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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode3】魔界大騒動

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ここで暴走してはいけない。絶対に。

「マティアス様、起きてください!」


元気なソフィアの声で起こされた。


「どうした、ソフィア。まだ起きるには早くないか?」


「そうなのですが、外を見てください、マティアス様」


上半身を少しだけおこし、窓の方を見る。

ソフィアは俺に見せるため、窓の障子を開け放っていた。


「……!」


窓の向こうの日本庭園には、雪が積もっている。

エウリールか?

美しい景色だった。

木々を覆うように積もった雪。

灯篭の上にこんもりのっかる雪。

空に雪雲は既になく、青空が広がり、朝陽が差し込み始めている。


庭園の池には白い靄が立ち、そこに届いた朝陽が、なんとも言えない幻想的な景色を作り上げていた。


「雪見風呂ができますよ、マティアス様」


「……!」


布団から起き上がった。


「マティアス様、先に入っていいですよ。私はマティアス様が服を着ている間に、こっそり入りますから」


部屋から露天風呂は丸見えだったので、俺が先に入り、俺が出た後にソフィアが入る。


それは妥当な提案に思えた。

だから俺はすぐ露天風呂に向かった。


浴衣は慣れてしまえば、着るのも脱ぐのも、キトンと同じぐらい楽だ。


湯船につかる前の一瞬は、筋肉がついている俺でもさすがに寒いと思ったが……。


でも湯船に入ってしまえば。

丁度いい温度だ。

全身が温かいお湯を喜んでいる。


自然と大きく息をはき、そして清々しい朝の空気を吸い込んでいた。


ソフィアの言う通り、雪を被った庭園を眺めながらの露天風呂は……最高だ。


その時。

瞼を両手で覆われた。


「……マティアス様、しばらく、目を閉じていてくださいね」


ソフィア……?

ちゃぷん。

ちゃぷん。

俺の入る露天風呂のお湯が、揺れるのを感じる。

まさか……。

心臓が信じられないほど高鳴っていた。


「……いいですよ、目を開けていただいても」


ゆっくりと目を開ける。

目を開けてなくても、もう分かっていた。

ソフィアが俺の隣にいる。

一緒にこの露天風呂に入っている。


その真実に、どうしようもなく体が反応していた。

懸命に深呼吸を繰り返す。


ソフィアに誘惑され、自分の中の衝動を抑えるために、必死で深呼吸をしたことがある。そして今、その時と同じぐらい真剣に、深呼吸を繰り返した。


「素敵ですね……」


声に思わず隣を見てしまい、息を飲んだ。

金髪の長い髪は結い上げられ、首筋にはうなじが見えている。


胸は薄手のタオルで隠されているが、それ以外は……。

湯気の中に白い肩が見えている。

静かに目を閉じた。

ここで暴走してはいけない。絶対に。


「お湯につかっているところはぽかぽかですが、肩は少しヒンヤリしますね」


そう言うとソフィアが俺に身を寄せた。

体に触れるソフィアを感じ、もう露天風呂どころではなくなっている。


だが、それをソフィアに悟られまいと、その肩に腕を回した。


「これだと寒くないか、ソフィア?」


「マティアス様」


俺を見上げるソフィアは……。

湯気に包まれ、頬はバラ色に染まり、唇は艶やかに濡れ……。


信じられないほどの色香いろかを、感じさせた。

何もしない。

そんなことは、到底無理だ。

気づけばキスをしていた。

それでも。

キス以外は自制していた。

顎に添えた手を、動かしてはならない。

絶対に止まらなくなる。

今はキスに集中し、余計なことはしない。

その結果、熱烈なキスをし続けることになり、ついにソフィアが……。


「マ、マティアス様」


空気を求め、ソフィアが喘いでいる。

その表情があまりにも煽情的で、俺は限界だった。


「のぼせそうだから、俺は先に出るよ、ソフィア」


もう爆発しそうな気持を抑えこみ、おでこにキスをする。

俺が出ると分かったので、ソフィアは目を閉じてくれた。


必死の思いで脱衣所へ向かう。

一刻も早く神殿で婚儀を……。


もう何度目の誓いになるか分からなくなっていたが、心に強くそう思った。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「限界が近い。我慢も効かくなりそうだ」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう!!

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