室に戻らず、そのままローソファに寝そべり、朝を迎えた。
グラスに残っていた水を飲み、自分のコンディションを確認する。あれだけ酒を飲んだが、体に二日酔いの気配は皆無だった。しかも寝室にもいかず、ローソファで眠っていたわけだが、体はスッキリしている。
なんだかんだで気の置けないエウリールとラファエルと楽しく過ごしたことで、心身は満足していた。
まだ寝ている二人を置いて、浴室へ向かった。
◇
入浴を終え、部屋に戻ると、テーブルは綺麗に片付けられ、朝食が並べられている。
エウリールとラファエルもそれぞれ入浴を終え、席についていた。そこにソフィア、レイラ、アクラシエルが入ってくる。
三人とも揃いの白いキトンで、何か話してクスクス笑ったりして、とても楽しそうにしていた。
俺と目が合ったソフィアは頬を染め、恥ずかしそうに笑いながら、視線を落とす。
なんとも初々しい姿で、ソフィアがレイラやアクラシエルからどんな話を聞いたのかと、ドキドキしてしまった。
「マティアスとソフィアちゃんは、朝食が終わったら神殿へ行くのかい?」
ラファエルに聞かれ、俺はソフィアを見た。
ソフィアは伏し目がちながら俺を見て、静かに頷く。
それを見て俺は安堵し、ラファエルに答えた。
「そのつもりだ」
「そうか。では神殿まで付き添おうか」
「そうだな。もう邪魔ははいらないと思うが、みんなで見送ろう」
俺の代わりにエウリールが答えている。
どうせ来るなと言ってもついてきそうなので、俺は「分かった」と返事をした。
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マティアスは良き仲間に恵まれした!
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