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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode3】魔界大騒動

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酔っていません

食事があらかた終わると、オリアクスは部屋に置かれていた器機に目をとめた。


「兄上、これは何ですか?」


「お! オリアクス、これに興味を持ったのか。これはな、カラオケという日本が生み出した最高の娯楽だ。どれ。おれがどんなものか見せてやろう」


エウリールが俺の代わりに答え、早速『もろびとこぞりて』を歌いだす。


地上に人間として堕とされていた時、ラファエル……phantomと一緒に、Misfitミスフィトの名で活動していただけある。その歌声は確かなものだ。エウリールの声量のある歌声に、オリアクスもルルも感動している。ソフィアもうっとりした顔でエウリールを見ていた。


歌い終わると皆、拍手を送り、その歌声を称賛する。

オリアクスとルルは、もう一曲とせがむ。


ご機嫌になったエウリールは、phantomとMisfitミスフィトの連名で発売した曲を、歌い始めた。


オリアクスとルルは、互いに寄り添い、エウリールの歌声に酔いしれている。


ソフィアも食後に出された玄米茶を飲みながら、熱唱するエウリールを熱心に見ていた。


さっきから俺は、ソフィアのことを何度も見ている。しかしエウリールの歌声に聞き入っているソフィアは、まったく俺の視線に気づかない。


ソフィアがベラに嫉妬したことを、心の中で可愛らしいと笑っていた。


だから俺がエウリールに嫉妬しているとソフィアが知れば「マティアス様、そんな心配されていたのですか!?」と、笑うことだろう……。


そう分かっていたが……。


「ソフィア、もう食事も終わった。……部屋へ戻ろう」


耳元で甘く囁き、「え、でもまだエウリールが」と答えるのを半ば強引に抱き寄せ、立ち上がらせた。そしてそのまま部屋を出る。食事も終わっていたので、俺とソフィアが部屋を出ても、誰も止めることはない。


廊下に出ると、何か言いかけたソフィアの口をキスで塞ぎ、その後は肩を抱き寄せ、部屋まで足早に戻った。


ソフィアと俺の部屋は、仕事で泊った時と同じ部屋だ。

部屋の間取りも、どこに何があるのかも、すべて頭に入っている。


だから部屋に入ると明かりもつけず、ドアにソフィアの背を押し付けるようにして、その唇を奪った。突然激しいキスをされ、ソフィアは戸惑うかと思ったが……。


ソフィアの体に力は入っていない。

ただ俺にされる激しいキスに、息を弾ませているだけだ。

再びソフィアの口を塞ぎ、舌を絡ませながら、手をそっと動かした。


マシュマロのように柔らかい胸に触れたが、ソフィアが俺の手を掴むことはない。


形のいいその胸を手で包み込んでも、止めようとしない。


「……ソフィア、もしかして酔っているのか……?」


ソフィアは乱れた息のまま「酔っていません」と答えたが……。


浴衣の胸元に手をしのばせ、その肌に触れると……。

体温がいつもより高い。

間違いなく、酔っていた。


部屋の電気をつけ、庭園を眺めるように置かれた椅子に、ソフィアを座らせる。


冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、グラスに注いだ。


「ソフィア、これを飲んだら歯を磨いて休もう」


「……え、マティアス様、露天風呂は?」


部屋には源泉かけ流しの露天風呂がついている。前回泊った時、ソフィアはこの露天風呂に入りたがっていた。しかし結局大浴場に行ってしまい、利用せずに終わっている。だから再びこの部屋に通されたソフィアは……。


「今日は夜眠る前に、この露天風呂に絶対入ります!」


そう宣言していた。


「ソフィア、酔っているだろう? そんな状態で温泉に入るのはダメだ」


「……そんな」


「でもちゃんと水を飲んで休めば、明日の朝には入れる」


俺の言葉にソフィアはがっかりしつつも、「ちゃんと水を飲めば」という言葉に従い、グラスの水を飲み干した。もう一杯水を飲ませ、洗面所へ連れて行く。


ソフィアの寝る準備が整ったのが分かると、その体を抱き上げ、敷かれた布団に横たえた。


「俺も寝る準備をするから」


そう言って立ち上がりかけると……。

ソフィアが俺の浴衣の裾を掴む。


「マティアス様……」


甘えるように俺を見上げるその瞳は……。

一見、普段と変わりないように見えるが、酔っているに違いなかった。


「すぐに戻るよ、ソフィア」


おでこにキスを落とし、伸ばされた腕を掛布団の中に戻す。


ソフィアは何か言いたげだったが、おとなしく頷いた。

寝る準備を整え、布団に戻ると、ソフィアは眠りに落ちていた。


いつ見ても思う。

愛らしい寝顔だと。

ゆっくりと布団に潜りこみ、その華奢な体を抱き寄せる。


前回この部屋に泊った時、ソフィアと俺は、キスさえできない状態だった。でもソフィアは人間になることを願い、俺とキスをしようと、普段はしないような行動をとった。純粋無垢のソフィアが、俺を誘惑しようとしたのだ。


その時のことを思い出し、思わず笑みが漏れる。


ソフィア……。

あの時と違い、今は、キスができる。

ゆっくりソフィアの唇に、自分の唇を重ねた。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「ここで暴走してはいけない。絶対に。」です。


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう!!

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