素肌に触れられるだけで……
肩掛けでキトンを着ていたので、ある程度俺の裸の上半身は見慣れているだろうに、シャツからのぞく素肌を見て、ソフィアは明らかに躊躇っている。
「……ソフィア、これで終わりか? シャツは脱がせてくれないのか?」
耳元に顔を寄せて囁くと、ソフィアが体を震わせる。
伏し目がちになり、頬をバラ色に染めながら、シャツの前立てを掴んだ。
気づけばソフィアは息を止め、さらに目を閉じ、ゆっくりシャツを脱がせようとしている。でもコートとは違い、腕で引っかかり、うまく脱がすことができない。
ソフィアは仕方なく目を開き、俺の裸の上半身を目にすると、恥ずかしそうに目を伏せた。
もう耳や首や鎖骨の辺りまでバラ色に染まっている。
夢の話を聞いて。
俺がソフィアに服を脱がされたいと思っている。
そう理解して。
その願望に答えようと、慣れないことをしているソフィアは……。とても可愛らしい。このまま困惑するソフィアを見ていることもできた。でも、あまりにも愛くるしくて、これ以上無理をさせたくないと思ってしまう。
シャツを羽織りなおした。
シャツを羽織りなおしたことに安堵した様子のソフィアを、俺は抱きしめた。
「あっ」
ソフィアは小さな悲鳴を漏らす。
夜寝る時、薄手のキトンで抱き合っているのだから、そんなに驚かなくても、と思った。でもソフィアはガチガチに固まっている。
シャツは羽織っただけなので、素肌がのぞいている部分があった。ソフィアの頬は偶然、その部分に押し付けられる形になっている。俺の胸の中で、ソフィアは微動だにしなくなった。
意地悪をするつもりはなかったが、その初々しい反応を見ていたら……。
俺は抱きしめる腕に力を込めた。
すると。
ソフィアの閉じていた瞳は大きく見開かれ、顔全体が一瞬でバラ色に染まる。
しばらくはその状態で動かなくなっていたが、やがて全身から力が抜けた。躊躇いながらも、ゆっくりと俺の胸の中に、体を預ける。
すると今度は俺が緊張してくる。
このままキスをしても、抱き上げても、ベッドまで連れて行っても……。ソフィアは受け入れてくれる。もしそこでシャツを脱いで、上半身が裸になっても……。
だが……。
好きな相手に素肌に直接触れられれば……いつも以上に緊張……いや、興奮する。
現に今だって、俺の心臓は激しく鼓動している。
素肌にソフィアの頬が、触れているだけなのに。
もしシャツを脱いだ俺の上半身に、ソフィアが触れたら……。
間違いなく、暴走するだろう。それだけはダメだ。
なるべく我を忘れないようにと意識しながら。
ベッドへ連れて行くことは諦め、ゆっくり優しいキスを唇にする。
その後はおでこ、瞼、頬、首筋、耳朶、鎖骨と、穏やかなキスを落としていく。
ソフィアは手を、俺のシャツに添えている。丁度胸の近くだ。自身の興奮に合わせ、その手が微妙に震えたり、動くのだが……。ソフィアの手が素肌の部分にもあたり、くすぐったいような、煽情的な気分になり、俺の呼吸は乱れる。
ちょっと素肌に触れられたぐらいで、こんなにも狂わされるとは。
もしこのシャツがなく、裸の状態でソフィアに触れられたら、俺はどうなってしまうのだろう? いやソフィアこそ、どうなってしまうのだろう?
俺は大きく吐息を漏らし、ソフィアへのキスを終了させる。
「……お風呂、溢れちゃうな」
ソフィアは小さく頷く。
最後にもう一度ぎゅっと抱きしめ、俺はバスルームへ向かった。
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次回更新タイトルは「決意」です。
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