そんなことをするの!?
「レイラは聖人としてその命を終え、天界に召された。つまり、愛する男女がベッドで何をするのか知らなかったんだよ。知らない……わけではない。裸で抱き合う、それがすべてと思っていたんだよ」
エウリールはその時のことを思い出したのか、頭を抱えた。
「もうおれはレイラを抱くのに万全の状態だったのに、その事実に気づいた瞬間に一気に冷めたよ。何も分かっていないレイラをそのまま抱くなんてできない。そこからはもうレイラに、愛し合う男女がベッドで何をするのか事細かに説明することになった。おれの話を聞いたレイラは目を丸くして固まったよ。『そんなことをするの!?』ってな」
ラファエルが苦笑した。
「おい、ラファエル、笑い事じゃない。あの時は本当に大変だったんだ。説得に説得を重ね、ようやくレイラが首を縦に振り、おれが抱くことに合意した。裸で何時間も向き合って、男女の秘め事の詳細を話し合った後に、やり直すんだ。気持ちをそこまで持っていくのは大変だった……。まあ、レイラは魅力的な体をしているからな。体はすぐに反応したが、気持ちが、心を立て直すのは本当に大変だった……」
エウリールには申し訳ないが、ラファエル同様俺も苦笑していた。
「おい、マティアス、笑い事じゃないからな。明日は我が身なんだぞ。ようやく気持ちを切り替え、いざその時がやってきた。だが……。レイラは『恥ずかしい』と言い出した」
「……初めてなんだ。仕方ないのでは?」
俺の言葉にエウリールが首を振った。
「違う。そういう意味じゃない。抱く時の姿勢だよ。『なんでこんなに足を!? 恥ずかしい』と言いだしたんだ」
ラファエルが堪らず笑っていた。
「でもそうしないと無理だからな。でもそれが恥ずかしいならと、レイラが恥ずかしくならない姿勢でいざ抱こうとしたら……。今度は『違和感があるの。無理、絶対に痛そう』となった。もうそれからも本当に大変だった。痛くならないようにゆっくり抱くと説得しても、まあそれこそ無理な話だ。こっちもレイラとあーだこーだ言っている間にクールダウンしていくしな」
エウリールはそこで盛大なため息をつき、こう続けた。
「結局、おれは癒しの力を使いながらレイラを抱いた。……本当に、自分が大天使で良かったと、心底、主に感謝したよ。おかげでレイラは本来感じるはずの痛みもなく、むしろ気持ちの良さのみを強く感じ、おれとようやく結ばれることができた。おれの癒しの力も相応なものだからな。レイラはおれに抱かれることを、気持ちがいいものと認識してくれた。あの時、おれは8回レイラを抱いたが、そのうち5回は癒しの力を使っていた。だが残りの3回は癒しの力を使わず普通に抱いて、レイラはちゃんと気持ちの良さを感じてくれた。……本当はな、お前たちを待たせていると分かっていたから、2回抱いたら終わりにするつもりだった。だがな、こんな経緯があったから、予想以上に時間がかかってしまったんだよ」
そこまで話すと、エウリールはグラスのワインを一気に飲んだ。
「レイラとソフィアちゃんは男女の秘め事に関する知識が同レベルぐらいではないかと私達は考えたのだが、実際どうなんだい、マティアス?」
ラファエルはエウリールのグラスにワインを注ぎながら、俺を見た。
「……それは……。魔界にいたころは、男女のそういう話からソフィアを遠ざけるように俺が意図的にしていたから……。地上にいた数カ月の間は……。分からない。ネットもスマホもあったから、そこからソフィアがこっそり知識を仕入れていた……かもしれないし、していないかもしれない」
俺の言葉にエウリールが反応した。
「ソフィアがそんな情報を得るために、スマホで検索する姿なんて想像できない。知識を仕入れていたわけなんてないだろうな。せいぜいラブシーンがある映画を観てドキドキしていたぐらいだろう」
「……」
そう言われるとそうとしか思えなかった。
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