ベッドから離れられない
翌日は、本当に静かな一日になった。
夜通し踊り明かした天使たちは、空が白み始めた頃にベッドに潜り込む。そうではない天使も、ヒンヤリした朝に、ベッドから出ることが躊躇われたようだ。そのまま午前中を、温かなベッドで過ごす者が多かった。
俺は一度目覚めた際、城の調理場に行った。
そこにはオリアクスとルルの執事のオソがいる。
彼は魔力を総動員し、昨晩のディナーで使われた食器や調理器具の片づけを、すべて一人で行っていた。そして今は優雅に主のための朝食を用意している。
「良かったら、殿下とソフィア様もこちらを」
オソが用意したサラダとフルーツと紅茶、そして卵を使っていないパンケーキを受け取り、俺は部屋に戻った。
寒がりのソフィアは、俺が戻ると暖を求めた。
喜んでソフィアを抱きしめ、その体を温める。
マシュマロのような、とろけそうになる柔らかさを、胸板で感じていた。
手で触れ、包み込み、ゆっくり指で撫でたい……。
そんな誘惑に何度も陥落しかけながら、なんとかソフィアを温める。その後はベッドから出ず、そのまま二人で朝食を摂った。
いつものソフィアであれば、朝食を終えれば、すぐに起きることを提案した。でも今日は「寒いので、このままで」と言い、俺に身を寄せている。その体を温めようと再び抱き寄せると、ソフィアは自分から唇にキスをした。
もしやこのまま甘えていいのだろうか?
その確認のため、俺からもキスをし、ソフィアはそれに応えるようにキスを返す。嬉しい気持ちになり、そのまま午前中いっぱい、ソフィアに甘え続けた。時々暴走しかけたが、その度にソフィアが、やんわりと止めてくれた。
◇
午後は皆で中庭の片づけを行い、地上へ降りるための準備を行った。
夕ご飯は城で一番広いダイニングルームを解放し、そこで皆で食事をした。
一晩明けたオリアクスとルルは……なんというか、今まで以上にいい雰囲気になっている。これまで以上に距離が縮まり、スキンシップが増え、お互いに片時も離れたくない――そんな雰囲気が感じられた。
「この様子だと、新たなる魔王の血筋の誕生は、早いんじゃないか」
エウリールが白ワインを手に、ニヤリと笑う。
「エウリール、お前、明日から地上だが、そんなに飲み続けて大丈夫なのか?」
「大天使の体は都合よくできていてな。酔いたいと思えば酔えるが、今は酔っている場合ではないとなると、簡単に酔いは冷めてくれるのさ」
そう答えた次の瞬間には、初めて会ったあの時の、大天使ウリエルの顔と表情に変わっている。
だがしかし。
顔や表情は凛々しくなったが……。
エウリールの首筋や、シャツからのぞく胸元には、いくつものキスマークが見えている。
一体魔界の女天使と何をやっているんだ⁉と呆れつつ、でも憎めない奴だと思っていた。
「マティアス様、ソフィア様、エウリール様、いよいよ明日から地上ですよね。本当にレジスタンス軍は、地上にお供しなくて大丈夫なのですか?」
ケイシーが律儀な顔で尋ねる。
「人間から悪魔に戻したら、順次魔界へ戻していく。レジスタンス軍には、受け入れをお願いしたい。エウリールが調整しているとはいえ、神の力も相応にこの魔界には残っているからな。戻ってきた悪魔も驚くだろう。無論、説明はするが、混乱する者や具合が悪くなる者もいるはずだ。だから彼らを助けてやってほしい。そしてそれぞれが家路につきやすいよう、導いてやってくれ」
俺の言葉に、ケイシーは深く頷く。
「……本当に、明日になればジゼルに会えるのかと思うと……」
ケイシーの顔は、高揚している。
離れ離れの愛する人と、再会できる喜び。
それは俺にもよく分かる。
「間違いなく、明日、ジゼルに会える。安心しろ」
ケイシーは「はい」と笑顔になった。
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次回更新タイトルは「罪の告解」です。
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それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




