普段はキトンで隠れている場所
「マティアス様」
ソフィアの声が聞こえ、唇に温かさと柔らかさを感じる。
ゆっくり目を開けると、俺を覗き込むソフィアと目が合う。
ソフィアのキスで起こされた。思わず頬が緩む。
「お疲れの所、起こしてしまい、すみません、マティアス様」
「いや、まだ眠るつもりはなかった。こんな体勢だし」
ベッドに座った状態で後ろに倒れていたので、膝から下は、ベッドにのっていない。それに履物も、足に履いたままだ。
ゆっくり起き上がり、ソフィアを見る。
浴場の湯は、温泉と同じなのだろうか。
ソフィアの肌艶が、さらに良くなっている。
髪も……月明りを浴びているわけではないのに、ブロンドが輝いているように見えた。
そして……。
「ソフィア、そのキトンの着方、初めて見た」
俺の言葉にソフィアは、自身のキトンを見下ろしながら、説明した。
「あ、はい。私も先ほど着せていただいて、初めてこのような着方があるのかと知りました。簡単なので、着方は覚えましたよ。横長の布を胸の前で当てて、それを背中でクロスさせて、脇の下を通して首の後ろで結わけば完成です。スカートはパレオの巻き方と同じですね」
「なるほど」
ソフィアとしては、体にフィットして、脱げにくいところが気に入っているようだが……。
体にフィットしている、ということは、胸が描く曲線が露わになっている。さらにおへそを中心にしたウエスト周りは、素肌が丸見えだ。
ソフィアはそのことに、気づいているのだろうか?
腕を伸ばし、腰を引き寄せる。
手が素肌に触れることで、ソフィアは自分の腰回りが無防備になっていることに、ようやく気づいたようだ。
頬がバラ色に染まる。
でも、もう遅い。
そのままベッドに押し倒し、普段、触れることのない、ソフィアのおへそにキスをした。
「!? マティアス様、そこ、おへそですよ!?」
「分かっている。ソフィアのおへそ、初めて見た」
「!! そ、それは当然です。普段はキトンで隠れている場所ですから」
「だから珍しい。探検をしないと」
「えっ!?」
くすぐったいと暴れるソフィアを押さえ、お腹やウエストに、キスのシャワーを降らせる。
最初はくすぐったいと身をよじらせていたが、次第に呼吸が切なそうなものに変わっていく。
「……お腹はダメです、マティアス様」
顔を赤くして抗議するソフィアが可愛すぎて、お腹とウエストへのキスを終了させる。
代わりに。
いつも通り、その愛らしい唇にキスを落とした。
◇
翌朝、ソフィアと抱き合った状態で寝ていると、寝室に入ってきた天使に起こされた。そしてキトンを着替え、マントを羽織るように言われた。
マントの色はエウリールと同じ、輝くようなサファイアブルーだ。
着替えを終えると、すぐに朝食を摂るための部屋へ、案内される。
ダイニングルームもまた、寝室と同じだ。建物一棟すべてが、ダイニングルーム。
広すぎるダイニングルームの中央に、テーブルが置かれている。そのテーブルは、二十人が着席できる大きさだ。それでも周囲にスペースが有り余っている。
「マティアス、ソフィア、ゆっくり眠れたか?」
部屋に入ってきたエウリールは、俺達と同じ、サファイアブルーのマントを羽織っている。
「ああ。とても寝心地の良いベッドだったよ」
俺が答えるとエウリールは……。
「広々としていただろう? しかもマットレスも最高級品だ。スプリングの具合もいいし、音もでない。どんなに激しい動きにも耐えられる」
そう言って意味深な視線を、俺に送ってきた。
……エウリールの奴、朝からなんてことを。
皮肉の一つでも言ってやろうかと思ったが、エウリールはすっとウリエルの顔つきになり、そばにいた天使に声をかける。
「すまないが、こことこの席に食事を用意してくれるかい?」
「かしこまりました。ウリエル様」
天使達が一旦部屋を出ると、エウリールはいつもの表情に戻る。そして俺達を手招き、テーブルの端の席に座るよう促す。
ソフィアと俺は席についた。
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次回更新タイトルは「ミカエル対策」です。
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