書庫で気絶した時の夢が、再現されていく
夕食の席ではケイシーが、積極的に俺達に話しかけ、今日一日の進捗を、俺達から聞き出していた。
熱心に質問し、話を聞き、そしてオリアクスが見つかったことに驚く。さらに自分達の願いを叶えてくれるために、オリアクスが協力してくれると知り、感動している。
「僕達の願いを叶えてくれるのは、主ではなく、オリアクス様なのですね。それでも、僕達は祈りを続けます。そうすれば魔界に満ちる神の力も、少しは弱まるかもしれません」
ケイシーの言葉に俺は驚き、尋ねていた。
「魔力は天使の体に毒なんじゃないのか?」
すると意外な答えが返ってきた。
「捕虜として魔界に来たばかりの時は、本当にきつかったです。でも少しずつ慣れました。……ジゼルと結婚し、結ばれてからは、本当に楽になりました。僕は多少辛くても構いません。むしろせっかくジゼルが魔界に戻っても、ここが神の力で満たされていては……。ジゼルは満足に呼吸することもできないと思うので、その方が心配です」
これが、愛の力なのかと思った。
相手が楽になるなら、自分が苦しむことを厭わない……。
「ケイシー、その件は気にするな。いざとなれば十年ぐらいなら、おれが魔界に満ちる神の力をコントロールする」
エウリールはそう言うと、豪快にワインを飲み干した。
「ウリエル様……」
「その名で呼ぶな」
「でも……」
「おれはこの姿だが、こころは堕天使なんだよ」
ケイシーは一瞬困り顔になったが、すぐ笑顔になり「分かりました」と頷いた。
◇
手分けして食事の片づけをして部屋に戻った。
「マティアス様、すぐにお風呂の用意をしますね」
ソフィアはテキパキと動き、寝るための準備をすすめてくれる。
「タオルと寝間着は、バスルームへ置いておきました。お湯も、もうすぐたまります」
「そうか。ありがとう、ソフィア」
俺は着ていたコートを脱ごうとした。
すると。
ソフィアが俺に駆け寄り、コートを掴む俺の手を制した。
「……?」
「お仕度を手伝います」
ソフィアは小さくそう言うと、俺のコートをゆっくり脱がした。
でもそれは、支度を手伝うフットマンがするような脱がせ方ではなかった。両手を胸元に滑り込ませ、そのままコートを肩から滑り落とすようにした。だからコートはバサリと床に落ちる。
着替えを手伝うフットマンなら、こんな脱がせ方はしない。
なんだか心臓が、騒がしくなってきていた。
俺が動揺する一方で、ソフィアはウエストコートのボタンを一つずつはずし、コートの時と同じように、肩から滑らせて脱がせた。
既に床に落ちているコートに、重なるようにウエストコートが落ちる。
デジャブを覚えた。
これはまるで……。
書庫で気絶した時の夢が、再現されているようだった。
ゆっくりシャツのボタンもはずしていくと……。
ソフィアはそこで手の動きを止めた。
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次回更新タイトルは「素肌に触れられるだけで……」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




